世界遺産がやってきた!

 昨年、新たに世界遺産として登録された「ビームベートカー」は、マディヤ・プラデーシュ州都ボーパールから50kmほどの所にある。1万2千年以上前に描かれた(ホントだろうか?)岩盤上の壁画で知られるが、その後の歴史との関連が細かく解明されているわけではないようだ。
 立地もなかなか面白い。小高い台地にあるため見通しは良く、巨大な岩石が互いにもたれかかるように密集している。雨風凌ぐのに具合がよさそうだ。広いフロアのような岩棚も多いため、小屋を造らなくても充分生活できたのではないか。ここは現代でいうアパートやマンションのような「集合住宅」だったのかも?とボンヤリ想像して楽しむ。
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 ボーパールからのタクシーの運転手は大きなツアーバスを横目に「近頃、ずいぶん団体客が増えたよ」と話していた。
 見物途中に雨が降り、岩陰で一休みしていると、向こうから団体客を引き連れたガイドがやってきた。漫然と眺めていても気付かないような壁画、それぞれの絵に託された意味など、ガイドの説明はなかなか示唆に富む内容だった。岩壁を指差して「鼻が長くて太ったイメージ、これはガネーシュ様です」などと、唐突にヒンドゥー神が出てきたりするのは怪しかったが…。いまだ謎の多い遺跡だけに、空想を混じえないと解説できないのかもしれない。
 その団体客が立ち去ると、入れ替わりに聞き慣れた言葉が聞こえてきた。ふり返ってみれば、日本人ツアー。中高年を中心に15名ほどのグループだ。日本人女性ガイドさんと同行の現地係員によると、世界遺産登録後1年もたたないのに、ここを訪問するツアーは急増中だという。そういえば遺蹟入口の切符切りのおじさんも、「日本人グループはここのところ毎日来ているよ」と言っていた。
 観光ツアーとしては、同じくボーパール近郊にある仏蹟サーンチーと組み合わせるとちょうどいいかもしれないが、初めてインドを訪れる方々も多いはず。「ずいぶん地味すぎやしないかなぁ」と少々気にもなる。
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 いまは狭い駐車スペースを除いて、まったく何もない遺跡周辺。数年後にはレストランや土産物屋、もしかすると宿まで出来ているかもしれない。インドの他の世界遺産と違い、登録前のビームベートカーはほとんど無名に近かっただけに、地元の人びとにすれば、雇用機会やビジネスチャンスが突如降って沸いたようなものだ。今後「世界遺産」のもたらす観光化によって、地域は大きく変わっていくのではないかと、私は想像している。

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