何だかいい予感 マイクロフォーサーズ第1号カメラ

ルミックス G1
10月31日に発売されたパナソニックのルミックスG1はなかなか評判がいいらしい。私自身も店頭で実機を触ってみたが、思いのほか良い印象を受けた。
マイクロフォーサーズという新しい規格による初めてのカメラで、今の時点でボディサイズが世界最小というが、今はAPS-C規格のカメラも相当小型化しているものがあるので、さほどびっくりするほどではなかった。
だが搭載しているセンサーが4/3インチと、従来のフォーサーズのものと同じサイズながらも、フランジバックつまりマウントからセンサーまでの距離をフォーサーズの約半分に縮め、マウント外径を約6ミリ縮小するというもの。
結果としてボディを薄くすることが可能となり、レンズも相当軽量・小型にできるという利点がある。ボディとレンズを組み合わせた際のトータルな大きさと重量には、それを始めて手にした誰もが目を見張ることだろう。
もちろんセンサーが小型であることについては、画質とりわけラティテュードの幅、高感度設定時の荒れという部分において、少なくとも同世代・同クラスのAPS-C以上のセンサーを持つカメラと比較すれば不利になるのではないかと思うのが当然だが、このあたりの使用感について購入された方にうかがいたいと思う。


ところでこのカメラ、正確には一眼レフといえるものかどうかという点については疑問がある。『ミラーレス構造』をウリにしているこのカメラは、一眼レフ基本構造である反射鏡を使ってファインダー(スクリーン)に結像させる機構になっていない。そのためパナソニックのカタログには『レンズ交換式デジタル一眼カメラ』と表記されている。
デジタル一眼レフとコンパクトデジカメの中間に位置するモデルといえる画期的なモデルだ。一眼レフの操作性の良さとレンズ交換できる利点をプラスしたコンパクトデジカメ・・・とでも形容しようか。光学ファインダーにあたる部分は電子化されているが、非常クリアでレスポンスも良く、特に不便は感じないのではないだろうか。
これまでの一眼はフィルム式のものを踏襲してフィルムにあたる部分を電子化して付加的な機能等を加えたものであり、アナログ機械のメカニズムをデジタルに置き換えた印象だったが、ここにきてカメラの機構そのものの根本的にありかたを見直したモデルが登場してきたように感じる。
セールスのキャッチコピー『女流一眼』とのことで、カタログや広告等にこれがデカデカと書き込まれているが、小型・軽量・扱いが簡単ということで女性に広くアピールしようという狙いがあるようだ。
しかし『女流』云々というコトバには、幾分差別的なニュアンスがあり、あまり肯定的に受け取ることができない人も少なからずあるのではないかと思う。それはともかく、果たしてターゲットとして定めた層の間によく売れているのかどうかは知らないが、それとは裏腹に男性ユーザーの間で、以下の点からずいぶん評価が高いようだ。
・小さくて軽いので日常的に携行できる。
・余計な重量を背負い込みたくない山行き等に最適
・小さいながらも最新で充実した機能
一眼とともにサブとしてコンパクトを携帯していた人が、その両方を一台で兼ねるものとしての需要、コンパクトデジカメに物足らなくて買う人といった需要があると思われる。特に日常的に携帯する目的、登山や旅行といった荷物の制約のある場面での利用を念頭に置いたユーザーに強くアピールしているのだろう。
非常に優れた携帯性の評判が高くとも、他社の一眼から乗り換えというケースは少ないだろう。海のものとも山のものとも知れぬ、今年8月に公開されたばかりの新しいシステムであるがゆえに、今後どうなるかわからない。現時点において、マイクロフォーサーズのレンズは、このルミックスG1ボディと同時発売となったズームレンズ2本しかこの世に存在しない。
F3.5-5.6の14-45mm (35mm換算28mm-90mm)およびF.4.0-5.6の45-200mm (90mm-400mm)のレンズがそれで、どちらも3段分程度の手ブレ補正機能が搭載されており、まずひととおりの撮影には対応できそうであるが、これではあまりにさみしい。F値の明るいレンズも欲しいし、単焦点レンズ、マクロレンズ等々を含めたバリエーションの充実を望みたいところだ。
この規格の主唱者であるオリンパスと賛同企業であるパナソニックだが、前者からはまだボディもレンズも発売されていない。コンパクトデジカメのような小さくてシンプルな躯体のカメラとF.2.8で25mmのパンケーキレンズがオリンパスから、F.1.7で20mmおよびF.3.5で14-140mmのレンズがパナソニックからといった企画は耳にするものの目下開発段階でしかないため、はなはだ心もとない。
アダプタを介して従来のフォーサーズ規格のレンズを利用できることにはなっているが、機能面での制約もあり、そもそも躯体の大きなレンズを常用することが前提になるとすれば、マイクロフォーサーズの利点を失うことになる。
『王道』を邁進するキヤノン、ニコンという二大巨頭との直接対決を避けて、小型・軽量の手軽さに力点を置き、マイクロフォーサーズという新規格を擁して、ややニッチな市場を掘り起こそうとするオリンパスとパナソニック。
マイクロフォーサーズのカメラは、現行のコンパクトデジカメの『高級機』とされるモデルで飽き足らないユーザーからの強い関心を集め、従来の『デジタル一眼』『コンパクトデジカメ』といった括りのどちらでもない新たなカテゴリーとして広く認識されるようになるのではないかという気がする。
とはいえ、まだ出たばかりで、今後どうなっていくのか、要は消費者の反応次第なので、先行きは決して視界良好とはいえないが、大きなポテンシャルに期待しよう。つまるところ、いつものごとく『インドでどうだろう?このカメラ?』ということで、マイクロフォーサーズで初物のルミックスG1というモデル自体がどうかということはさておき、この規格のモデルが快適な旅カメラとして発展していくことを期待したい。

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