トリプラー州都アガルタラーへ飛ぶ

シローンから乗り合いのスモウに乗りグワーハーティーに戻る。スモウ・スタンドでクルマに乗り込んだときには他の乗客は誰もいなかったのだが、すぐに若い男たちの集団がドヤドヤとやってきて満員になり発車した。運転手を除いた乗客は総勢14人。私以外は彼ら全員仲間で移動しているようだ。どれもやや柄の悪い連中で、ふとグルガーオンの連続Cab Killer事件を思い出してしまった。ふと『これが罠だったら・・・?』などという疑念が沸きあがってきてあまりいい気分ではなかった。
グワーハーティーまでの道のりはほとんど下り坂であることもあり、3時間で同地のパルターン・バーザールに到着した。
そこからタクシーで空港へ向う。地方都市なので市街地からほど近いところにあるのかと思ったが、意外に遠く一時間近くかかったように思う。
ターミナルビルはごく新しいもので、現在も拡張工事が進行中である。だがインドの空港は建材も鉄芯が入ったコンクリート柱でフレームを組み、レンガを積み上げて壁面を構成していくという『在来工法』で建てられており、昔ながらのものばかりなので規模の大小の差や設備の多寡を除けばどこも視覚的には同じような印象を受ける。近ごろ世界各地で新たに建設される空港での流行りのスタイル、要はアジアでも香港、クアラルンプル、バンコクなどの新空港に見られるような総ガラス張りであったり、曲面やドームを構成してしたりするようなモダンな空港がインドに出現するのはまだ遠い未来のことなのだろうか。


ともあれグワーハーティーの空港にもスパイス・ジェット、エアー・デカン・インディゴー、キングフィッシャーといった元気な新興航空会社がカウンターを並べており、空のトラフィックの量は近年格段に増えていることがうかがえる。
地域間の交通の便が良いとはいえない北東インドの観光業を含めた地域振興のカギを握るものひとつが、こうした新興会社、とりわけ低料金の旅客機によるネットワーク形成ではないかと思う。国内の他地域にも見られるとおり、従来は飛行機に乗ることがなかった、利用することができなかった層の人々も搭乗するようになっており、空の大量輸送の時代に入ってきている。それがゆえに地方空港も大幅な拡張を迫られるようになっているのだが、これはグワーハーティーをはじめとする北東地域もまた例外ではない。
セキュリティチェックが済んでから待合室に入る。すると昨日、一昨日にシローン発のツアーバスで一緒だった家族連れに再会。『世間は意外に狭いものですね』と互いに笑い合う。彼らはスパイス・ジェットでカルカッタの自宅に帰るところであるという。
『それじゃ気をつけて』と搭乗口のバスへと向う彼らに手を振って送り出す。
そのしばらく後にジェット・エアウェイズのアガルタラー行きに乗り込む。離陸してからトリプラー州都アガルタラーまでは40分もかからない。同じ距離をバングラーデーシュを越えて陸路で進めば疲労困憊の大旅行になってしまうので、飛行機とは実に便利なものである。
アガルタラーの空港で、到着した外国人は専用フォームに必要事項を当局に記入提出することになっている。飛行機で出るときもまた同じような手続きが必要なのだそうだ。しかし陸路で州外に出る場合は特にそうした手続きは不要らしいから、意図するところが何なのかよくわからない。
空港からタクシーで市内へ向う。中央郵便局と警察署が向かい合って建つロータリー周辺はちょっとした繁華街になっている。まずまずのホテルがいくつもあり、その中のひとつに投宿することにした。
室内の床は真新しい板張りで、案内してくれたボーイはドアの前でクツを脱いで部屋に入っていた。素足で歩ける木の床は心身ともにリラックスできてうれしい。
州都とはいえ繁華街でも夕方8時を過ぎると開いている店もごく少ない。少なくともこの市街地を行き来する人々の大半はベンガル人のようで、西ベンガル州かバングラーデーシュの田舎町に滞在しているような気分になる。アガルタラー市街地西端から隣国バングラーデーシュは5kmと離れていないようだ。
コールカーターから『ヨソの国』を挟んだ反対側の街にいるわけである。近所の雑貨屋を覗いてみると、見慣れないパッケージのスナック菓子が売られている。手にとってみると、やはり国境の向こう側バングラーデーシュ製である。おそらくその他いろいろな品物が隣国から入ってきていることだろう。見た目はとりたてて変わるところのない『インドの街』とだが、ちょっと遠くにやってきたという思いがした。

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