退屈は幸せだ

新聞であれ、テレビであれ、ニュースが退屈なものであるときほど、実は『良い時』なのだと思う。手にとってみて、そこに書かれているものがルーティーンな内容で、退屈のあまりすぐに投げ出してしまうようなときは、少なくとも悪いことは起きていないわけだ。思わず目を見開いてしまうような、かじりついてしまうようなセンセーショナルな報道といえば、たいていが非常に好ましくないものであることが多い。
今日もやはりそうだった。9月26日深夜前後から本日にかけて進行中のムンバイーでの連続テロ事件の報道がそれだ。今日の午後はずっとZEE NEWSやAAJ TAKといったニュース番組にかじりついている。ムンバイー市内のタージ・ホテル、オベロイ・ホテル、ムンバイーCST駅構内等で起きた一連の惨劇。これを書いている現在も、2軒の五ツ星ホテルでは人質の安否が危ぶまれるとともに、コラバ地区のナリマンハウス付近でも銃撃が続いているとか。
すでにタージ・ホテル内だけでも80人もの死者が出ており、363号室にテロリストたちが隠れているらしいなどとアナウンサーは伝えていた。それからしばらくして建物内に治安当局が入り込んで片端からドアを開けて、出るに出られずにいた宿泊客を救出が始まったようだ。
押しても引いても開かないドアの中には犯人たちが潜んでいるのではないかという疑いがあり、そんな部屋のひとつ471号室に突入した治安要員たちが中にいた犯人の一人を銃殺したという。
血なまぐさい事件が画面の向こうでリアルタイムで進行しているという緊迫した状況で、ふと思い出すのは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ。
『WTCのツインタワーのひとつに航空機が衝突する事件が起きました』というアナウンスから始まったあの日のニュース。その直後に2機目がもうひとつのタワーに接近して衝突して大きな火花を散らす。そのときテレビの報道番組を見ていた人たちが皆、事件の目撃者となった。手段は違うが、画面の向こうから感じるのは、まさにあのときと同じ空気だ。
それにしても今年はずいぶん多い。後半部分に限っても、これだけの大きなテロが発生している。
10月30日 アッサム東北部 64名死亡
9月30日 インド西部 7名死亡
9月27日 デリー 1人死亡
9月13日 デリー 18名死亡
7月26日 アーメダーバード 49名死亡
7月25日 バンガロール 2人死亡
5月13日 ジャイプルで63名死亡
現在進行中のテロ事件の早急な鎮圧と背後関係等に関する解明を望みたいところだが、それが明らかになったところで、根本的な解決などありえないことが、一番難しいところだ。社会に不安と秩序の乱れを、そしてコミュニティ間に対立や猜疑心を与えることは避けられないだろう。
悲哀と混乱を闇であざ笑う何者かに対して、私たちはかくも無力なのか。底知れぬ悪意を抱く者たちに行為に対して、私たちはただ黙ってそれを受け入れるしかないのだろうか。
あるいはこれを悪魔の仕業とするならば、良き市民たちはそれを神から与えられた試練と受け止めるのしかないのか。
ニュースが退屈であることは、実は幸せであること、ごく何でもない日常がどんなにありがたいことか、改めてしみじみ感じる。
TERROR STRIKES MUMBAI AGAIN, OVER 100 KILLED (ZEE NEWS.COM)

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