中央政権継続へ

昨日、世界最大の選挙、インドの下院選の結果が出た。
国民会議派+ : 258
インド人民党+ : 158
左派陣営+ : 24
大衆社会党 : 21
社会党 : 23
ラーシュトリヤ・ジャナター・ダル+ : 4
全インド・アンナ・ドラビダ進歩連盟+ : 10
テルグ・デーサム党 : 9
ビージュ・ジャナター・ダル : 13
ジャナター・ダル : 3
その他 : 20
総数 : 543
国民会議派陣営が前回2004年の総選挙時の234議席から28議席増となり、インド人民党陣営はオリッサの有力政党ビジュー・ジャナター・ダルが離脱した分も含めて前回184から30減である。国民会議派単独でも205で、前回145であったところからの大きな伸びが注目に値する。対するインド人民党は116であった。
選挙前の出口調査では、現政権の国民会議派陣営の勝利の可能性が高いとのことではあったものの、波乱含みであろうことを予想する向きもあった。
国民会議派陣営とインド人民党陣営の拮抗、あるいはこれらと立場を異にする第三勢力の台頭の予感などから、国民会議派でもなくインド人民党でもない、他の有力政党が次期政権を成立させるキーとなるであろうという意見が多かったからだ。
たとえば大衆社会党のマーヤワティー党首が『初のダリット出身の首相誕生か』というサプライズの可能性が取り沙汰されるなど、意外な展開となる可能性を示唆する報道もあった。
しかし実際フタを開けてみれば、国民会議派陣営の議席増、インド人民党陣営の議席減、第三勢力は予想ほどには伸張せず、国民会議派陣営の勝利という結果となり、会議派陣営は過半数には届かないものの、今後少数政党を自陣に取り込み新政権を構成することになる。
80年代後半以降、国民会議派が単独で過半数を得ることはなくなり、90年代以降台頭してきたインド人民党と合わせて、二大政党と形容されるようになったものの、現在前者はUPA (統一進歩同盟:United Progressive Alliance)を、後者はNDA(国民民主同盟:National Democratic Alliance)をそれぞれ友好関係にある政党とともに構成して選挙戦を戦い、政権を構成・維持するようになっている。
民主主義やそれを実現する手段の選挙において、マジョリティによる『数』こそが力であり、少数者の意見は切り捨てられる傾向があるが、こうした状況はそうしたマイノリティの声を中央政界に伝えるためには歓迎すべきことかもしれない。
2004年以降現在までの中央政界運営においても、UPA政権内で国民会議派とこれを構成する友党との間での軋轢があったし、外資系企業の労使問題を巡り、閣外協力していた共産党との衝突もあった。
総体として、近年のインドにおいては、大政党が強力なイニシャチヴを取りにくい状態となり、政権内でのコンセンサスに手間や時間がかかるようになっているものの、大政党の周囲に寄り添う形で政権運営に加担する他政党によるチェック機能が働くため、単独の指導者ないしは政党による強引なミスリードが生じにくく、全体に目配りの効いた政治がなされる傾向があると私は感じている。
インドの政治土壌や個々の政治家の問題はいろいろあるにせよ、世界第二番目の人口大国であり、文化、人種、信条、生活・教育水準等々さまざまな面から、モザイクのような多様性に富むこの国において、独立以来、選挙を通じた民主的な手法にて政権が選出されていることについては、いつものことながら畏敬の念を抱かずにはいられない。
インド近隣国をはじめとする他の途上国を見渡してみても、これがうまく実現できないどころか、『民主主義』という制度そのものが夢物語である国は少なくないし、経済的により高い次元にある国々においても、こうした民主的な手続きの面において、まだまだ未成熟な国は数え切れない。
加えて、軍に対するシビリアン・コントロールがしっかり効いており、これが政治に影響を及ぼさないという点からも、途上国の中では世界有数の安定感という点からも格別で、国際社会がインドに学ぶべきところ、参考にすべきところはとても多いと私は考えている。
Lok Sabha Elections 2009 (THE TIMES OF INDIA)

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