今や北東地域にも進出 新興航空会社ネットワーク

北東インド
コールカーターからグワーハーティー、テーズプルからジョールハート、インパールからアイゾール、シローンからコールカーター・・・。
コールカーターを軸とする北東インドへの航空路、北東州内の空のネットワークといえば、ついこの間までは国営のインディアン・エアラインス(および子会社のアライアンス・エアー)にジェットエアウェイズ、そしてごく一部にエアー・サハラといった具合に旧来の会社による独占市場であった。
近年、雨後のタケノコのように次々と会社が設立されて乗り入れ先をジワジワと広げつつあった新規参入各社ネットワークは、旧来の会社ほどの体力もないことから経済的に進展著しい地域に特化してきた。その結果、コールカーターを除けば当分の間インド東部には及ばないように思えたのだが、今やその『空白地帯』で異変が始まっている。新興の航空会社がこのところ次々に北東部へ進出してきているのだ。


Spice Jetスパイスジェットおよびインディゴー・エアラインスがグワーハーティーをデリー、コールカーターと結んだ。そしてインディ・ゴーもグワーハーティー・インパール間、そしてこれらふたつの街とデリー、コールカーターを接続している。
IndiGo Airlinesキングフィッシャー・エアラインスも頑張っている。グワーハーティー、ディブルーガル、アガルタラーといった街からコールカーター、バンガロール、ハイデラーバードへ飛ぶことができるようになった。同社は北東地域内でもグワーハーティー、ディブルーガル、アガルタラーを結んでいる。
Kingfisher Airlines今、北東インド七州のうち三州(アッサム、メガーラヤ、トリプラー)を旅行するインド人旅行者はかなり増えているようである。この地域で私が会った人たちの中で、こうした新興の会社、とりわけ格安系の会社のフライトを利用してやってきたという人々に何組も出会った。特に家族連れともなれば『こういう安いフライトだからみんなで来ることができた』というケースも少なくないはずだ。
北ベンガルのごく細い回廊部分でかろうじて『本土』とつながる北東インド。国土がバングラーデーシュを大きく迂回しているため、陸路による行き来の便はあまり良くない。近ごろはコールカーター・ダッカ、ダッカ・アガルタラー、またコールカーターからバングラーデーシュを横断してアガルタラーにまで至る直通バス(途中ダッカ一泊)のサービスも利用できるとはいえ、自国内を移動するのに較べて便数は限られるし、他国をまたぐがゆえに越境できるポイントも決まっている。ボーダーを通過するのにかかる時間や手間ヒマだってバカにならない。それに隣国のヴィザだって取得しなくてはならないので面倒だ。
コールカーターから西へ300キロほど進むと、ジャールカンド州都のラーンチーに着く。同様の距離をコールカーターから東に進むと国境をまたいで隣国バングラーデーシュに入り、再びインドの国土に踏み込んでトリプラー州都のアガルタラーへと至る。移動距離はほぼ同じとはいっても物理的にも気分的にも後者の移動のほうがだいぶ楽な気がする。
直通バスが出ているコールカーター・アガルタラー間はまだいい。コールカーターからビハール州都パトナーへの距離およそ400キロは、コールカーターからバングラーデーシュを挟んでアッサム州都グワーハーティーまでの直線距離に相当する。前者は『陸路で』といえば便利な国鉄に乗れば8時間から12時間程度あれば途中乗り換えることもなく着いてしまう。でも後者の場合は国境を通過してバングラーデーシュ首都ダッカへ進み、そこから同国北東部の都市シレット、そしてインド国境の町タマービルに出てインド側のダウキーへと抜ける。さらにここからメガーラヤ州都シローン、また乗り換えてグワーハーティーへ至るという大旅行になってしまう。途中最低二、三か所で滞在しないと過労で倒れてしまいそうな行程だ。バスを乗り継ぐとそんな大げさなことになってしまうが、かといってこのルートを自家用車で行くとしてもこれまた気が重い。
『本土』から見た場合、陸路での接続の悪さから訪問するのが『面倒だ』と思わせてしまうのがインド北東部の立地条件ではないだろうか。現地の文化や風物にそれなりの興味や関心を抱いていなければ、なかなか足が向かない地域かもしれない。北東地域のうちアッサム、メガーラヤ、トリプラーの三州が自由に出入りできるようになって10年くらい経過したものの、それほど大きなブームになっていない理由は、かつてこの地域では分離活動が活発に行なわれていたという治安面での不安ではないと思う。また観光資源の決定的な不足ということでもないだろう。確かにこのエリアでは、インドの他地域に豊富な『偉大な建造物』はあまり見当たらない。誰もが知っている有名な歴史遺産といった大看板も持ち合わせていない。それでも南アジアと東南アジアというふたつの異なる大きな世界が交わる地域であり、多種多様な人種と文化のるつぼであることから、今はまだ広く知られていない様々な魅力が埋もれているはずだ。
だが人々の行き来を阻むとまではいかなくとも、気軽に出かけてみようという気持ちを削いでしまうのが結局のところ本土からの交通の便があまり良くないという部分なのではないかと私は考えている。これは地元のインド人旅行者たちはもちろん、私たち外国人にも共通していえることである。
こうした中で、新興航空会社の果敢な北東部への進出により、ある一定水準以上の所得を持つ人々にとって、北東地域へのアクセスが格段に良くなった。このため『新たな観光スポット』を求めるインド各地の多くのミドル・クラスの人々の目をこの地域へと向けさせる大きな機会となることだろう。飛行機によるアクセスはずいぶん楽になってきたが、さきほども述べた本土から陸路での交通の便の悪さは変わりないので、飛行機を利用できない層の人々の訪問が急増することは考えにくい。この状態が続けばインド他地域に較べて『客層が高い観光地化』するようにと思う。90年代半ばにこのエリアへの立ち入りが緩和されてから今まで経過してきた時間以上に、今後二、三年におけるアッサム、メガーラヤ、トリプラーの三州の観光開発はかなり早い進展を見せるのではないかと私は想像している。

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