インドに注目

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 ニューズウィーク日本版では、今週から2週連続でインド特集が組まれる。現在発売中の11月23日号は「第1弾 ビジネス編」で、次週11月30日号は「第2弾 外交パワー編」となり、現在のインドの経済と政治の動向をカバーしようという意欲的なものである。


 ここ十数年におけるインドの大きな変貌や成長とともに、世界最大の人口大国中国に対するインドの優位性が描かれている。
 それはローテクで大量生産する能力では後者を大きく引き離す前者に対し、高い技術が必要な分野ではそれをしのぐとされる後者の潜在力、中央集権的国家の官主導型ではなく、規制緩和を実現した結果としての民間活力による成長、一人っ子政策のツケでやがて高齢化社会を迎える中国と違い、人口増が止まらないインドは地球上で最も若い最大の労働人口を抱える国であると説いている。
 他の産業に比較して、従事する労働者たちのみならず、経営陣においても若年層の占める割合がとても高いIT業界の隆盛は、まさにこの国らしさの現れといえるかもしれない。
 ビジネス各界の新興勢力とその経営者たちの面々も紹介されており、その中には14歳にして「世界最年少のウェブ開発者」となり、17歳でグローバルズ社を設立した際には「世界最年少CEO」として世間を騒がせたスハース・ゴピーナートも取り上げられている。現在まだ19歳とはいえ、近い将来にインド財界の大物として広く知られるようになることだろう。
 記事内容に特に目新しいものはあまりないが、同誌日本版で2週続けてインド特集が組まれるということは、やはり日本でインドへの関心と注目が高まっていることの証である。 
 かつてのように「悠久の」というフレーズで語られるのではなく、インドはもはや「今」の姿が話題となる国になっている。
 だがここで取り上げられているのは、あくまでもアメリカというフィルターを通したインド像である。つまり露骨なマーケット至上主義にして、米国型民主主義への絶大な信頼のもとに、「強く優れたアメリカ」を世界標準と位置づける現代の「中華思想」のもとに展開する華夷秩序的視点だ。
 アメリカの意にかなうものについては非常に好意的な取り上げかたをする反面、規制緩和と経済自由化前のインドについては希望も何もない失われた時代であったかのように描き、「新生インドの成長を阻むものは古いインド」であると切り捨ててしまう。
 改革以前のインドのありかたについても、当時はそれなりの必然があり、その中で社会は一定のレベルで豊かな繁栄を享受していたことを忘れてはならないはずである。それに世の中の善し悪しをはかる物差しは、オカネとモノだけではないはずだ。
 だがこれはアメリカの政治経済ニュース雑誌記事中の虚構というわけではなく、今のインドは確かにそういう方向にあるのだから、真実を伝えていることは間違いない。

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