中央アジアとボリウッド

stil photo by The Rising 
 アーミル・カーン主演のインド×イギリス合作映画『The Rising』のロケがタジキスタンで進行中。なぜタジキスタンなのかというと、撮影地の風景が、映画の舞台となる19世紀のアフガニスタンに似ているからだ。
 ブラッド・ピットが出演していた『セブン・イヤーズ・イン・チベット』は、映画の内容に不満な中国当局から撮影許可が下りなかったため、アルゼンチン、モンゴル、カナダで撮影された。このように現地の政治・治安上の理由のため、第三国でロケが行われることはしばしばある。
 ロケ地アーエチーは、アフガニスタン国境から50キロほどのところのある村。昔から両国の間を行き来する人は少なくなかったことだろう。よほどアフガニスタン的雰囲気に満ちたところなのではないかと想像している。 
 下記の記事には「タジキスタンでインド映画が人気」とあるが、やはり旧ソビエト領・中央アジアの国ぐにでも、インド映画は人びとに親しまれているのだろうか。そういえば「タリバーン政権崩壊後のアフガニスタンで映画館が復活!」というニュースを新聞やテレビで見かけたときにも、「映画」とはすなわちインド映画のことであった。 
 以前、中国領・新疆ウイグル自治区を訪れたことがあるが、やはりインド映画はなかなか人気があるようだった。バザールで俳優や女優のブロマイドを目にし、町角でヒンディーポップスを耳にすると、妙に嬉しくなったものだ。
 映画の影響か、パキスタン人が多いせいか知らないが、カシュガルあたりではカタコトのヒンディー語/ウルドゥー語を操るウイグル族の商売人たちがいたりするのにもびっくりした。こうした地域でも好感をもって迎えられるインド映画。やはり地元の人びとの心の琴線に触れるものがあるのかもしれない。 
 日本でも一時インド映画が流行り、いくつかの作品が続いて公開された時期があったが、大多数の観客からは「これまでと違う変わった映画」「突然歌やダンスが出てくる奇妙な作品」といったキワものとして受け止められたのか、どうも定着しなかったようだ。
 ロードショー公開された映画が似たような作品に偏りがちで、「インド映画はどれも同じ」という印象を与えたのかもしれないし、マスコミの扱いが人びとに先入観を刷り込んでしまったのかもしれない。 
 それにしても、かたやインド映画を娯楽としてすんなりと受け入れられる国があれば、日本のように好奇心に満ちた眼差しでジロジロ観察した後、忘却の彼方へと押しやってしまう国もある。

 配給や上映時間の関係など、作品の内容以外にもいろいろワケがあるのかもしれないが、そもそもインド映画が定着するか否かということは、文化的・社会的な奥深い要因とつながりがあるのではないかと思う。 
完成間近の『The Rising』 タジキスタンで撮影中

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