家電メーカーのデジタル一眼に期待

digital SLR 
 いまや日本メーカーの独壇場となったデジタルカメラ市場。コンパクトモデルの分野では従来のカメラメーカーに加えてカシオ、日立、サンヨーといった家電メーカーの進出が目立つ。店頭を眺めても、価格.com あたりを覗いてみてもこうした新興勢力にたくましい勢いを感じる。
 そろそろ頭打ちといわれているのがコンパクトデジカメのマーケット。ハイエンド志向ユーザーの食指は、すでにデジタル一眼レフへと移って久しい。数年前まではほぼ業務用・プロ用に限られており、非常に高価な機種しかなかったこのマーケットだが、20003年9月にキヤノンによる初代のEOS Kissデジタルの発売以降、一気に火が付いた感じだ。 その後ニコンからはD70、そしてオリンパス、コニカミノルタ、シグマと銀塩時代から一眼レフカメラを製造してきた各社が、一般ユーザーにも手の届く価格帯のモデルを次々に投入し、ホットな市場になってきた。
 そうした中、キヤノンとニコンという二大メーカーが圧倒的なシェアを占め、デジタル一眼レフの分野では出遅れた老舗のコニカミノルタがカメラ事業からの撤退を発表するなど、熾烈なサバイバルゲームによる業界再編が進行中。同社が初めて世に送り出したデジタル一眼、α7DIGITALはボディ自体に手振れ補正機能を盛り込むとともにカメラとして、完成度の高い傑作として高い評価を浴びていただけにとても残念である。


 そして今、パナソニックがオリンパスと提携、ソニーは昨年夏より一眼レフデジタルカメラ開発におけるパートナーシップを表明していたコニカミノルタの撤退を受け、同社のカメラ事業を買い取ることにより、今年からデジタル一眼レフ市場に参戦することを予定している。
 ひょっとすると数年のうちに、キヤノン&ニコンをいくつかの家電メーカーが肉薄するという構図が展開されるのかもしれない。カメラという道具にかかわる圧倒的な経験と技術の蓄積があり、世界のカメラ市場をリードするキヤノンとニコン。やはりモチは餅屋といったところだろう。それに対してさまざまな電子機器の製造を手がけてきたソニー他の「痒いところに手が届く」キメ細かな気配りの利いた製品開発を得意とする家電メーカー各社が、老舗のカメラ屋と手を組んでどんなものを打ち出しくるのか大いに気になるところである。  
 いうまでもなくレンズのマウントのサイズや形状をはじめとして規格はカメラ各社 さまざまだ。だが通常はメーカーを超えた汎用性は通常ないことから、特に個人ユーザーの場合、すでに手持ちのレンズ群等をムダにしないよう、一眼レフカメラのボディの買い替えの際には、一度購入したメーカーのモデルの中から検討するのが普通だ。
 つまり初めてこの類のカメラを購入する層をできるだけ多く取り込めるかどうかが今後の成長のカギとなる。家電メーカーがわざわざこんな厳しい市場に初参入するからには、相当な力を注いで魅力的なモデルを準備してくるはずだ。
 いうまでもなく一眼レフカメラは決して単体で完結するものではない。購入をしようと考える人たちは周辺機器も合わせてトータルに検討するはずだ。利用可能な交換レンズその他を含めたコンポーネントの充実が必要となるため、中・高級機市場で既存大手とまともに激突することは避けて廉価版のエントリーモデルに特化するのが自然かもしれない。
 あるいはユーザーに優しい機能の普及も考えられよう。たとえばライブビューモードで液晶モニターを見ながら撮影可能なカメラは、現行では天体撮影に特化した珍しいモデル、キヤノン20Daと最近発売されたオリンパスのE330のみである。後者についてはデジタル一眼レフカメラとして世界初の可動式液晶モニターには心動かされるものがある。一眼レフというカメラの構造上、この機構を装備するのにはちょっとトリッキーな方法が必要となるのだが、ローアングル撮影などの際にわざわざアングルファインダーを使用したり、無理な姿勢を取らなくていいのだから実にありがたい。
 今後、ビデオカメラのようにモニターが上下左右に動くバリアングル仕様になったり、あるいはどうにかして動画撮影を加えるなど、従来の一眼レフでは考えられなかった機能を搭載することになったり、これまでとは違う新たな顧客層の掘り起こしを狙うのではないだろうかと想像している。
 つまりデジタル一眼レフカメラの定義を変えるようなヘンなカメラが出てくることも考えられる。今後、こうした動きをリードできるのは、これまでの一眼レフカメラに対する概念や旧来からのユーザーといったしがらみのない家電メーカーではないかと思うのだ。
 それにしても選択の幅が広がることはいいことだ。私は現在キヤノンの20Dを持っている。3月18日に30Dという後継機の発売が発売されることにより、やがて店頭から消えてしまうが、扱いやすさ、サイズ、画質等あらゆる面からとても気に入っている。メーカー純正はもちろんシグマやタムロンといったサードパーティーを含め、高倍率ズーム、手持ちでスローシャッターを可能にする手振れ補正機能付き、超広角等々、幅広いバリエーションの中からレンズを選択できるようになってきているのもうれしい。
 実はそれでも大きな不満がある。それはホコリへの対策がまったくなされていないことだ。インドで使用するとセンサーに無数の微細なゴミが付着していまい、せっかく撮影した画像にボツボツと汚いシミがこびりついていることに後から気がついたりする。 大きめのブロアーでビュビューッと吹けばたいていの付着物は消えてなくなるとはいえ、ときにこびりついて離れない粘着ゴミ(?)も付着するから厄介だ。 だからといってレンズ交換することをためらうようでは、何のための一眼レフだかわからなくなってしまう。
 もちろん銀塩カメラの時代もレンズを交換すれば当然チリやホコリはボディの中に入ってきた。だが一枚撮影するごとにフイルム巻き上げるので、後に続くコマに影響が出ることはなかった。デジタル一眼レフでは、フイルムにあたるセンサーは常に同じところにあるため、汚れが蓄積してしまうのである。
 デジカメが市場を席捲して久しいが、ふと思えば記録媒体がフイルムからセンサーに置き換えられたことを除けば(それ自体革命的な出来事だが)、カメラという道具の基本的な構造や原理は同じだ。このゴミ問題にしてみても、旧来の一眼レフカメラのありかたをそのままデジタルに置き換えただけであることに根本的な問題があるのかもしれない。
 それはともかく、今のデジタルカメラはひょっとすると昔のタイプライターがやっとワープロへと進化したくらいのところにあるように思うのだ。電子化することにより大きく飛躍するためのスタート地点に、今ようやくたどり着いたようなものではないだろうか。
 長年の経験と蓄積、高い評判と熱心なファンを抱えるカメラメーカーに対して、新規参入する一眼レフ市場ではおそらく搦め手から攻めることになりそうな家電メーカーたちが、まったく新しい感覚で旧来の『カメラ』に対する既成概念の枠を破る傑作を打ち出すことを期待したい。

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