『旅行仕様』の楽しいカメラは 3

Nikon Coolpix8400
 なるべく軽量に・・・ということで、コンパクトデジタルカメラという選択肢も当然出てくる。近ごろのそうしたモデルのトレンドは高倍率なズームレンズと手ブレ補正の搭載だろう。ズームレンズで気になることがある。倍率が大きい反面、広角側が不足するモデルが多いこと。  多くは35mmカメラ換算で35mmから38mmからというものがほとんどだ。ちょっと高目のものになると広角側は別売りのワイドコンバージョンレンズを装着して対応なんていうものも少なくない。しょせんコンパクトカメラ、ズームアップした際の画質はかなり悪くなるので、テレ端はせいぜい80mm程度あれば充分なのではないかと思う。しかし建物を撮るにしても室内で撮影するにしても広角側28mmはぜひ確保したいところだ。
 手ブレ補正については、もともとはフィルム時代と違い液晶モニターを見て撮影するスタイルが定着していること、先述の高倍率ズームが普及してきているためブレが生じやすくなってきていることから有効である。もともとは一眼レフなどの望遠レンズを安定して撮影するために開発された機能ではあるが、三脚を使用することなしに手持ちでスローシャッターを切ることができるなど、撮影できるシチュエーションが従来よりも確実に広がるため極端な話広角レンズであっても大いに役立つ。
 手元にある小さなモノを撮ってみることも多いので、本格的なマクロ機能も欲しい。そして測光方式も評価測光、中央部重点平均測光、スポット測光を任意に選択できるものでありたい。撮影モードもプログラム、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出と用意してあって欲しい。これらの機能を選ぶ際の使い勝手も良くなくては困る。 
 もちろん電源入れてからの起動は早く連写にも強いものがいい。三脚に固定して撮影するときにレリーズを使いたい。液晶モニターはバリアングルが欲しい。液晶モニターが付いていても、最近増えてきているファインダー省略したようなカメラはあまり好きじゃないなあ・・・なんて注文を挙げていると、いつの間にかコンパクトカメラらしいサイズのものでは適当なモデルが見当たらなくなってしまう。
 それでもちょっと前まではかなり魅力的なモデルは存在していた。たとえばニコンのCOOLPIX 5000であり、その後継機種の同じく5400やこのタイプ最終型の8400といったシリーズがそれに当たると個人的には思っている。
 前者ふたつは28mmから最後のモデルは24ミリから始まるズームレンズを持ち、機能・描写ともに評判の高いものであった。外付けのフラッシュが使用できるようにホットシューも付いている。
 私はこのタイプ最初の5000を持っていたのだが、秒進分歩といわれるデジカメの世界にあっても、画質は今売られているコンパクトカメラ上級機種に比較しても遜色ないといわれるほど現在でもなかなか評判は高いようだ。
 私も購入した当初は大いに気に入ってきた。ある一点を除いては・・・。それは取り回しが非常に悪いことである。電源の起動が遅く、ボタンを押してからシャッターが切れるまで数秒かかる。そして次にシャッターを切ることができるようになるまで10秒ほど待たなくてはならない。非常にじれったいのであった。また多彩な機能を搭載しているにもかかわらず、そのひとつひとつを使うにあたりいくつもの面倒なボタン操作をしなくてはならなかった。
 おそらく最終型の8400になってからはずいぶん改善されたことだろうし、さらに次代のモデルが続いていれば相当良いカメラになったことと思うが、そうはならなかった。ニコンに限らず、どのメーカーでもコンパクトデジタルカメラの高級機種は軒並み姿を消している。
 デジタル一眼レフの価格が下がったことにより、コンパクトタイプのハイエンド機のユーザーはそちらにシフトしていることがある。購買層の大部分はデジタル一眼レフが欲しくても手の届かない人たちであったため、価格帯がほぼ同じなってしまうと存在意義がなくなってしまったのだろう。加えて高性能な『ディマージュ』シリーズを製造していたコニカミノルタのような有力メーカーがカメラ事業そのものから撤退してしまったことなどが理由として挙げられるだろう。
 現在のところ気に入って使用しているのはリコーのGR-DIGITALで、使用感はなかなか良い。28mm単焦点というのが気に入っているポイントのひとつだが、これ一台ですべて満足というわけにもいかない。やはり便利なズーム付きのものも欲しくなってくる。
 今までのところデジタルコンパクトカメラの分野で、銀塩カメラ時代のCONTAXのG1G2、または富士写真フィルムのTIARAなどのように長く大切に使いたくなるようなモデルは存在していない。
 現時点で少々気になっているのは、リコーのCaplio GX8の後継機がそろそろ発表になりそうなこと。それとキヤノンのPOWER SHOT S80も悪くないかなと思っている。だがどちらも積極的に『欲しい!』と思わせるものではない。ここのところのデジタル一眼レフのブームがひと息ついて、手軽だけどちょっと贅沢な高級コンパクトデジタルカメラの需要が高まって来ないものかと思っているところだ。 
 まあ人間の『物欲』というものは際限のないものだが、待望の面白いカメラを手に入れて、早速インドの風景などを撮影してみたいが、せっかくの愛機が『盗られちゃいました』なんてことにならないようにお互い気をつけたいものである。

