ダマンへ 2

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ヴァーピー駅からオートで走っている最中、こちらグジャラート州側と連邦直轄地ダマンの境目はどのあたりかと思っていると、街並みがまばらになってきたあたりでゲートが見えた。
こちらからダマンに入る際には特に車両を停めてチェックしたりということはないが、あちらからグジャラートに入る際には、形式的ではあるが停車させられて警官が中を覗き込んだり、何か質問したりしているようであった。おそらく気が向いたら荷物を調べたりもするのだろう。
ヴァーピーのオートリクシャーは、ダマンまで直行することができるが、反対にダマンから来る際、ダマンを地元とするオートの場合は走行できるのは、このゲートの手前までで後はヴァーピーの車両に乗り換えなくてはならないようだ。ヴァーピーのオートはCNGエンジンが義務付けられているが、ダマンでは今もガソリンエンジンであることから、州境を越えて乗り入れることは許可されていないとのこと。
マハーラーシュトラ州境近くのダマン、そしてグジャラート州のサウラーシュトラ南端に位置するディーウと、地理的には離れていながらも、連邦直轄地のダマン&ディーウというひとつの行政区を構成しているため、今なお禁酒となっているグジャラート州から来ると、それまでグジャラーティー語の洪水であった街中の看板に、連邦の公用語であるヒンディー語で書かれたものが多く混じってくる。特に役所や公の機関などでは当然のごとく後者で書かれていることに加えて、境の向こうではご法度であった酒類を扱う店、つまり酒屋やバーが多いことなど、視覚的にずいぶん違うものがある。
グジャラートに住んでいても、境目あたりに家があったりすると、夕方ちょっと『向こう側』で一杯ひっかけてから帰宅する、なんて人もけっこうあるのではないかと思う。州境に住んでいると、自宅に持ち帰るのはリスクがあるかと思うが、実質のところ禁酒州外に暮らしているのとあまり変わらないかもしれない。中には持っている地所が両側にまたがっているなんていう幸運なケースもあるかもしれない。
これまで来た道を左に折れてまっすぐ進むと海原が見えてくる。ダマンの街はもうすぐそこだ。DD(ダマン&ディーウ)ナンバーではなく、GJ(グジャラート州)やMH(マハーラーシュトラ州)のナンバープレートを付けているクルマがとても多いが、酒屋の前に乗り付けて、店頭でウイスキー、ラムその他を品定めしていたりする姿が目に付く。彼らはダマンで宿泊しているのかもしれないが、週末などに、自家消費の目的でこっそり買い付けに来る人も少なくないのだろう。たぶん州境の検問で捕まった場合の出費はそれなりに覚悟のうえで。
そもそもゴアがそうであるように、ダマン&ディーウでも、インドの他の地域よりも酒類の種類は豊富で、値段もかなり安いので飲兵衛にはありがたい。とりわけ隣接する禁酒州グジャラートからやってくると、その魅力がどれほどのものであるかは想像に難くない。
そんなわけで、ディーウでもそうだが、ダマンでもバーや酒屋は朝から開いており、特に週末などは午前中からそれなりに繁盛していたりするようだ。だからといってダマン&ディーウの住民が、とりわけ酒飲みであるなどというわけではなく、消費の大半は地域外からやってきた人たちのものであることは間違いないだろう。
ダマンの街は、ダマン・ガンガーという河を境に、モーティー・ダマンとナーニー・ダマンに分かれている。これらはそれぞれバリー・ダマン、チョーティー・ダマンとも呼ばれている。
商業地区は密度の高いナーニー・ダマンであり、モーティー・ダマンは城壁に囲まれたエリアが主に行政地区で、ゆったりとした街区に政府関係の建物や大きな教会が点在しており、その外には住宅地が広がっている。
Hotel Marina
ナーニー・ダマンの飲み屋の多い地域にヘリテージなホテルがある。Hotel Marinaという何の変哲もない名前だが、建物自体にその価値がある。ここはダマンのガバナーの公邸であったものだ。1861年、つまりポルトガル支配終焉のちょうど100年前に完成した建物である。マンに現存する植民地期建築には、もっと規模の大きなものが沢山ある。そうと言われなければ『あ、ちょっと立派な感じの屋敷があるな』とそのまま通り過ぎてしまうかもしれない。
由緒ある建物で、きれいにメンテナンスされている割には、同ホテルのウェブサイトに示されている宿泊料金を見てわかるとおり、ヘリテージ・ホテルとしては格安だ。私が訪れた際には満室で泊まることができなかったが、エントランス、レストラン、ホテル内の廊下などにはやはり歴史の重みを感じさせるものがあり、他のもっと高いホテルよりも魅力的に感じる。
レセプションの背後に、いくつかのテーブルが並べてあり、ビールや食事を頼むことができる。開け放たれたドアのすぐ正面にはダマン警察本部があり、ヒマそうで緊張感はないが、それなりに関係者その他の出入りはある。
ボーイに『ビールもう一本!』と頼む私のすぐ目の前に立ち番の警官。目と鼻の先の禁酒州グジャラートでは非合法となっている酒の密輸にまつわる記事が、毎日新聞紙上に出ていることを思うと、ちょっとヘンな気がするものの、なんだかホッとする。
とにかくバーが多いダマンの街角
〈続く〉

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