町中では、マーケットその他の路上で野菜や生薬を売っている人々の中に部族の人々の姿がとても多い。周辺の村からバスや徒歩で町まで出てきてこうやって商売しているらしい。
そうした人々の多くは自家製とおぼしき、通常よりも小ぶりな野菜類を扱っていることが多い。並べている量も総じて少ないことが多く、こんなので商売になるのだろうか?と気になってしまうような人も少なくなかった。自家消費から剰余が出た分を現金と交換するために行商しているというケースもあるのかもしれない。
むしろの上で石の細かい破片のような鉱物を 広げている年配女性もいた。このあたりの部族の人々はたいていそうだが、自身の言葉以外にオリヤー語しか理解しないので仕方ない。
そうした中に男性も女性もいるのだが、特に女性のほうが目立つのは、特徴的な民族衣装を着ているからだろう。サーリーよりも丈の短い布を身体に纏っている。ペチコート類は下に着けておらず、太古の壁画に出てくる女性の姿のようでもある。
この国では指定部族に対する留保制度があるため、おそらく政府関係の仕事に就く人は少なくないことと想像できる。また商業的に成功して、町で店を構えたり、家を建てている人もけっこうあるのかもしれない。もともとのスタート地点が低いことから、そうした形での社会進出は決して易しくはなかろう。それでも都市化して暮らしている人たちも少なからずあることだろう。
宿泊先のHotel Raj Residencyは、まだ新しいから快適というだけのことで、時間とともに『標準化』していくようなので特にコメントすべきものはないのだが、ここのグラウンド・フロアーのレストランはなかなか面白かった。
何が楽しいかといえば、通常ドーサ類といえばヴェジタリアンだが、ここでは『ノンヴェジ・ドーサ』がいろいろあるのだ。
エッグ・ドーサ、チキンキーマ・ドーサ、マトン・ドーサetc.といった具合で、要はマサラー・ドーサーを注文すると中にマサラーで味付けしたポテトが入ってくるが、ノンヴェジではこれが卵であったり肉類であったりするわけだ。いろいろ試してみたが、どれもビールによく合う感じだ。
他にも変り種で甘いドーサ類があり、コーヒー・ドーサにはネスカフェが入っているらしい。こちらは残念ながら試していないが、こうした『邪道』なB級グルメ的なアイテムがいくつもあり、食に対するこだわりも関心も特になく、日々クルマやバイクにガソリンを補給するような感覚で食事=作業をしている私でさえも、思わずニヤリとしてしまうような料理がいろいろあるのが良かった。
それはさておき、オリッサ州南部で、アーンドラ・プラデーシュに近いためだろう、町中の食堂で用意している食事にはかなり南インド的なアイテムが多く見られるうえに、北インド料理にも南のテイストが加わっている。たとえばチキン・モグライを注文すると、ココナツで仕上げてあったりするなどといった具合だ。
町中に貼られたポスター等の中で、アーンドラ・プラデーシュをはじめとする南インドを本拠地とする聖者たちの姿も数多く見受けられる。プッタパールティのサッティャ・サイババの関係施設もあった。
このあたりは、ちょうど北インドと南インドの境あたりという気がする。
<続く>