シンガポールという都市自体がそうであるように、その中にあるリトル・インディアもまたグルメな街である。昔からここに住み着いている人たちはタミル系が多いとはいえ、南インド料理以外にも、ムグライ、ベンガーリー、スリランカ等々、亜大陸のさまざまな地域の味を楽しむことができる。
そうした中には高級店もあるが、ここで働いていたり暮らしていたりする人相手の庶民的なものもまた多い。後者の場合、まるでインドの安食堂をそのまま持ってきたようなものもあれば、小ぶりなホーカーズ・センターのようになっているものもある。後者の場合、往々にして中華式メニューも同時に楽しむことができたりする。
昼食を済ませて、リトル・インディア地区内をぐるぐる巡ってみると、今や地下鉄駅がふたつもできていることに気がついた。このエリアの最寄り駅は、North East LineのLittle IndiaもしくはFarrer Parkである。
ところでこのあたりの地名にもなかなか面白いものがある。このエリアにはその名もヒンドゥー・ロードというのがあるし、ダルハウジー・レーン、クライヴ・ストリートというのもある。この地域以外でも、シンガポールの通りの名前でマウントバッテン・ロードがあるなど、インド植民地行政の立役者の名前が散見されるのは興味深い。
シンガポールでは、ここに住むさまざまな民族の宗教施設が見られるが、リトル・インディアにおいても、ヒンドゥー教関連施設も南インド由来のものや北インドからのものなどいろいろある。アーリア・サマージのお寺の上階には、D.A.V. Hindi Schoolのシンガポール本部が入っている。イスラーム教のモスクにおいても、グジャラートのスンニー派のAngullia Masjidをはじめとして、さまざまなコミュニティのものがあるようだ。
数世代に渡って定住している人々、加えて出稼ぎ人たち、はてまた観光客を含む一時滞在者等々、亜大陸の東西南北各地に起源を持つさまざまなインド系の人々が、マレー風ショップハウス形式の建物が並ぶ景色の中でごっちゃになっているという図はなかなか興味深い。