エア・デカンいまやキングフィッシャー

キングフィッシャー・エアラインスは、昨年12月にエア・デカンの吸収合併を決定し、今春以降は事実上同一企業体ながらも両ブランドが並立していた。従業員のユニフォームやブランドのロゴを共通化し、一体性を感じさせるものにはなっていたものの、予約やカスタマーケアのチャンネルも別々であった。キングフィッシャーのフライトとエア・デカンのフライトがそれぞれコードシェア便の扱いであったため、どちらのサイトからでも予約できたものの、少なくとも顧客側から見れば事実上『ふたつの異なる航空会社』であった。だがこのたび『エア・デカン』ブランドの消滅により、両社が名実ともに一体となり、ウェブサイトもhttp://www.flykingfisher.com/で統一された。
合併当初は、ビジネスその他高品位サービスのキングフィッシャーと低コストのエア・デカンというふたつの異なる色合いを持つブランドとして継続させるプランもあったようだが、結局のところブランドの統一という形で落ち着いたようだ。
エア・デカンといえば、インドの格安航空会社のさきがけ。2003年に運行を開始し、当初は主にインドの南半部を中心にフライトを飛ばしていたが、徐々に北インドへも手を広げて、全国規模の航空会社に成長した。その間スパイス・ジェット、キングフィッシャー・エアラインス他の多くの後発会社が市場に参入してくる中、先発のエア・デカンがこのジャンルの国内航空会社最大のネットワークを誇っていた。
注目を浴びた新しいビジネススタイル、めざましい躍進とこの新たな業界の牽引、後発会社(の親会社であるUBによる)買収による合併でブランド消失等々、エア・デカンをめぐり数多くのことがわずか5年間で起きた。実に浮沈の大きな業界だ。
昨今の燃油高騰の関係もあり、多くの会社が苦戦を強いられているようだ。格安航空業界各社から今後さまざまなニュースが伝えられることになるのかもしれない。だが他の多くの国々でそうであるように、新しいタイプの航空各社が既存のエアラインに与えた影響は大きい。単にチケットのコストのみならず、ブッキング、顧客サービス、運行その他あらゆる面での合理化を推進させることとなった。老舗会社がわざわざ格安専門の子会社を設立する例もかなりある。
今後も既存会社vs新興格安会社という構図の中で、クラス別の棲み分けがなされていくのだろうか。それとも既存会社の業務合理化、新興会社の中でもまた他社との差別化が進み、高級化の路線を歩むところが出てくることなどから、双方の差異が限りなく小さくなってくるのだろうか。
一般的に『格安』という手段は、既存の出来上がった市場に新規参入するためのひとつの手段に過ぎないようだ。ひとたびそれなりのシェアを占めると、自らのサービスの中であるいは同業他社のサービスとの間に差別化を図り、より収益の高いところに到達する努力にとりかかるのは、ビジネスとして当然のことだ。鉄道やバスよりも速く大きく変化し続ける空の旅客輸送の世界である。5年後、10年後にどんな様相になっているのか皆目見当もつかない。

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