日本メディアによるインド選挙関係報道

こちらの記事を紙面で見たが、やはり日本メディアによるインド関係記事は非常に底の浅いものが大半と改めて感じさせられた。

要は「反モーディー」のこういう側面もある、というようなことを伝えたいのだろうけれども、カシミールにおける反インドの機運は大昔からであり、カシミールにおける政情不安が始まったのは国民会議派政権時代。

憲法第370条により、これを基に定められていたカシミールに与えられた特別な地位の廃止、州としての地位を剥奪してUT(Union Territory=連邦直轄地)化したことについても触れられているが、これにより同州内であったラダックが「念願のカシミールからの分離」を果たしたのはまさにこれによる恩恵であった。

つまり「インドに支配を受けるジャンムー&カシミール州に支配を受けてきたラダックの解放」という構造もあった。

その後、カシミールもラダックもUTからそれぞれ州としての地位を与えられることなく時が経過していることについて地元からの批判は少なくないものの、先述の「憲法第370条廃止」とこれによるカシミール地域の取り扱いの変更についてはインド国内で好意的に受け止められてきた。州からUTへの移行期には記事にもあるとおり、多くの政治家たちが拘束されたり自宅軟禁となったが、これについては分離主義的な感情を煽ることによる騒擾を防ぐためのものであったのだろう。

カシミールにおける有力政党は特定のファミリーによる世襲勢力であるとともに、基本的に「アンチ・インド」である。J&K州最後のチーフミニスターとなったメヘブーバー・ムフティ率いるPDP(Jammu & Kashmir people’s Democratic Party)は州として最後の選挙戦でBJPと組んでこれに勝ったが、その任期中に自らの知らぬ間に州としてのステイタスが一夜のうちに無くなり、自身も拘束されるなど、アッと驚く政変劇となった。

連立バートナーとしてのBJP、こうした手続き上の問題はなかったのか等々、疑問符の付く部分は否定できないものの、カシミールはこれまで長年隣国(パ国)による干渉を通じた工作活動の対象となってきた地域であり、Armed Forces (Special Powers) Act(警察組織ではない軍組織が市民を逮捕・拘束して尋問する権限が与えられる特別措置法)の適用地域であるという特殊性がある。

そんな特殊な地域であるという前提抜きで、こうした記事を書く、掲載するというメディアの意識が私には理解できない。

(インド総選挙2024 大国の行方)自治権奪われた街「自由が欲しい」

インドからカフカスまで

俗に「モンゴルの東征で広まった」とされるこんなアイテムがあったり、それはさておきタンドゥールで焼いた各種パン類があったり、もちろんいろんなケバーブ類もあったり(その他おそらくスープやシチューの類も)と、アフガニスタンからアルメニア、ジョージアにかけての食文化には共通するものがとても多いようだ。

「〇〇料理」「☓☓料理」といった具合に、現在の国境線で食文化が完結するわけではなく、「〇〇族料理」「☓☓族料理」という形で国境をまたいで居住する民族料理の範疇で成り立つものでもないことに改めて気が付かされる。

食文化は大陸規模で共有されるもっと大きなものであり、一度他所から入ったものが土地の影響を受けてローカライズされた形で発展したり、それが故地に再輸出されて、新たな味わいが人気を博したりする、そんなダイナミックさがある。

アフガニスタン、イランあたりを軸に、かたや中央アジアやカフカス、かたやインドを中心とする南アジア方面へと広がったペルシャ系の食文化。

こんな「ペルシャ系食文化」を家系図的に系統立てて網羅した俯瞰した図鑑的なものがあったら、広大な地域での食べ歩きに役立ちそうだし、インドやパキスタンなどでそれらに含まれるモノを食べる際に、背景にある豊かな歴史や地域を超えた繋がりが感じられて楽しいのではないかと思う。

そのペルシャ系料理が起源ではないけど、このジョージアのモモ的な料理についても、どの地域でどんな形で伝播発展していったのか、地域ごとにどんなバリエーションがあるのか、図解してあったら面白そうだ。

唐突ではあるが、広大な食の繋がりと食文化の連鎖と交流に気が付かせてくれるインドという国は、実にありがたい国だなぁと改めて思う。そこには様々なペルシャ起源のアイテムがあり、独自の発展を遂げているがゆえ、本場イランであったり、その影響を強く受けた中央アジアやカフカスの食と対称すると、たいへん興味深いものがある。

Khinkali Recipe (Georgian Dumplings) Momsdish

機関車6両+貨物車両295両=301連結

踏切や鉄道駅などで通過する貨物列車があると、何となくその車両数を数える人は少なくないだろう。私もそうである。

「機関車6両、貨物車両295両」というのは見たことがない。通常は機関車1両で30〜50両程度の貨物車両を牽引。(運搬する物資にもよるかと思う)

中途に連結してある機関車は加速、減速、制動など、先頭車両での操作にシンクロするような機構があるのだろうか?

All about Super Vasuki – India’s longest & heaviest freight train with 6 engines, 295 wagons (THE ECONOMIC TIMES)

Ole ! = Wah Allah !

この本がとても面白い。イスラム世界とヨーロッパ世界の関係性。前者が伝えた高い文化と技術があったからこそ、後のヨーロッパが大きく発展することができた。そしてユダヤ人たちに対するヨーロッパの不寛容さとイスラム世界の寛容さ。今のアラブ世界とイスラエルの対立とはまったく異なる密接な関係性があった。

また、各署に散りばめられているトリビア的なものもこれまた興味深い。

スペイン語には今なおアラビア語起源の言葉が4,000語ほどあり、その中にはアラビア語の定冠詞「al-」を残したものも多いとのこと。また、サッカーや闘牛の応援などで耳にする「オーレ!(Ole !)」は、アラビア語の「Wallah(Wah Allah)ワッラー!(神に誓って!)」が訛ったものであるとのこと。

スペインの人たちは普段から意識することなく、唯一絶対の存在の名を口にしているわけだ。「啓典の民」である3宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教における神の概念は同一であるため、なんと呼ぼうと意味する対象は変らないわけだが。

書名:イスラムがヨーロッパ世界を想像した

著者:宮田律

出版社:光文社新書

ISBN-10 ‏ : ‎ 4334046088

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4334046088

たかが名前、されど名前

今どきのマハーラーシュトラのバスチケット。車内で車掌が集金に来るが発券日時、乗車地と目的地、料金、車掌氏名などが記載されている。本日の車掌はシンデーさんと言うらしい。マラーティーのクシャトリヤによくある苗字。

これが北だとスィンディヤーになる。グワリヤル旧藩王国のスィンディヤー姓も観念上はシンデーに繋がる。名は体をあらわすで、インドの苗字はある意味あからさま。カーストや出自がそのまま苗字となることが多いからだ。

その反面、時代が下ってからの傾向として、石工などの職能集団が一族で苗字を変えてタークル風の姓にしたり、現在の職業を苗字にしたりということもある。「コントラクター」「パイロット」など。ダリットなどが一族でクリスチャンに改宗する際などにも、元の西部を捨ててクリスチャン風の苗字に改めることも多い。

そうかと思えば、原則的には姓のないムスリムの間で、これとは逆に先祖がヒンドゥー時代の苗字「チョードリー」「セート」といった苗字を引き続き使っている場合もある。

たかが名前、されど名前、である。