マオイストたちの裏インド 1

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 先日、ZEE NEWSで、ビハール、ウッタル・プラデーシュ、ウッタラーンチャル、オリッサ、アーンドラ・プラデーシュ、ジャールカンドの六州で活発になりつつあるマオイストたちの活動に関する特集が組まれていた。また西部でもパキスタンと国境を接するラージャスターンでもその気配があり、彼らに対する「外国から」の資金援助の可能性をも示唆していた。

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ゲリラとポルノ

 政府を向こうに回して独立や自治等を求めて活動する反政府武装勢力が、麻薬の生産やその流通、要人等を身代金目的で誘拐、実効支配地域の住民たちの中から強制的に徴兵を行なうといったことはよく耳にする。
 質・量ともに圧倒的に有利な政府を相手にまともに渡り合うのは限りなく不可能に近いことだ。何しろ向こうは「国家」という巨大な機構の中に豊富な財源を持ち、警察という治安組織、軍という武力を備えるとともに、「法」という後ろ盾のもとにあらゆる権力を行使できるからだ。さらに必要とあれば「外交力」にものを言わせて周辺国や世界の列強国から様々な形の有形無形の援助を受けることも可能なのである。
 そうした中で反政府武装組織が活躍できるスペースといえば、公権力がまともに機能している限りは、政府の腕力が及びにくい辺境ということになるだろう。そこに住む人々はえてして政権を構成するマジョリティとは大きく違う背景を持つ人たちで、特定の地域性、民族性、宗教その他の文化的・思想的要素を共有するとともに、内部での結束が非常に固いグループということにもなろう。見方を変えれば、まさにそうした異質性がマジョリティとの埋めがたい溝、絶えない摩擦と軋轢を生むのかもしれない。
 ともあれ田舎の貧しい民間人たちがやむにやまれず武器を取る、いわば百姓一揆に近い性格のものとすれば、資金的にとても苦しいのは無理もない。彼らが闘いを挑む相手の自国政府と対立関係にある隣国から資金、技術等の供与を受けているケースもあるにせよ、基本的にはなんとか知恵をしぼって自給自足でやっていくしかない。
 そうした中、インド東北部のトリプラ州では反政府組織が資金調達のためにポルノフィルムを製作してインド国内や周辺国に流しているという記事を目にした。組織に捉えられた女性がゲリラ兵士を相手に出演を強制されるケースが多いとのことだが、ゲリラグループ内の女性兵士が出ることも珍しくないのだそうだ。こうしたものが出てきたのは最近一、二年ほどのことだが、この風潮はここにきて一気に広がってきているとも書かれている。
 ゲリラとポルノという奇異な取り合わせはショッキングだが、これは降伏したゲリラ兵を取り調べた警察から出た情報だという。トリプラ州の反政府組織が実効支配する「解放区」、他地域のシンパたちの失望そして人心離反を狙ったプロパガンダという部分もあるのかもしれないが、政府が組織の非道を糾弾してみたところで、この地域で続く叛乱の原因が取り除かれるわけでもない。
 インド国内いくつかの地域で今も分離活動が続いている。多民族・多文化が共生するこの国で、まさに人々の叡智が試されていることだけは間違いないだろう。
India rebels ‘making porn films (BBC South Asia)

ハイジャック防止へ タフなポリシー

 今後、インド政府は最悪の場合「ハイジャック機を撃墜することを認める」ことになるのだそうだ。CS (Cabinet Committee on Security )が発表した方針によれば、人命の保護と事件終結に向けてハイジャック犯たちとの対話は行えども、犯人たちの要求を交えた交渉は行わないとのことである。
 インド機のハイジャック事件といえば、1999年のインディアン・エアラインスのネパール首都カトマンズ発のニューデリー行きのフライトが武装グループにより乗っ取られて、アムリトサル、UAEと迷走した後、当時タリバーン政権下のアフガニスタンのカンダハール空港にて籠城した事件が記憶に新しいところだ。
 最悪の場合旅客機を撃墜するというのは、2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロでの顛末を受けてのことだ。インドもまたテロ多発国であることに代わりはなく、「脅しには屈しない」という明白な姿勢こそが、事件を未然に防ぐという判断なのだろう。同時にこれは、万一危機が発生した際の被害を最小限に食い止めるため強硬手段に出ることを可能にするため「国家的合意」を形成する手続きである。
 ともあれこうした事態が発生すれば、政権を担当する内閣や与党の性格その他の要因により、ずいぶん違った姿勢を見せるかもしれない。またインド領内で乗っ取られたインド機であっても、たとえば大勢の外国人ツアーグループを乗せていたりした場合、「9.11型」の攻撃が予想されたとしても、外交上大いに問題であることから先述の手段は非常に取り難いのではないだろうか。
 実に物騒な時代になったものである。
Planes can be shot down, no negotiation with hijackers
(Hindustan Times)

「革命家」は二人乗り?

 かつて自転車をこいでいた人たちがバイクにまたがり、スクーターに乗っていた人たちがクルマに乗るようになったかのように見える昨今のインド。それでもまだまだ家族総出(?)で一台のバジャージにまたがる風景は健在。
 そんな大切な「人々の足」としてのバイクやスクーターの存在は隣国ネパールでも同様だが、首都カトマンズでは異変が起きている。治安上の理由から二人乗りが禁止されたのである。猛スピードでバイクを駆る運転者、その後方に乗る男が銃を乱射というシーンはボリウッドのアクション映画でしばしば目にするが、ネパールの街ではマオイストたちにより、実際にこうした攻撃が行なわれているのだそうだ。
街で再び人々が二人乗り(あるいは三人乗り、四人乗り・・・)できるようになったころ、この小さな山国に平和が再び訪れている、ということになるのだろうか。
 暴力を肯定するつもりはないが、こういう勢力が存在することについては、その社会の抱える深刻な問題があることも事実で、「造反有理」という面も否定できるわけではない。  
 もちろん「革命無罪」とは到底思えないのだが。
Pillion ride ban in Kathmandu (BBC South Asia)

テロ後のロンドン

 2012年のオリンピック開催がイギリスのロンドンに決定してのお祝いムードもつかの間、まさにその翌日に同地で高性能爆発物を使用した同時多発テロにより死者50名以上、およそ700人にものぼる負傷者という痛ましい事件が起きた。
 アルカイダ系のグループによる犯行と見られていることから、同地在住のムスリムたちへのいわれのない「報復」が心配されているという。
 UKエイジアンといえば通常イギリス在住の南アジア系の人々のことを指すが、人口180万人近い大きなマイノリティグループであるとともに、この中のおよそ半分がイスラーム教徒であることでも知られる。
 イギリスに住んでいるムスリム人口はおよそ150万人とされるが、このうちパキスタン出身者が61万人、バングラデシュから20万人、インドからは16万人を数える。これら三か国の出身者たちだけで97万人、つまり在英ムスリム人口の65パーセントにも及ぶのである。
 総人口5900万人のこの国で、「エイジアン」にしても「ムスリム」にしても、都市部に集中しているためかなりの存在感があるはずだ。
 9.11のときも事件とは無関係のイスラーム教徒(およびスィク教徒)の人々の被害がアメリカから多数報じられていた。今回はそのようなことが起きないことを願いたい。
 近年、世界の耳目をひきつけるテロ事件にかなり共通した背景があるため、欧米その他の非ムスリム国で特定の宗教コミュニティへの偏見や彼らを危険視する傾向がさらに進む可能性が高いことついても大いに懸念されるところである。
Muslim leaders join condemnation (BBC South Asia)