ハザーリーバーグ周辺の民俗画の村巡り②

家族が亡くなったり町に出ていったりなどで、一人で暮らしているという老婆の家では、彼女が住む小さな離れは、このように絵が描いてあったが、もっと大きく往時は立派であったと思われる母屋は壁がヒビ割れたり、外側に膨らんだりして崩壊しかかっていたりした。やはりメンテ「カッチャー・マカーン」は、メンテナンスに手間隙かかるものなのだ。レンガ積みの構造にコンクリートで固めた家屋ならば、一度外壁をきれいに仕上げておけば、放っておいてもそう簡単に崩壊するようなものではないが、素材が土だとそうはいかない。乾期はそれでもよくても、毎年やってくるモンスーンの時期を、メンテナンス無しで複数回乗り越えるのは至難の技だろう。

手入れがなされないとすぐにこうなってしまう。

そんなこともあり、村の人々の多くは本音ではレンガ積みやコンクリート造の家を望んでおり、今でも伝統的な家屋に住んでいるのには、愛着というよりも経済的な理由があるらしい。昔ながらの趣はあっても、いろいろ面倒が多い生活よりも、便利で手間のかからない暮らしを望むのは当然のことだろう。そういう事情もあるため、こうした家屋と民俗画の伝統を守るため、絵画の材料となる赤鉄鉱、黄鉄鉱の粉(村では採れないので購入して支給したり、その他インセンティヴを与えたりしているとのことだ。伝統の維持というものは、なかなか一筋縄でいくものではない。

オリヤーの村にて。家ごとに独自のキャラクターがある。

村の人々は日々畑仕事をしていることから、食べ物はほぼ自給自足しているのではないかと思うが、さほど大きな規模の農業を展開しているわけではないため、儲けを期待できるほどの現金収入があるわけではない。それがゆえに、なかなか夢の「レンガ積みあるいはコンクリート造」の家屋建築には手が届かないがゆえに「カッチャー・マカーン」に暮らす。するとこまめにメンテしないと崩壊してしまうので、毎年せっせと塗り替える、描き替えるというサイクルが維持されているというパラドックスもあるように思われるのが、なかなか悩ましい。

村ではところどころ、伝統的な家屋の裏側に建築中の「パッカー・マカーンが建築中であったりする。ゆっくりと、だが確実に変化は進んでいく。

オリヤーの村

オリヤーの村
アンゴーの村
アンゴーの村
アンゴーの村
アンゴーの村
アンゴーの村
家畜用の部屋にも吉祥紋が描かれているのが微笑ましい。
インド政府の「スワッチ・パーラト(Clean India)・ミッションでのトイレ建造に関係がありそうだ。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

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