『旅行仕様』の楽しいカメラは 2


 一眼レフ市場に新規参入を予定しているもう一社、ソニーはどういうモデルを準備しているのかこちらも気になるところだ。他社による既存のシステムの中で自社独自の味付けをしたパナソニックの堅実路線とは趣を異にすることになるのではないかと予想している。 
 しかもこちらはカメラ事業から撤退したコニカミノルタ社の同事業部をそっくり継承しており、独自の技術力に加えて常に前向きな社風からして、新規参入の分野ともなれば必ずや『おおっ!』と人目を引くセンセーショナルなモデルを投入すべく、私たちの知らないところで一大プロジェクトが進行中なのだろう。
 加えてもうひとつ、今までのところ注目度はイマイチだが国際的なコラボレーションが進行中。カメラ老舗メーカーのPENTAXが、なんと韓国のSAMSUNGとの共同開発モデルをこの秋に発売する計画があるのだ。後者としては初のデジタル一眼レフカメラだ。韓国本国はもちろん、携帯電話その他の電化製品でそれなりのブランドイメージを築き上げたインドでは、もちろん『SAMSUNG』ネーム最高峰のカメラとして派手に宣伝することになるのではないだろうか。今回開発されるモデルをきっかけに、初めてこのタイプのカメラに手を出すインドのミドルクラスの人々が結構出てくるのかもしれない。
 このところカメラメーカーが家電系メーカーとタイアップする動きの背景には、CCDなどの電子部品の開発や生産の負担がある。デジタルカメラの分野では、銀塩時代に比べて光学部品やアナログ的な機械部分に対する電子系の構造部に依存する割合が高くなってくるにつれて、得意なフィールドを分業しなくては開発が難しくなってきているようだ。
 だがもともとこうした分野にも明るいキヤノンや富士写真フィルムなどは、現在までのところ家電メーカーとの共同開発は行なっていない。資金力も技術力も豊かな前者は、おそらく今後もそうした必要はないのかもしれない。
 キヤノンとニコンでは、35mmの銀塩カメラと同じ大きさの画角を持つ、いわゆる『フルサイズ』CCD搭載カメラが一般ユーザーにも手が届く普及価格で登場することを待ちわびる声が高いものの、依然としてこれらはプロ向けの高級機だ。今までのところ主流はやはりAPS-Cフォーマットのモデル。そうした中で前回取り上げた第三の流れともいうべきフォーサーズ規格はオリンパスの開発によるものだが、今回取り上げたパナソニックを含めて全部で7社が参入を表明しており、今後の成り行き次第では普及価格帯の一眼レフ市場の流れを変えることになる可能性を秘めている。
 私自身は結局何でもいいのだが、一眼レフの操作性とデジタルの利便性が軽量コンパクトにまとまり、ホコリや振動にも強く丈夫でしかも安価・・・といったモデルが出てくるのを楽しみにしている。これぞまさに『旅行仕様』カメラではないだろうか。
 私は写真家ではないので撮ることが目的ではない。けれども写真は好きなので、必要最低限の機材を持って最大限に楽しみたい。旅先へ持参する身の回り品は少なめの私だが、それに比較してカサと重量が張るのはカメラ関係。これらを取り出してみればスカスカでとても身軽なリュックになるのに。
 コンパクトデジカメ一台だけならずいぶん楽だろうとも思う。かといっていつものカメラ一式を放り出して出かけてみると感動的な景色や興味深い風景を目の前にして非常に心残りだったりする。やはりテキトーなところで自己満足させてくれる機械が必要らしい。

