ディブルーガル1

シブサーガルで2泊してから、ディブルーガルに向かった。シブサーガルからバスで2時間半程度の距離である。

アッサムといえば、13世紀から19世紀にかけてこの土地を支配したアホム王国で知られているが、もともとアホムの支配者たちはタイ系の民族であったわけだが、インドのこのあたりは民族的にもモンゴロイド系の人々とアーリア系の人々が混住する地域であることから、ちょうど南アジアと東南アジアとの境目(・・・から南アジアに入ったところ)にあることが感じられる。

人々の顔つきもさまざまだ。インド人らしい顔だちもあれば、モンゴロイドが混じっている風貌もある。もちろん、ここにもUPやビハールといった州から働きに来ている人たちはたくさんいるわけだし、東側のナガランドやマニプルといったモンゴロイド系の人々がマジョリティを占める州から出てきている人たちもいるはずなので、正直なところ町中で視界に入っている人たちの中で、誰がアッサム人で、誰がそうでないかについて見分ける自身はあまりない。それでもたとえばベンガル州の平地あたりと較べた場合、総体的に人々の集合体の中でモンゴロイド系の人々やモンゴロイドの血が入っていると思われる人々の割合が高いことはわかる。

バスはひた走る。シブサーガルから2時間半程度の距離にある。霧がかかっているものの、クルマの往来の妨げになるというほどのものではない。道路両側はどこを見渡しても茶畑が続いており、いかにも世界最大の紅茶生産地といった佇まいである。

クルマの揺れに眠りを誘われて、少しウトウトしている間に、どうやらディブルーガル郊外に入ったらしい。あまり密度が高くなく、ややまばらに広がっているらしい市街地。ブラフマプトラ河のほとりに広がる街だ。ここから少し北や西に行くと、アルナーチャル・プラデーシュ州に入る。

2011年元旦から、インド北東州で入域に制限があったナガランド、ミゾラム、マニプルの3州が外国人に対して門戸を開いている(それまでは一定の条件下でパーミットを事前に取得する必要があった)ので、まだこうした規制が残っているのはアルナーチャル・プラデーシュ州だけとなった。

ナガランドをはじめとする3州については、長年続いてきた反政府勢力との停戦と和解の方向への進展による治安の改善がこのような措置を可能にしたわけであるが、アルナーチャル・プラデーシュ州の場合は、インドが実効支配していながらも、中国との係争地帯であるという、国防上の理由が背景にあるようだ。

政治的には北東インド地域の中では最も安定しており、治安も非常に良好であるとされる州であるが、さらには平地から雪山まで、チベット仏教圏からアニミズムを信仰する部族地域までを含む、地理的、文化的、民族的に非常に多様性に富んだ州でもあるため、この州が外国人訪問者に対して開放される日がやってきたら、「インドの観光地図を塗り替える」とまではいかないまでも、中央政府や北東地域の各州政府が目論む観光業の振興への強力な起爆剤となることは間違いないだろう。

入域制限についても「規制緩和」が進んでいる中、アルナーチャル・プラデーシュも入域に当たって、現地の旅行代理店を通じてパーミットを申請する「グループ」における最低の人数が近年では「3人」そして「2人」と緩くなり、現在では事実上「1人」でも取得可能となっている。敢えて「事実上」としたのは、公式には「2人」という条件はあるものの、そうした申請を取り扱う旅行代理店に他のグループと混ぜてしてもらった取得したパーミットにより、「個人旅行」が可能となっているという事情がある。

この個人旅行については、旅行代理店によっては、自社でのガイドとクルマの手配を前提としてパーミットの取得を代行するところもあれば、パーミット申請のみのハンドリングを行なってくれるところもある。

私自身は、まだアルナーチャル・プラデーシュ州を訪問したことはなく、今回も訪れる予定はないのだが、アッサム在住でこれまで幾度かアルナーチャル・プラデーシュ州を訪れたことがある方の話によると、「公共交通が極端に少なく、クルマをチャーターしないと移動もままならない」とのことなので、やはりインドの他の地域とはかなり事情が異なるようである。

〈続く〉

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