観光振興 北東インドとバングラーデーシュは相互補完?

インドの北東地域は観光地としての大きなポテンシャルを秘めている。外国人観光客に門戸を開放してからまだあまり年数が経っておらず、『何か新しいところ』を求める人々にとってはまだ『辺境』のイメージがあり、それ自体が魅力的であること、また南アジアと東南アジアの中間にあり文化的にも非常にユニークなことに加えて、変化に富んだ地勢もあり、トレッキングやエコツアーなどいろいろ発展する可能性があるようだ。
しかし地理的なウィークポイントも大きい。北東地域からコルカターの方角を眺めると、その間に横たわるバングラーデーシュの大きさを思わずにはいられない。ハウラーから鉄道で向かえば丸一日かかるグワーハーティーも直線距離ならば約520キロ、シローンもおよそ460キロ。西ベンガル州都から見てバングラーデーシュを越えた反対側にあるアガルタラーは300キロほどである。しかし空路を使う場合を除けば、ずいぶん遠回りになってしまい『本土』からのアクセスは芳しくない。この地域を訪れる観光客があまり増えないことの主な原因のひとつは交通の便であろう。
またバングラーデーシュにしてみても、随一の大都会ダッカはもちろん、数々のテラコッタ建築で知られるラージシャーヒー周辺、クルナのバゲール・ハートのイスラーム建築群、少数民族が暮らすチッタゴン丘陵地帯、茶園が広がるシレット、バングラーデーシュ最南端で周囲に珊瑚礁が広がるセント・マーティン島など数々の見どころを抱えるなど、観光資源も豊富である。ガウルの遺跡やスンダルバンなど、インドとの国境にまたがる史跡や国立公園などもあることもなかなか興味深い。
だがこの国についても同様にアクセスの問題がある。ヴィザが必要なことに加えて、国土をぐるりと一回りするほど長い国境線を共有している割にはインドとの間で通過可能なポイントが限られていることから、往来はあまり便利ではない。それがゆえに隣のインドに較べて観光目的で訪れる人々があまり多くないのだとも言えるだろう。
そもそもインドとは別の国になっているがゆえに、様々な華やかに喧伝される隣国に較べてこの国の魅力が取りざたされる機会も相対的に少なくなってしまう。


もちろん北東インドにしてもバングラーデーシュにしても、観光客が相対的に少ないことについては、地理的な要素に加えて政治的な不安もあるのかもしれない。それに両地域がそれぞれ別々の国家に属していること、両国間には様々な問題が横たわっていることから、あたかも同じ国内にいるかのような自由な行き来ができることは当分ありえないように思えるのだが、もし両国が共同してこの魅力的な『亜大陸東部』の観光をプロモートしたらどんな具合になるのだろうかと想像せずにはいられない。
例えばベンガル地方について、両国が隣国と共有する歴史遺産・文化遺産などをアピールしたり、国境地域にまたがる史跡や自然遺産などを相互に往来できる便宜を図ったり、特定の国籍を持つ人々に限っては国境で2週間程度の短期ヴィザの取得ができるようにしたりなどといった施策があればどうだろう。二国間を気楽に行き来できるようになれば相互に利するところは大きいはずだ。観光客らの東西ベンガルにまたがる往来が盛んになれば、おのずとその背後にあるインド北東州へも関心が寄せられることになるのではないだろうか。
もちろん先進国からやってきた外国人たちだけではなく、インドの人々も盛んに旅行に出かけるようになった昨今である。またバングラーデーシュも国土こそ北海道の2倍程度とはいえ、1億4千万もの人口を擁する立派な大国だ。北東インドや西ベンガルのダージリンなどに旅行する隣国の中産階級の人々はかなり多いのである。
こうした中、今ではカルカッタ・ダッカ間、カルカッタからバングラーデーシュを横断してアガルタラーまで行くバスも出ていることは良い変化の兆しだ。こうした形でダッカからシリグリー、シローンなど両国間の主要な地点を結ぶ直通バスルートが増えたり、バングラーデーシュと北東インド地域を結ぶフライトなどが開設されるなどしたら、ずいぶん便利になることだろう。国境をまたいで直接行き来するタクシーがあったりするとなおありがたい。もちろんこれらは観光目的だけではなく地元の人々の需要あってのことである。両国の関係改善はもちろん、各種産業のグローバル化の流れの中で、相互に相手方を必要とする度合いが高まり、人やモノが今まで以上に盛んに行き来する時代がくれば、いつしか自然にそういう流れになっていくのかもしれない。

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2 Responses to 観光振興 北東インドとバングラーデーシュは相互補完?

  1. leafmould says:

    北東インドに限らず、観光を目玉にしようとしている州はいくつかあるように聞いています。先週ミゾラム州へ行ってきたところ、地理的条件が悪い上に(フライトのキャンセルもあり)、観光スポットが皆無に近いと感じました。他の北東インドの州のことは知りませんが、現状では交流人口を増やすのは難しい地域もあるのではと思います。地域住民とのふれ合いや文化的な側面に関心を持つ人が増えてくるといいのですが…。

  2. ogata says:

    大きな建造物、歴史的な建物等いった類の観光スポットの乏しさについて、まさにご指摘のとおりだと思います。
    また州の観光局などに代表されるような機関のツアーや資料を見た限りでは、本来それ自体が非常に魅力的な観光資源であるはずの少数民族の人々の暮らしや文化についてあまりスポットが当てられていないのが残念に思われました。
    もちろん他地域からやってくるインドの人々が関心を抱くところと私たちのような外国人(といっても様々ですが)が興味を持つものは必ずしも重なるとは限りませんので、魅力を掘り起こすことはそう容易なことではないのかもしれません。
    また地理的に不利な条件も多く、この地域が独自に観光開発していくのはなかなか難しいことのようです。そのため近隣地域とのタイアップが不可欠ではないかと感じています。

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