『旅行仕様』の楽しいカメラは 1

パナソニック LUMIX DMC-L1
 以前、デジタルカメラ市場の一眼レフの分野へ進出を狙う家電メーカーについて『家電メーカーのデジタル一眼に期待』として取り上げたが、そのうちのひとつパナソニックのモデルLUMIX DMC-L1 は今年の夏以降発売予定であることがすでに発表されている。
 オリンパスと同じフォーサーズシステムを採用、同社およびシグマから発売でこの規格に準拠したレンズが使用できるとはいえ、35ミリ換算で2倍の焦点距離となること、バリエーションはまだ豊富とはいいがたいこと、また超広角域をカバーするレンズは高価なものしかないところは弱みである。今後のレンズラインナップの充実具合は、この新モデルを含めた同システム採用のカメラ群の売れ行きいかんにかかっている。
 言うまでもなく、一眼レフはレンズやストロボその他の様々な周辺機器を自由に組み合わせて使うことができることにその価値がある。そうした既存のコンポーネントを持たない会社が新規参入するのは、技術の蓄積やブランドへの信頼感に欠けるのみならず、実はこの部分が特に難しいのではないかと思う。利用できる機材が何もないようでは、カメラ自体が魅力的でもそれをあえて買おうというユーザーはそういないだろう。
 フォーサーズとは撮像素子つまりセンサーとレンズマウントの共通規格だが、このパナソニックのカメラではオリンパス製品との包括的なシステム互換性を持たすことを想定しているらしい。つまりパナソニックブランドによる最初のモデルが登場する前から、利用できる機材がすでにこの世に存在するということは大きな強みである。
 それだけではない。DMC-L1と同時発売予定の『LEICA D VARIO-ELMARIT 14-50mm F2.8-3.5』がとっても気になるレンズなのだ。『ライカ』ブランドであることについて特に関心はないのだが、その名前を冠しているからには相当良いモノであることを保証しているのだろうと期待するのはいうまでもない。そしてズームにしてはかなり明るいF値を持つことも特筆すべきだが、しかも3〜4段分の手ブレ補正つきということだから、手持ちでの撮影のチャンスがグッと広がる。
 ボディは丈夫なマグネシウム合金ダイカスト構造、記録メディアは軽量コンパクトなSD(新規格のSDHCにも対応)メモリーカード、内蔵フラッシュはバウンス撮影も可能、オリンパスのE-330同様に(カラクリは違うそうだが)背面のモニターではライブビューモードも選択できる。それなのに1/3段刻みのシャッターダイヤルが付いていたり、先述のライカブランドのズームレンズには絞りリングがあったりと、まるでマニュアル機みたいな雰囲気がある。
 私は現在キヤノンの20D を使用している。利用可能なレンズのバリエーションの豊富さとカメラ自体の機能面では大変満足しているものの、特に埃っぽいインドにあってはレンズ交換のたびにゴミやホコリが容赦なくドシドシ入ってくるのにはとても困るので、愛憎半ばするといったところだ。
 しかしパナソニックのDMC-L1には、オリンパス社のEシリーズダストリダクションシステムと同様のものが搭載されていること、そしてコンタックスのG2 並みにコンパクトであることに注目している。フォーサーズ規格の他のコンポーネントはさておき、このボディDMC-L1とレンズLEICA D VARIO-ELMARITの組み合わせだけでも充分すぎるほどの魅力がありそうだ。
 やはり予想していたとおり、カメラ界の老舗にして巨大メーカーであるキヤノンやニコンと真っ向から衝突するようなモデルではないようだ。おそらく同価格帯の他社モデルと比較したスペック面、AF性能、連写機能、操作性、画質等々のうち、どれをとってもあまり勝ち目はないのではないかと思う。だが秒進日歩のデジものの世界にあって、めまぐるしい進化に目を奪われて次から次へと興味関心が移ることなく、そろそろ長く使えるお気に入りモデルが登場して欲しいところだ。すぐに飽きがくるようなものではなく、写真好きな大人が趣味の機械として愛着を持って使っていけるような。
 日常的に小さなショルダーバッグに無造作に放り込んで使うのはもちろん、ちょっとがんばって本格的な撮影にも挑戦できる頼もしいカメラなのではないかと今から気もそぞろなのは私だけではないはず。

家電メーカーのデジタル一眼に期待

digital SLR 
 いまや日本メーカーの独壇場となったデジタルカメラ市場。コンパクトモデルの分野では従来のカメラメーカーに加えてカシオ、日立、サンヨーといった家電メーカーの進出が目立つ。店頭を眺めても、価格.com あたりを覗いてみてもこうした新興勢力にたくましい勢いを感じる。
 そろそろ頭打ちといわれているのがコンパクトデジカメのマーケット。ハイエンド志向ユーザーの食指は、すでにデジタル一眼レフへと移って久しい。数年前まではほぼ業務用・プロ用に限られており、非常に高価な機種しかなかったこのマーケットだが、20003年9月にキヤノンによる初代のEOS Kissデジタルの発売以降、一気に火が付いた感じだ。 その後ニコンからはD70、そしてオリンパス、コニカミノルタ、シグマと銀塩時代から一眼レフカメラを製造してきた各社が、一般ユーザーにも手の届く価格帯のモデルを次々に投入し、ホットな市場になってきた。
 そうした中、キヤノンとニコンという二大メーカーが圧倒的なシェアを占め、デジタル一眼レフの分野では出遅れた老舗のコニカミノルタがカメラ事業からの撤退を発表するなど、熾烈なサバイバルゲームによる業界再編が進行中。同社が初めて世に送り出したデジタル一眼、α7DIGITALはボディ自体に手振れ補正機能を盛り込むとともにカメラとして、完成度の高い傑作として高い評価を浴びていただけにとても残念である。

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GR-DIGITAL

 なんだかインドらしくない内容で恐縮だが、先日この新しいカメラについて書いてみたので、実物を手にしてみて感じたことについても触れておくべきだと思った。
 すでに購入したが、感想は◎である。デザインも手に取ってみたときの質感も悪くないと思う。小さなボディの中にさまざまなメカがギッシリ詰まっている感じがしてなかなか好感が持てる。
・・・とはいえ、カメラなんて写真を撮るための道具なので、見てくれはさほど重要ではない。実際に使用してみた印象はどうかといえば、これがまた良好なのである。

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