今年のダヂャンは熱かった

アウンサンスーチーさんの肖像のもとに、ビルマの人々が集まった
『武器を手にして闘っている仲間もいます!』
アウンサンスーチーさんの肖像を背景に、ビルマ語での訴えが逐次日本語に訳されていく。母国の政治の不正を、軍事政権の非道を熱く語り、苦しくとも最後は必ず勝つぞと叫ぶその声に、会場内の人々は気勢を上げる。そして割れんばかりの拍手が続く。
4月27日(日)に東京北区で開かれた今年のダヂャンは、意外なまでに集まる人々の数が多かった。昨年などは閑散としていたし、それ以前から見物に来ている友人にとっても今回の盛況は不可解なようであった。
もともと在日ビルマ(ミャンマー)人の数が減少しているうえに、次第に規模が縮小していくのは仕方のないことではあるのだが、今年はビルマにとって、また在日のビルマ人たちにとっても大切な時期であることがうかがえる。
ステージの合間に演説が行われる


1988年の軍事クーデター以来、実に20年間もの長きにわたり憲法が停止されている(・・・ということ自体が普通ありえないことである)ビルマだが、このたびその憲法による正当な裏づけのない軍事政権による新憲法制定とその内容に従った『民政移管』が予定されている。またその新憲法の内容について、その是非を問う国民投票が実施されることになっているのはご存知のとおり。
しかし二院制の両院の議席の四分の一は国軍司令官による任命するなど、今後も軍部は強い指導力を確保することになる。また犯罪歴のある者に立候補資格を与えないことにより、これまでの軍政下の一方的な裁判により実刑判決を受けた民主活動家は締め出されることになる。また外国市民権を持つ配偶者があると大統領候補となる資格を与えないことにより、アウンサンスーチーさんが排除されることになる。
要は独裁下で抵抗勢力が存在しない中、軍部が自称する『民主化』の名のもとにより、ひとたび看板を一新したうえで、やはり軍関係者主体による翼賛政治を展開しよう、その政権に憲法によるお墨付きを与えようというのが当局の狙いであることは言うまでもない。
こうした『欺瞞を許さないぞ』という立場の在日ビルマ人民主化運動関係者たちは、在外投票の対象者から外されていることから、東京のミャンマー大使館前で抗議活動を展開、これを警察が排除するという出来事は昨日のニュースで流れていたのを目にした人も多いだろう。
軍事政権の新憲法案断固反対!
在外投票権求めたミャンマー人 警察が強制排除 (asahi.com)
ごく普通の屋外イベントのつもりで出かけてみると、ステージでボルテージの高い『政治』が展開されており、会場に集まっているビルマの人々の表情もそれ以上に熱かった。もちろんそうしたスピーチが終わると、ビルマ人たちのバンドがいくつもの曲を次々に披露する舞台の前では若者たちが踊っていたりして楽しそうではあるのだが、言葉はわからないがおそらくそれらの歌に込められたメッセージはやはり政治色が濃そうな感じであった。
今年のダヂャンは大盛況
在日ビルマ人たちの民主活動組織、女性組織、少数民族の活動グループなどによるさまざまな屋台で、飲み物や菓子類、スナックに食事類などが販売されていた。久々に口にするビルマ式の汁かけ素麺『モヒンガー』をすすりつつ、いろいろと考えさせられることしきり。
何かとブームで注目されることの多いインドのすぐお隣で、これまで何が起きてきたか、現在何が進行中なのか、在日ビルマの人々には今後も積極的に発信して欲しいと思う。また私たちもそうした出来事に関心を持ち、そこから発せられる声に耳を傾けていきたいものである。
ワイワイガヤガヤとにぎやかな中、ちょっと気になったのは日本の『公安』の動き。複数の警官たちが会場でなにやらブツブツと言葉を交わしながら、カメラのシャッターを切りまくっている。こうしたイベントの中核にある人たち、在日ビルマ人社会の中で積極的に政治にかかわっている人たちについては、普段から私服その他がマークしているのかもしれない。
会場内をコソコソ徘徊しつつ、手当たりしだいにレンズを向けて写真を撮りまくる『挙動不審』な警官。かなり気持ちが悪い
いろいろな事情から日本在住のビルマ憂国の志士たちも、多くは国を離れてずいぶん年月が経ってしまった。民主化活動はさておき、個々の生活もあるし自身の将来の人生設計もあるだろう。今後、インドの隣のビルマという国がどうなるのか注目されるところだが、ひところよりもかなり数は減ったとはいえ、こうして国外に出たまま母国の体制を相手に闘い続けていく人たちがどうなっていくのかということも大変気がかりである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください