ルンビニーで宿に荷物を置いてから、最初に向かったのは敷地内のチベット仏教寺院、そしてその裏手にあるマーヤーデーヴィ―寺院。ここは寺院というよりも、釈尊が生まれた場所の遺構が保存されているところで、こうしたいい状態でちゃんと残っているというのは感動的でさえある。これは、マーヤーデーヴィー寺院の白い壁の建物の中に保存されており、風雨で劣化しないようになっている。
日本、中国、東南アジア他の仏教国の古刹、名刹はもとより、文化や伝統、価値観や行動様式など、仏教が発生していなかったら、現在とまったく異なるものとなっていたわけで、まさにここからそれが始まったということになる。実にありがたいものだ。
世界遺産登録されている遺跡であるが、ここでは2013年には紀元前6世紀のものとみられる建築物の遺構が見つかっており、誕生した時期に様々な説がある釈尊だが、その生誕年について、より古いものであるとする説に有力な手掛かりを与えることになる可能性がある。
釈迦の生誕年が早まる可能性も、ネパールの遺跡で新発見(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3003957
マーヤーデーヴィー寺院の裏手には、沐浴池とタルチョが沢山はためく木があり、思索にふけるにちょうど良い空間を提供している。池のほとりで、タイの僧侶と信徒たちが読経を上げていたが、同じく巡礼で訪れていたブータン人団体の男性が、何を思ったのかお経を唱える彼らに、うやうやしくお布施を渡していた。
遺跡公園自体はまだ完成しているわけではないようだが、それでもずいぶん大掛かりで立派なものを作ったものだ。2008年だかにネパール訪問した際、中国が大掛かりな整備に乗り出すという記事を読んだことがあるが、これがそうなのだろうか。まさに中国さまさまである。
ただしいけないのは、自転車で回らないとあまりに広大すぎて大変なのだが、マーヤーデーヴィー寺院がある側から長い通路を渡って、各国の寺院が建ち並ぶエリアへの移動は、徒歩のみで可能であること。自転車の場合は一度敷地の外に出て、別のゲートから入りなおす必要があることだ。まだすっかり完成したわけではないので、今後このあたりは改善されていくことだろう。
日本人観光客も多いことと思うが、ボードガヤーと違って日本語が上手な怪しい奴がつきまとうようなことはなく、実に快適に周遊することができる。
各国から出ている寺院見学するのもなかなかいい。ボードガヤーで感じたように、これらはそれぞれ自国の様式を模倣したインド建材によるものでしかないのだが、それでもこうした形でいろいろ工夫して寺院が出されているということは興味深いものである。
広大な敷地内に、韓国寺院、スリランカ寺院、ミャンマー寺院、ネパール寺院、様々な宗派等のチベット仏教寺院その他が点在しているが、とりわけタイ寺院の洒落たデザインと美しい祭壇が目に鮮やかだ。
遺跡公園の最も北にある日本山妙法寺の仏塔とお堂。藤井日達という僧侶が始めた教団で、ストイックさで知られるが、日本ではあまりその名を耳にすることはない。やはり海外での存在感は実に大きく、建立する建物も壮大だ。基本的に活動先の国での「独立採算」でやっていると聞くので、僧侶たちは厳格な修行者であるとともに、大変優れた経営者であるという話も耳にする。現地政財界とのパイプも太いというが、いったいどうやって集金調達をしているのか、いつも不思議に思う。
ここからは湿原の景色が眺められる。仏塔の上から眺めるとさらに良い。「周囲は鶴の保護区となっており、これらを無料で見ることができる」とガイドブックに書かれているが。ちょうどシーズンであるはずだが。私は視力が悪いためよく見えなかった。
日本山妙法寺のお堂も拝見する。ボードガヤーのそれと違って、こちらはこじんまりしているが、やはり日本の教団のお寺らしく、ずいぶんキレイにしてあるものだ。勤行の時間帯も書かれており、誰でも歓迎とある。
遺跡公園敷地内にはまだ森林が残っている。かつてタライ地域は深い森に包まれており、北インドから人々が大量に移住したことにより、広大な耕作地に変貌したというが、その森林であったころにはこんな風景が続いていたのではないか?と思ったりする。しかしこういう場所なので、冬で気温が低いのに、蚊が非常に多い。アッサムもそうであった。これが気温の高い時期であれば、蚊の大群に大変悩まされることだろう。