チェラプンジー行きバスツアー

朝7時45分にメガーラヤ政府観光局前に行く。前日夕方に申し込んでおいたチェラプンジーへのバスツアーに参加するのだ。料金は200ルピーで、朝8時から夕方4時半までの行程である。
シローンを出て進むとともに少しずつ高度が上がってきている。市街地を抜けてしばらく行ったあたりに空軍駐屯地があった。ここには『空軍博物館』という看板もあった。ちょっと興味があったが、今回のメガーラヤ訪問で訪れる時間はなかった。
年間降水量比較
チェラプンジーは世界で最も多雨な地域だという。つまりベンガル湾から上がってくる雨雲がこの北東インドの山岳地帯、つまり外に大きく広がったベンガル湾からこの狭い地域に押し込まれて、山脈によって雨雲がつっかえてしまうのため大雨が降るらしい。津波が狭い入り江に入ると力を集中させて大きな力を発揮するのと同じ理屈だろうか。また磯に押し寄せる波が狭い岩場に入り込むと力を集中させてザップーンと大きく跳ね上がるのとも似た効果かな?と想像してみた。
今は乾季なので行けども茶色い風景が続いているが、雨季に来るとおそらく緑に覆われていて今とは全然違った印象になるのだろう。しかし年間降雨量がケタ違いに多く、モンスーンの最中に来る気はしないのだが。途中経由する西ベンガルにしてもアッサムにしても洪水地帯なので、短い時間で訪れようとして足止め食ったら困る。それに洗濯物が乾かないと嫌だ・・・などと変に所帯じみたことを思ってしまう。


メガーラヤ州全般にそうなのか知らないが、少なくとも今日と見た範囲では山岳地帯とはいえ山々の形に特徴がある。普通山岳といえば尾根は狭く尖っているものだが、ここでは山の上に比較的平坦な大地が広がっているのは不思議だ。一体どうしたらこういう地形になるのだろうか?
でもこのため人々には割と暮らしやすかったのかもしれない。少なくとも居住している台地の上では耕作もしやすいし相互の行き来も比較的楽だろう。しかし他の台地との間の交流はなかなか難しかったのではないかと思う。なぜなら台地の上部は平坦でも、周囲は数百メートルの断崖絶壁であるからだ。そんなわけで台地ごとの独立性が高かったのではないかと想像している。こういう地域だからこそ様々な民族が各々の独自性を持って暮らしてきたのではないだろうか。
ラーマクリシュナミッション
チェラプンジーの町に到着した。ここのラーマクリシュナ・ミッションの中の博物館を見学する。メガーラヤ州の主要民族であるカースィー、ガロー、ジャインティアの人々の生活道具等々、家屋のミニチュアなどが展示されている。小さな博物館だがよくまとめてありけっこう参考になる。竹を使った細工ものも多く、ザルや籠であったり、カメの甲羅のような形をしたカースィーの女性たちが使うという雨除け(カサ代わりに使う)であったり、昔の日本にもあったような生活用品が並んでいる。これらを本にまとめたものがないかと思ったが、残念なことに売店にはそうしたものは置かれていなかった。ラーマクリシュナ・ミッションとしては、この地域最古のもので20世紀前半の1930年代だか1940年代だかに作られたのだという。ここには学校も併設していて、高校まで学ぶことができるそうだ。
町はずれにサッカー場がある。広々としていていいのだが、ひとつ気になることがある。インドの一般の広場なのでネットなどもちろんない。しかし平たいグラウンドの外はどこも傾斜地で、そこから先は崖になっている。いとも簡単にサッカーボールが谷底へと消失してしまうことになり、すこぶる不経済である。
町の密度は低い。住居が固まっている地域はごく狭く、あとは農地や空き地とともに民家が点在している。町はほとんど平坦だが先述のとおり周囲を断崖絶壁に囲まれたダイナミックな風景が広がる。
こんな地形なので、年間降雨量が極端に多いことは台地上に住む人たちにとって幸いなことだろう。そうでなければ水に苦労するはず、いや人が住むのには適していなかったことだろう。そもそも多雨とはいってもこういう土地なので保水力はない。だから乾季にはけっこう水に苦労してきたのではないだろうか。実際、近年はモンスーン期の雨量が大幅に減ってきており、乾季の水不足が深刻な問題になってきているというメディアの記事を見かけたことがある。
ラーマクリシュナ・ミッション関係者を除けば、チェラプンジーの町にはインド系・・・つまり他地域から来たいわゆるインド人・・・たちはほとんどいないようだ。
いっぽう、ツアーバスの中の人々はけっこう遠くから来ている人たちが多い。車内の人々の会話はヒンディー語か英語。ガイドは英語でしゃべっている。ラクナウから来たという壮年の男性、コルカターから来た親子連れ、デリーから来た老夫婦など、皆遠くから来ている人たちばかりだった。ツアーバスの中には私以外にもう一人の外国人がいた。隣国バングラデシュから来た建設会社勤務という男性である。インドにしばしば旅行しており、これが6回目の訪問だという。先日、銀行で両替したときも幾人か見かけたが、バングラデシュの富裕層もけっこうインドを旅行しているようだ。
警告
Mawsmai Caveという鍾乳洞では入口のところには注意書きの看板があり(写真参照)、『大便、小便、ゴミを散らかすその他のモラルに反する行為があった場合、『村の掟により処罰される』と書かれている。一体どういう処分を受けるのだろうか?
台地の上は先述のとおり比較的平坦でなだらかな丘陵地となっている。松の木が生えているし棚田の風景もある。遠目にはこのあたりの家屋は日本のそれと似ている。夕日を受けてそれらのシルエットが浮かび上がってくると『夕焼け小焼け』の歌でも聞こえてきそうな感じで、日本の田舎の風景に通じるものがあり、このあたりの村の風景にはとても親しみを感じた。インドにいるとはいえ私たち東アジアの人間にとって懐かしい風景がそこにあった。
滝
その他このツアーで訪れた先は渓谷、いくつかの滝(乾季のため滝の水量は少なかった)、エコ・パーク、バングラデシュの方角を見渡せる展望台、鍾乳洞などだ。
雄大な景色を見るも悪くないのだが、走っている途中に牧歌的な農村風景があったり、この地域に特徴的な民家の集落があったりしたので、そういうところでストップすることはなかった。せっかくのツアーバス、しかも参加者たちは州外遠くからやってきた人々ばかりとなれば、地元の習俗や人々の暮らしを垣間見るようなプログラムも含めて欲しかった。何しろ地域観光産業振興の旗振り役であるはずの地元政府の観光局がやっているのだから自州固有の文化的特色を積極的に伝える姿勢を示すべきである。

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