飛鳥山のダヂャン

英領時代の一時期インドと合邦していたことがあるとはいえ、南アジアではなく東南アジアの西の果てに位置するミャンマー。『インドつながり』と呼ぶにはかなり苦しいものがあるのは敢えて承知のうえで取り上げてみたい催し物がある。それは4月27日(日)に東京北区の飛鳥山公園にて開催される、在日ビルマ人たちによるダヂャン(水祭り)だ。
こうしたイベントではよく『××大使館後援』という形で母国政府の有形無形のバックアップが付くものだが、この『ダジャン』はそれなりの規模で開催されるにもかわわらず、企画者や参加団体等による完全な自主独立の運営だ。さまざまな歌や舞踊などが繰り広げられるお祭りのステージにはアウンサンスーチー女史の巨大な肖像が掲げられる。
主催はビルマ民主化同盟(LDB)、つまり現在のミャンマー政権からすれば、反政府組織ということになる。ちなみに現在の国名『ミャンマー』とはビルマ語による国名であり、かつて英語で『Burma』と呼ばれていた時代にもビルマ語ではそう呼称されていた。しかし1991年に軍事政権が『Burma』を廃して英語による国名も『Myanmar』と定めた。
しかしそれに先立つ1990年5月にアウンサンスーチー女史らが率いるNLD(National League of Democracy)および協力関係にある民族政党が勝利したにもかかわらず、軍政側は彼らに政権を引き継ぐことはなかった。それどころか逆に民主化勢力関係者の逮捕拘束および各種弾圧に打って出て現在へ至る。
こうした背景から、正統性のない『政府』による改称は無効であるとして、民主化勢力関係者は『Burma』そして日本語による『ビルマ』という名前にこだわる。なお英語による呼称がビルマからミャンマーと改称された際に、ラングーンからヤンゴン、モールメインからモーラミャイン、イラワジ河からエーヤワディー河等々、多くの国内地名も変更された。
さて話は飛鳥山公園のダヂャンに戻る。多民族国家ミャンマーの姿を象徴するように、ビルマ族以外にも在日のシャン族その他少数民族による組織も出展者等として参加するとともに、インド系の人たち姿もチラホラ。なかなかカラフルで楽しいイベントである。とかくフレンドリーで話好きなビルマの人々だけに、一人でフラリと出かけてみてもいろいろおしゃべりできて楽しいものだ。温かい料理はもちろん、日本ではあまり馴染みのないビルマの甘い甘いお菓子類にもありつける。
ただし年を追うごとに縮小していく在日ビルマ人社会のありさまを反映し、こうしたイベントの開催はだんだん難しくなりつつあるのが現状らしい。今年のダヂャンも盛況でありますように!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください