シヴ・セーナー創設者 バール・タークレー死去

バール・タークレー 享年86歳

マラーティー至上主義を掲げる政党シヴ・セーナーを創設したバール・タークレーが亡くなった。享年86歳。

南インド系、グジャラーティー、北インド系等々、商都ムンバイーを中心とするマハーラーシュトラ州内の様々な分野で生業を営む人々を攻撃してきたシヴ・セーナーについて、偏狭なナショナリズムと捉える向きも少なくないが、そうした「マハーラーシュトラ州を蚕食する外来の人々」への不満を抱く一定の層の人々の気持ちを代弁してきたとも言える。

右もあれば左もあり、どちらも単純に右翼、左翼と割り切れるものではなく、中身は様々であるのは、多民族・多文化国家インドが世界最大の民主主義国家であることの証でもある。

90年代には、シヴ・セーナーがマハーラーシュトラ州政権を担ったこともある。「ボンベイをムンバイーへ」改名したのはこの時期のことだ。もちろん彼らの「仕業」ないしは「業績」である。

このところバール・タークレーの健康状態がかなり危険な状態にあるとの報道がなされていた。また同党の実権が息子のウッダヴ・タークレーに移譲される際に生じたお家騒動の中で、ウッダヴの従兄弟であり、バール・タークレーの甥でもありながら、シヴ・セーナーを離脱して自身の政党、MNS(マハーラーシュトラ再建党)を組織したラージ・タークレーが足繁く「本家」に足を向けるようになったことについても、バール・タークレーの最期が迫っているのか、あるいは本家との和解が進行中か?といった調子で、様々な憶測がなされていたところだ。

シヴ・セーナーの実権は、2004年以降、バール・タークレーの息子のウッダヴに任されているとはいえ、先代のカリスマ性には遠く及ばず、年老いた父親による「院政」が続いていたとしては言い過ぎかもしれないが、近年は衰弱したバール・タークレーが政治集会に顔を見せることはほとんどなかったとはいえ、録音したスピーチが流されるのが常であったとのこと。やはりウッダヴの魅力に欠けるものが多いことは否定できない。現在52歳のウッダヴは健康面での問題を抱えており、メディアに登場する彼の姿は憔悴しきっているように見える。

それとは反対に輝きを放っているのは、古巣を飛び出して組織したMNSを率いるラージ・タークレーだ。シヴ・セーナーとMNSの思想やスタンスに根本的な違いはなく、文字通り本家と分家である。

メディアによるインタビューへの応対の受け答えもシャープで、才気煥発といった印象を与えるとともに、声色も伯父のバール・タークレーを彷彿させるラージと、年齢50代前半にして衰えたイメージのウッダヴと、どちらにより大きな魅力を感じるかということについては疑問の余地はない。後ろ盾であったバール・タークレーを失ったウッダヴとは裏腹に、ラージにとっては本家のお株を奪う好機到来だ。

ラージ・タークレーについては、これまで幾度も言及しているが、昨年8月にもラージ・タークレー ヒンディーで答える1ならびにラージ・タークレー ヒンディーで答える2で取り上げている。

国政を左右する人物ではないが、インドにおける地域主義・民族主義を考えるうえで非常に重要な役割を担う政治家だ。「マラーティー主義」の本流を担うのは、ウッダヴとラージのどちらになるのか、今後目が離せない。

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