インド発 日本・中国・アメリカ行き

ケーサル種
昨年6月末、日本におけるインド産マンゴー輸入が解禁となったことを取り上げたが、インドの外交努力の結果か、それとも何でもかんでもインドが注目を浴びる昨今の風潮によるもの(?)なのかよくわからないが、同国産のマンゴーが従来より多くの地域で広く楽しまれることになりそうだ。
週刊誌インディア・トゥデイ4月25日号に、マンゴーに関するちょっと興味深い記事が出ていた。世界全体の生産高のおよそ半分を収穫するマンゴー大国インドだが、これらの輸出について重量で見ると、一昨年は53,480トン、昨年は69,606トンと急増、金額にすればそれぞれ8億9千万ルピー、12億8千万ルピーと伸びているのだという。
そして今、インドのマンゴーには巨大な『新興市場』が浮上してきている。日本と中国がインド産マンゴー輸入の禁を解き、アメリカも同様に門戸を開くようになったため、インドから輸出に回る量の大幅な増加が見込まれている。


単純にこれらの国々の人口、つまり日本の1億2千万人、中国の13億1千万人、アメリカの2億8千万人を合わせれば17億1千万人という世界総人口の1/4を超す膨大なものになる。言うまでもなく、いずれの国も購買力があり消費意欲も旺盛な国々だ。
加えて、おそらく来年にはオーストラリア、ニュージーランドといったオセアニアの国々がインド産マンゴー輸入解禁を視野に入れているというから、まさにバブル状態である。
こうしたムードの中、リライアンス・インダストリーズ、ゴードレージ、バーラティーヤ・エンタルプライゼースといったメジャーどころが輸出取り扱いに乗り出しており、中にはマンゴー輸出に向けて大きく乗り出してきており、中には自前のマンゴー農園を始めたりしているところもあるらしい。
記事にはちょっと気になる記述もある。どうやら今年の作柄はあまり良くないらしい。そこで輸出が大幅増となれば、国内市場価格にもそれなりの影響が出ることもあるだろう。
ところで、インドでも『アグリ・ビジネス』の多国籍企業による市場進出が、特に食用油の分野における動きが注目されているようだが、マンゴーは大丈夫なのだろうか?
かつてフィリピン等で在来種を蹴散らして、少なくとも輸出向けには味わいは劣るものの収穫高が多く実の大きさが粒ぞろいで日持ちするエクアドル原産種が導入されていったように、市場をコントロールする大資本にとって都合がよいものばかりが蔓延してしまうことなった。
これと同じようなことがインドのマンゴーにも起きないかどうか気にかかるところである。巨大資本が財力にモノを言わせてマンゴー農家を一斉に自陣に囲い込み、『輸出向け』の品種、例えば外国で知名度が高くて人気が高いアルフォンソ種ばかりを大量に生産させていくような動きにならないのだろうか。これによって風味は良くても収穫できる時期が短かったり、あまり日持ちしなかったりする品種、大きさが不揃いな種類は淘汰されていっていく・・・なんてことが起きなければいいのだが。輸出に回しにくくて、インド国内で安い価格でしか販売できない品種はジリ貧なんていう構図も出現してきたりすると悲しいが、こんなことは杞憂であって欲しいものだ。
昨年日本で解禁される時期が遅く、本格的なシーズンに間に合わなかった。今年から日本でインド産マンゴーの大攻勢が始まるであろうと期待しているが、新たな消費地が拡大することによる産地への影響についても関心を持っていたいものだ。
『新興市場』に輸出されるのを機に、インドの様々な種類の魅力的なマンゴーたちが競って人々の食卓にのぼるようになることを願っている。

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