デリーの宿

乗り換えのために必ず立ち寄らなければならない街というものがある。利用する国際線フライトが発着するようなところで、そこから旅行が開始されることになる。もちろんあちこち出歩いたりすることはあり、知己を訪れたり、グルメを楽しんだり、新しい注目スポットを訪れてみたりすることはあっても、すでに繰り返し訪問したことがあったり、かつて住んでいたことがある街となると、もはや好奇心を満たすよりも、旅行を始めるにあたって必要なものを調達する場所としての比重のほうが高くなる。

するとなるべく短い時間で用事を済ますことができるようにするため、滞在するエリアへのアクセス、鉄道駅までの距離、ATMあるいは両替所、携帯電話のSIM購入に手間がかからず販売する店の営業時間も長いなどといった、効率よく立ち回ることができる環境が大切になってくる。当然、その環境の中に宿そのものの利便性も加わってくる。

ロケーション、部屋の質に対して料金が財布に優しいかどうか、利用する時期に空室があり、予約も容易であるかどうかということがまず頭に浮かぶ。人気の宿で、混み合う時期にはなかなか空きがないとか、常に予約なしで宿泊希望者が次々にやってくるので、メールで問い合わせてもなかなか返信してくれないようなところはけっこうある。

ここ数年、デリーで常宿にしているCottage Yes Pleaseは、特に部屋がキレイなわけではなく、料金が飛び切り安いわけでもなく、同程度の宿はいくらでもあるのだが、私はよく利用している。スタッフの入れ替わりはあまりなく、いつも同じ顔ぶれなのでこちらのことをよく覚えてくれている。

まずはメールで問い合わせると、即時回答してくれること。夜にメールを出しておくと、翌日の午前中には回答してくれるし、予約の管理もしっかりしている。

そしてどんな時間帯にチェックイン、チェックアウトするにしても、きちんとした対応をしてくれることだ。ちゃんとしたホテル並みに、どんな時間帯でもスタッフがカウンターで執務しており、日中と変わらない応対をしてくれるため、「アテにできる」という安心感がある。

通常、エコノミーな宿の弱い部分として、深夜あたりから未明の時間帯に到着あるいは出発しようとする場合の対応がある。ロビーの床などでごろ寝しているスタッフを大声で起こすと、眠そうな目をこすりながら嫌々手続きをしたり、あるいは到着したこちらが予約客であることを確認もせずに「満室だ」と、追い返そうとしたりすることが往々にしてあるのが普通だ。

さらには料金面での事柄もある。人を見て料金を変えるようなことはしない。タクシーなどを頼んだ場合も同様で、まともな金額による定額サービスを実施しており、明朗会計である点も好印象だ。

加えて、ロビーには、客が自由に座って新聞を読んだり、Wifiでネット接続をしたりなどして過ごすことができるスペースがあり、他の宿泊客たちと気楽に会話を楽しめる環境であることだ。

西洋人客も多く、閑散期には周囲の宿はガラガラでも、ここはいつもそれなりに宿泊客が出入りしているのだが、それとは逆に繁忙期でもエコノミーな宿の割には客室数が多いこと、周囲に同程度の料金の宿が数多いため、ピーク時期でも数日前にメールしておけば、深夜過ぎに到着する場合でも部屋を確保できることが多い。

ここは、とりわけ日本人客の間で人気が高いようだが、ロビーで営業しているシゲタトラベルのおかげという部分もあるように思われる。日本語が流暢なラジェンドラ氏が切り盛りしている。彼の元には日本人スタッフも常駐しており、メールによる問い合わせにはこの方が対応されているらしい。

ニューデリー駅前地域のワサワサした立地だが、個人的にはなかなか好印象な宿である。

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