Lonely PlanetのNortheast India

Lonely Planet Northeast India
先日、『インドもの続々 ロンリープラネットのガイドブック』で触れてみた同社によるいくつかのガイドブックの中のひとつ『Northeast India』を実際に手に取ってみた。タイトルや表紙写真からして北東七州、通称セブン・シスターズと呼ばれるアッサム、アルナーチャル・プラデーシュ、トリプラー、ナガランド、マニプル、ミゾラム、メガーラヤの各州の情報ばかりがドッサリ詰め込まれていることものだと誰もが思うことだろう。だが実はそうではなかった。
要は広大なインドの国土の中で、相対的に北西部にあたる地域全体を扱うものであった。つまり先述の七州に加えて、オリッサ、スィッキム、西ベンガル各州、そしてこれらの地域からちょっと足を延ばしての『Excursions』として、ビハールやUPのメジャーな観光地までもが扱われている。さらにはインド全般に関して、国情、文化、歴史、旅行事情その他について書かれたイントロダクショの内容は、同シリーズの『India』本冊と重複するので、タイトルの『Northeast』に素直に期待すると肩スカシを食うことになる。


今年10月に刊行されたこの本において、北東七州の記事は、50ページでしかない。ひと月先行して発売された兄貴分『India』に掲載されているのは34ページだから、その差は16ページで約4割増。だが目次や索引を含めた総376ページ中の50ページというのはどうも物足りない。タイトルといい表紙といい、『看板に偽りあり!』と文句の一言も言いたくなる。結論として、この『Northeast India』は、Lonely Planetの『North India』『South India』のごとく、膨大化した『India』を分冊したうえで、多少の地域情報をよくいえば加筆、悪くいえば水増しした程度のものであった。もちろん大きな国であるがゆえ、訪れる地域がちょうどこのあたりだという人にとっては、役立つガイドブックであること間違いはずだが。
それに北でもなく南でもない、『北東』という切り込み方をしてみたのは、近々このエリアが旬になるだろう、と見込みを立ててのことではないだろうか。北東七州の観光業の振興については、資源には決して事欠かないはずなのに、いままでのところどうもパッとしない。90年代以降、三州(アッサム、トリプラー、メガーラヤ)が外国人にも開放されて久しいが、内外におけるパプリシティに欠ける部分は否めない。チベット文化圏のアルナーチャル・プラデーシュ、独自の文化が息づくナガランド、ミゾラム、マニプルといった特に面白そうな地域が、国防上や内政上の問題等から、そう簡単に立ち入ることができないことも大きいだろう。ここで何かひとつ背後から大きく押し出す、ブースター的な出来事が必要かと思う。
個人的には、2008年に予定されているブータン民主化後がひとつのキーになるのではないかと思っている。多党政治が導入されることにより、当然のことながら国政の場で実業界の発言力が強くなっていく。とりたてて発達した産業を持たない山国にあり、主要な産業とはすなわち観光とそれに付随するもの。かといって、従来の鎖国状態からいきなりの開国で怒涛の観光客津波・・・なんてことはないと思うが、近隣国ネパールその他での事例を慎重に研究したうえで、時に修正を加えながら査証取得条件が緩和されるとともに、さまざまな街や地域が外国人訪問者たちに対して順次開放されていくのではないだろうか。
かねてより、ブータンとインド双方の市民の行き来は簡単だ。インド人訪問客が多いことから、ブータン側には外国から観光客を受け入れるためのインフラが、それなりに整ってはいるはずだ。たとえば移動手段にしてみても、両国間には、国境近くのそれぞれの主要な街から相手国内の都市へと乗り換え無しで直行する中・長距離バスのサービスは公営・民営ともにいくつもある。
しばしば『最後の理想郷』と持ちあげられるブータンが大勢の観光客、自由気ままに旅行する人たちを受け入れるようになった日には、インドの隣接する地域とその周辺部にも新たなスポットが当たるだろう。人々が手にする旅行案内書や観光地図も、この地域へと大きく軸足を移すことがあってもおかしくないかもしれない。このNortheast Indiaは、そういう時代を迎えるにあたり、インドのこの地域の観光についてのひとつの提案として読むこともできるかもしれない。

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