悪いだけの草じゃない

大相撲の幕内力士若ノ鵬が大麻取締法違反で逮捕されたことがきっかけとなり、9月2日に十両以上の力士を対象として、尿検査が抜き打ちで実施されたところ、西前頭三枚目の露鵬(大嶽部屋)と東十両六枚目の白露山(北の湖部屋)から大麻の陽性反応が出た。この騒動は日本各マスコミで大きく取り上げられているので皆さんご存知のとおり。
昨年以降、朝青龍問題(私には相撲界とスポーツメディア寄ってたかっての外国人力士イジメとしか思えなかったが・・・)や若手力士が稽古場で兄弟子たちに暴行を受けて亡くなるなど、トラブル続きだった角界。今回はひとつの不祥事を受けて、迅速に対応した形だったが、意外にも相撲協会理事長を務める北の湖親方の足元に火が点いてしまい大わらわだ。
おそらく今後、各種メディア等で『大相撲大麻汚染』『退廃の角界』などいった記事がスポーツ紙を中心に多数掲載されるのだろう。先述の露鵬は大麻を六本木の繁華街で外国人から手にいれたと供述していることから、力士だけではなく他競技の選手の名前も今後取り沙汰されるようになってくるのかもしれない。


大麻は日本をはじめ多くの国々の法律で厳しく禁止されていることから、決して手を出すべきものではない。違反して摘発されることから導かれる処罰や社会的な制裁により失うものがあまりに大きすぎる。しかし大麻そのものがそんなに危険なものであるかどうかを考えることなく、他のドラッグ類や向精神薬と混同してしまうのもどうかと思う。
大麻やその加工品等を嗜好する伝統のある地域、そういう習慣、これらについて大きな偏見を生むことにならないだろうか。インドをはじめとする南アジアでもかつて広く親しまれていた時代があったし、今でもまったく廃れてしまったわけではない。映画オーム・シャーンティ・オームでバーングをあおるシーンが出てきたことを憶えている人も多いだろう。wikipediaにコンパクトにまとまったbhangの記事があったのでリンクを貼り付けておく。
Bhang (wikipedia)
インドのヒマラヤ地域以外でも、たとえば中国の雲南地方などで、普通に道端の雑草として自生しているのを目の当たりにする。とにかく繁殖力は旺盛なようで、条件の良い場所では大きな藪を形成する。
大麻の藪
これらの新芽で日本の末端価格いくらぐらいになるのか見当も付かないが、ヒマラヤでぐいぐい育つのならば、何かのきっかけで偶然、長野県や山梨県あたりに種子が移動することがあれば、10年のうちにどこもかしこも大麻が生い茂ってしまい、駆除するのが大変!ということはないだろうか?沖縄県の一部では、持ち込まれて野生化したインドクジャクに頭を悩ませているくらいだから、はるかに小さくて生命力の強い植物ならば、ちょっとしたきっかけで定着してしまうことは充分あり得るように思う。
工業化の進展とともに大麻は各地で禁じられるようになってきたようだ。また禁じられる動きが遅かったエリアでは諸外国からの外圧という部分もあったのではないだろうか。昔から世界各地で種子は食用および薬用として、繊維質は衣類、日用品その他として用いられてくるなど、人々の生活の中で重用されてきた植物である。また日本でもインド同様に神事にかかわる部分でのつながりもあったようだ。大麻それ自体の作用により、これを嗜好する人が廃人になるようなこともなく、決して身の破滅をもたらす害毒を有するわけではなかった。
だがこれは多くの国々で禁制品となっているため、当然リスクとともに極秘に流通、価格は非常に高いものとなり、常用者は大きな経済的負担をも負うことになる。支払った代金はアンダーグラウンドな世界に流れ込んでいくため、何ひとつ良いところはない。
だからこれを解禁ないしは規制緩和しよう、タバコよりも習慣性が弱く、アルコールよりも身体に及ぼす害毒は少ないのだから・・・というのが大麻擁護論者あるいは解禁論者たちの言い分の主たるところだ。ちなみに私はそのどちらに賛同するものでもない。
健康に対する直接の影響はともかくとして、大麻による社会的な害毒は大きいと私は思う。摂取量にもよるだろうし、個人差もあるだろうが、一般的にアルコールに比べて陶酔している時間が長く、作用している間の思考能力、身体能力への影響も大きい。日々刻々といろいろなスケジュールに追われる今の時代に到底合うものではなく、自堕落な悪習であることは間違いない。そもそも酔っている際に自動車の運転や機械類の操作などにたずさわったりすると危険極まりないし、そうでなくても日常的に嗜む人たちとそうでない人たちの間での社会生活が危うくなる。自宅で日々大麻ばかり吸っている父親がいたら、家庭自体が成り立つだろうか。
人間がせいぜい数十世帯規模で野山に散住し、それぞれの集落ごとにほぼ自給自足して生活、人々は日の出とともに畑に出るが、仕事を終えた午後と夕方以降は近所のオジサン連中は車座になってのんびり・・・という社会ならば、特にどうということはないのかもしれないが。時代が変わり、価値観や社会的な規範も変化すると、それまではあちこちでよく見られたことが大きな罪となる。仇討ち、帯刀、重婚・・・どれも今の社会では許されない。
さてその大麻、繊維利用のための栽培を容易にするために、陶酔成分であるテトラヒドロカンナビノールをほとんど含まない品種の開発が進められている。またテトラヒドロカンナビノール自体についても、各種の神経性疾患、緑内障、喘息、エイズ等の病気に対する効能が注目されているなど、嗜好品としての使用以外の部分については私たちの生活にさまざまな恩恵を与えてくれる可能性が大きく、人々が知恵を傾けて有効に活用すべき植物であることも頭の片隅に入れておくべきだと思う。

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