日本式の食事処 1

海外にある日本式の食堂、和食レストランといえば、主に日本人在住者や訪問客が多いところ、あるいは現地で日本食に関心の高いエリアという、言うまでもなく大きなマーケットが成立する場所に出店している。それらは往々にして大都市である。 

裾野の広がりがグローバルな中華料理やファストフードの類と異なり、まだまだ日本の『民族食』的な色彩が強いため。縁もゆかりもないところにいきなり出店というケースはあまりない。『日本ブランド』は、世界中どこに行っても評判の高いクルマや家電製品などとは違い、食の分野ではマイノリティだ。現地にそれなりの『和食文化』的なインフラが存在していることが不可欠だ。 

多くは個人事業主による出店で、日本人がオーナーであることが多いが、同様にかつて日本に留学した経験があったり、働いた経験があったりするなど、日本とのゆかりの深い現地の人が開業した店も数多い。また日本人と現地の人による共同経営(日本人とその配偶者である地元の人という組み合わせを含む)もよくみかけるところだ。 

特に日本企業が多く進出しているところでは、接待などで使われるような高級店も少なくないが、日系企業オフィス近隣でランチや仕事帰りに一杯引っかけるのに利用してもらうような店、単身赴任者を主に相手にしているような大衆食堂と居酒屋を兼ねたような店も多い。 

大衆食堂風とはいえ、途上国においては現地の気楽なお店に比べるとずいぶん高いため安食堂とはいえない。主な顧客層といえばたいていは日本人客ということになる。 

これらとは別に、近年は日本の外食チェーンの海外進出も盛んになってきており、和食では大戸屋がタイ、台湾、香港、インドネシア、シンガポールにいくつも出店している。居酒屋の和民はアジアの複数の国々で展開している。 

また『和食』と表現していいのかどうかわからないが、日本発の食としてのラーメンを味千ラーメンが中国、韓国、東南アジア、北米、オセアニアに進出しているし、餃子の王将が海外展開するのは、本場中国の大連だ。 

日本式カレーのCoCo壱番屋もアジア5か国とハワイに店を出している。海外でも日本国内と同じルーを使用しているという。なんと6年後あたりを目途にインドへの進出を画策しているようだ。日本のカレーがインド上陸となれば、日本国内での話題作りにはなるかもしれないが、これについてはレシピそのものを根本から見直さなくてはならないだろう。

和食ないしは日本式の食事関連以外にも、イタリアンのサイゼリヤ、ステーキが中心のペッパーランチも積極的に海外に進出している。 

こうした日系の外食チェーンの主戦場は東アジアと東南アジアの大都市だ。各国・地域の消費文化の中心地でもある。もともと味覚、食材、調理法などで共通するものが少なくなく、親しみやすいこと、サブカルチャーやファッションその他の面でも日本の影響が濃く見られることなどからも、和食ならびに日本食以外の分野についても『日本ブランド』がそれなりの浸透力を持つことができる。

そのため地場資本の外食チェーンでも『和食』アイテムを取り上げるところが増えてきており、現地レベルの庶民的な価格で日本食らしきものを食べることができるようにもなりつつある。 

ただし食事の分野において日本のネームヴァリューがまったく通じないところも少なくない。欧米においても都市在住者以外では日本食といっても『中華料理と違うのかい?』とまったくイメージさえ沸かない人は少なくない。また同じ『アジア』の中でもヒマラヤの西側の国々となると一気に『和食圏外』となる。とりわけ中東あたりまで来ると、刺身や寿司の類を『奇食』ととらえる人さえ少なくない。 

インドやスリランカあたりで大都市には和食レストランがいくつかあるが、いかんせん『圏外』であるため、東アジアや東南アジアでの和食に比べると、食材の供給の問題もあるがコストバリュー、ヴァリエーションともに著しく低くなってしまうのは致しかたない。 

<続く>

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