ズィンチェンからチリンへの2泊3日の短いトレッキングに行くことにした。旅行代理店の店頭の貼り紙にあったものに参加することにしたもので、この募集を出しているのはポーランド人であるとのことだ。同行する人によって、旅行の印象が異なってくることもあるので、いい人だったらいいなと思いつつ、集合時間となっている朝8時にこの代理店のところに出向いた。
だが着いてみると、代理店の人が渋い顔をしていて、「ポーランド人はキャンセルした」とのこと。担当者のデスクの上には、代理店が準備した箱入りの朝食とミネラルウォーターがガイドと私を含めた参加者2名を合わせた3名分用意されているので、本当の話らしい。
こんなこともあるので、先日「ラダック たかがSIM、されどSIM」で書いたように、携帯電話が普及していながらも、他州で購入したプリペイドSIMが利用できない状態では、お客の要請を受けてオーガナイズする代理店のほうに、こうしたリスクがあることは否めない。貼り紙を依頼する本人に対して、旅行代理店側のほうから連絡を取ることができず、その人自身が代理店に再び現れない限り、どうなるかわからないというのは、旅行代理店にとってはもちろんのこと、それに参加する側としても不便な話である。
さて、気を取り直して出発。クルマでインダス河の対岸のへミス・ナショナルパークに入域してズィンチェンまで走る。ここが今回のトレッキングのスタート地点である。ここの海抜が3,400mくらいだが、このコースで通過する最も高い地点がおよそ4,900mとのことであるため、高所に弱い私は少し気になったりもする。
川の流れ沿いに上り、次第に高度が上がってくる。幾度か川を渡るが、水に浸って渡渉する必要はなく、川の中に置かれている石伝いに歩けばいいので楽なものである。歩いていると暑くてTシャツ1枚になったりする(かといって暑くてたまらないというほどではない)のだが、途中幾度か日陰で休憩のために立ち止まったり、曇り空の下で写真を撮影していたりすると、肌寒くなってくる。やはりそれなりの高度があるため、決して気温は高くない。
やがてルムバクの村に到着して昼食のためしばし休憩。大きな白いテントを張った簡易食堂は、観光シーズンの期間だけ、村の人が出しているものである。ここチャーイのみ注文して、さきほどのレーのエージェントが用意した昼食を食べる。冬季には、ルムバクの村周辺ではユキヒョウがよく出没するため、それを目当てに訪れる人たちもかなりあるとのことである。夏季にはもっと標高が高くて気温の低いところに移動しているとのことだ。付近ではオオカミも出没するとのことで、エサとなる小動物がいろいろと生息していることが窺える。
確かに、このあたりではウズラの種類と思われる鳥をしばしば見かける。平らなところでは自力で飛び立つことができず、斜面から滑走しないと飛行することができないので、肉食動物たちにとって格好の餌食ということになりそうだ。
ルムバクからしばらく歩いた先、ズィンチェンからは途中の休憩や昼食の時間も含めて3時間半ほどでユルツェの村に到着。ここは村といっても、一家族しか暮らしていないとのことで、ホームステイの選択肢は一軒しかない。登ってきて谷川の右側に見えるその家屋は壮大で、遠目にはゴンパかと思ったほどだ。
<続く>