今どきのインドのトランスジェンダー

インド初の男性のボディビルディングの大会で優勝したトランスジェンダー。デリーで誕生時には女の子だったが、幼い頃から男の子同様の服装と活動が大好きで、彼女ニーラー・パーシャーは、とりわけ思春期以降は自身の身体と心のギャップに苦しんだという。そして性転換して男性となり、ニーラーから「アリアン」と名前も変更。育ったのはデリーだったがムンバイの大学に進学。法学を専攻して弁護士として活躍中の29歳。昨年、12歳年上のラクシュミーと結婚したそうだ。このアリアン、ビデオで見る限りにはトランスジェンダーにはまったく見えず、デリーからハリヤーナー、パンジャーブにかけてよくいる筋肉オタクの若者にしか見えないだろう。

それはともかく、彼は今どきのインドの都会だからこそありえる、幸運な例外であるといえる。ムスリムの裕福なインテリ一家に生まれ、最初に彼の心と身体の乖離に気が付いたのは母方の叔母で、彼の(当時は「彼女」の)母親に助言をしたという。それを受けて母は彼の(彼女の)父親と相談のうえで、当時のニーラー(現在のアリアン)に性転換という道もあるとアドバイス。その後、ニーラーは19歳のときに手術を受けてアリアンとなった。

おそらく彼のような立場の人は、人口大国のインドに決して珍しくはないのだろうが、彼のように境遇に恵まれた例は多くないだろう。

家族の理解とサポート、家庭の経済的な余裕、そして他と違う者にとってもなんとか居場所を見つけることができる隙間がある大都市という環境。ここに彼自身の高い能力と勤勉さが加わり、今の彼がある。

性転換手術を受けて、故郷デリーを離れてムンバイの大学に進学するまで、周囲からずっと「奴はビョーキ」と言われ続けていた彼(彼女)だが、家族はそんな彼(彼女)をしっかりと守り続けていたのだそうだ。

それにしても、性転換をしたことを隠してひっそりと生きるのではなく、敢えて生まれながらに男性のライバルたちを蹴散らしてボディービルという極めて男臭い世界で勝ち上がろうという心意気も大したもの。

たいへんなポジティブなパワーに満ちた人である。これを西欧社会はともかく、日本と較べてもずいぶん保守的なインドでやり遂げて、まだ上を目指しているのだから畏れ入る。

 

India’s First Transman Bodybuilder: Up, Close & Personal With Aryan Pasha | Muscle Mania

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