<経済>のインド

 現在発売中の「週刊ダイヤモンド」9月17日号は、「熱狂のインド」というタイトルでインド特集だ。デリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ、カルカッタの五都市を取材して、市場および生産基地としてのインドの魅力と問題点を探っている。
 経済誌という性格上、中身はすべて仕事関係なので万人が興味を持てる内容ではないが、今の日本ビジネス界のインドに対する姿勢をサラリとうかがい知る手がかりになるだろう。
 もちろん経営者の視点、要はお金儲けをする人たちのための出版物なので、働く人々の権利である労働運動、政治的自由の証でもある左翼勢力への偏見が強いのはもちろん、これらに対するかなり手厳しい表現も多い。
 IT、自動車、株価、消費活動等々の概況についてわかりやすく書かれているが、その中でちょっと興味を引かれたのは、おなじみの公文式のインド進出についての小さな囲み記事である。従来より海外でも盛んに事業展開しているが、今年4月からインドでも教室を開いており、なかなか好評とのことだ。それにしても数学の本場(?)にして、ホワイトカラーの人たちの平均的な英語力が、日本のそれと比較してはるか雲の上にあるように見えるインドで「算数」と「英語」を教える事業とは、ちょっと恐れ入る。
 今後、インドの人々に対する日本語教育関係のみならず、こうした教育産業も進出していくことになるのだろうか。もちろん子連れで滞在する駐在員が増えるにつれて、日本人子弟を対象にした学習塾等が開講されることも予想されるが、これに対して公文式は主に現地の子供たちにモノを教える教室であるためそのパイは限りなく大きい。10年も経ったころ、インドの都市部で教育熱心な中産階級の子供たちが放課後は公文への教室へ向かうのがありふれた光景になるかどうかは別の話だが。
 インドでの操業の歴史が長い一部の企業を除き、欧米や韓国などにくらべて日本からの進出がいかに低調であるか、どれほど出遅れているのかといった記事もあるが、インドを題材とする書き手についても同じようなことが言えるかと思う。人名等の表記に適切でない箇所が散見されるのはともかく、残念ながらちょっと首をかしげたくなる内容の記事もちょっぴり含まれているのは、インドに明るい経済記者が不足しているからであろう。また従来インドものを手がけてきたライターたちの中には、経済に通じた者が少ない。
 やはり中国大陸にくらべると、日本から見たインド亜大陸までの距離感にはまだまだ相当なものがあるのかもしれない。

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