お隣の国へ 6

今日も白く靄のかかった朝だ。昨夜はかなり冷え込んでいたためもあり、今日はややカゼ気味である。
ホテル内のレストランで簡単な朝食を取り、8時過ぎにリクシャーで駅に行く。国境の町ベーナーポールに行く列車が8時50分に出る。プラットフォームはずいぶん混雑しており、なんとか身をよじらせながら車内に入ることができたが、イワシの缶詰みたいな状態でかなりキツイ。
途中に大学があるので、ここまで行く学生たちが多いようだった。そのあたりはちょっとした町になっているため、仕事のために出かける人々もかなりある。彼らが大挙して降りていくと、さきほどまでの大混雑がまるで嘘のように車両の中はガラガラになる。
車内が急にくつろいだ雰囲気になる。身体的に苦痛だったさきほどまでと違い、ゆったりと座れるようになったため、人々も気持ちにゆとりが出てきたらしく、そこここでおしゃべりが始まる。こちらも右から左からいろいろ声がかかり、自然と周りの人々と話をすることになる。
ジェソールを出てから1時間ほどで国境に着いた。途中通過したのは農村や小さな町。駅から国境チェックポストまで、サイクルリクシャーで10ターカー。バーングラーデーシュから出る際に『出国税』なるものがある。イミグレーション脇のショナーリーバンクのカウンターで支払い、発行されたレシートを手にしないと出国手続きができない仕組みになっている。
インド側に出ると、風景は変わらないのに、私が理解できる言葉が突然普通に通じるようになる。ほんの数十メートル向こうではほとんどダメなのだが。
まるでテレビのチャンネルを××語番組から○○語番組に切り替えたような感じだ。
こちらに来るとベンガル語に加えてデーヴァナーガリー文字が散見されるのがなんだかうれしい。
バーングラーデーシュに来るときに利用したような国際バスが通りかかれば、宿泊先のフリースクールストリートまで直行できていいな、と思ったが、それらはもっと早い時間帯にここを通過してしまうとのことでダメだった。
シアルダー駅行きの列車は毎時間あるらしい。乗り合いオートリクシャー最寄りのバンガーオンの駅までで向かう。バーングラーデーシュ滞在中は、エアテルの圏外のため死んだのも同然だった携帯電話が息を吹き返している。
プラットフォームで待っていると、まもなく電車が入線してきた。シアルダーから来たものであり、終着駅バンガーオンで折り返すのである。ハウラーからバンデルやフーグリーなどに出ている郊外電車と同じタイプのものである。
田園風景は国境の向こうと変わらないが、それでもインド側のほうが水田などもよく整備されているような感じがする。田舎駅でもインドのほうが駅としての体裁がしっかりして規模が大きいこと、建物も立派であることなどいろいろある。駅の造りや職員たちの仕事ぶりもよりオーガナイズされているように見える。もちろんこちらのほうが相対的に豊かなのだから当たり前のことではあるが。
しかしながら、今こうしてシアルダーに向かう電車の中で揺られていても、ついさっき違う国から再びインドに戻ってきたという気がしない。州内のどこか田舎に出かけて戻ってきたような感じがするのだ。
生活してみるといろいろ違うのだろうが、少なくとも旅行する分には、そのツボというか、要領というのかが同じであるためそう思うのだろう。つまりそれほど近似した環境ということはできるだろう。もともと同じ国土であったところが分割されたのだから当然のことではある。
ともあれバーングラーデーシュもまたいろいろと興味深い国であったので、またぜひ訪れてみたいと思う。隣国なのでコールカーター・ダーカー間の飛行機が頻繁に飛んでいるということもあるが、陸路でも直通バスがあり、鉄道による接続も悪くない。けっこう広いベンガルの大地を、西ベンガル州だけ見ておしまいにするのはちょっともったいない。
事前にヴィザを取得しなくてはならないという面倒はあるものの、コールカーターまで足を伸ばしたならば、すぐ近くの『お隣の国』にもぜひ立ち寄られることをお勧めしたい。またインド北東州のアッサム、メガーラヤ、トリプラーなどに陸路で向かう場合、バーングラーデーシュを横切るとずいぶん近道になるという点もあり、亜大陸東部を見て歩く場合、決して外すことのできない地域であるとも思われる。

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