インドでいいかも?PowerShot G7

PowerShot G7
 ちょっと気になっていたキヤノンのPowerShot G7を結局購入した。このモデルは広角端が28mmからとなるのでは?という予想が一部あったようだ。ところが発売されてみると従来どおり35mmであったこと、従来のこのGシリーズは広角側のF開放値が2.0と明るいのが特徴だったのに、今回の新モデルでは2.8とずいぶん抑えられていることなど、期待を裏切る部分があったためか、10月26日の発売時には『まあフツー』の売れ行きだったらしい。
 ところがこれまでのデザインから一新されたルックス、マニュアル志向の操作感覚、そして何よりも使ってみて意外に良かったという購入者たちの反応もあり、一気に加速がついて売れているらしい・・・というよりも、目下ほとんどの店で品切れ状態が続くヒット商品になっている。
 レンズが沈胴式になったこと、グリップの形状が変わりフラットになったことなどによって小型化とコンパクト化が一段と進むいっぽう、先述のマニュアル操作を多用することを前提に設計されていることなどから、手軽に持ち歩くことができるのにかなり凝った絵作りをするのも苦にならないという、『高性能機種といえばデジタル一眼・・・』となってしまった昨今にあっては実に貴重なモデルといえる。もちろん被写体を目の前にして『ただ押すだけ』でも充分にレベルの高い絵ができあがることはいうまでもない。
 他の多くのコンパクトデジカメ同様に発色がハデ目、メリハリが効いてずいぶん鮮やかな色合いの『パッと見重視』のチューニングがなされている。一眼レフの絵とはかなり違う感じなのだがこれはこれでまたキレイでいいと思う。


 レンズの光学的な性能もさることながら、最新の高性能画像処理エンジンが相当高い働きをしているようだ。『レンズの描写は素晴らしいが画質はフツー』と言われるリコーのGR-Digitalとはズームの有無を除きこの部分が特に対照的だ。
 面白いのはNDフィルター効果のある処理が内蔵されていること。3段分の光量を落として撮影することができる。つまり光の量を1/8に減少させるものであり、ND8のフィルターを付けたのと同じ効果でスローシャッターを切ることができるのだ。
 こういう機能が付いているならば、もう一歩踏み込んでND2, ND4, ND8, ND400と、その効果の度合いをいくつか選択できたりするとより面白いのではないかと思う。また技術的にこんな画像処理的に可能なのかどうかわからないが、PLフィルターに相当する偏光除去機能なんかもあったらいいと思う。
 またストロボ関係も発光のタイミングを先幕と後幕とが選択できる。ストロボ調光補正と発光量の調節もできるようになっている。もちろん頭上にはホットシューが装備されているので、外部ストロボを使うことも可能だ。一眼レフのEOSシリーズ用のものが使えるので、それらのサブカメラとして使用するなら兼用できていいだろう。
 撮影モードはフルオートや特定のシーンモード以外に、プログラム、シャッタースピード優先、絞り優先、マニュアルが選択できる。また撮影モード、コントラスト、シャープネス、色濃度や色合いなどの組み合わせをカスタム登録(2パターンのエントリーが可能)することもできる。撮影感度はISO80, 100, 200, 400, 800, 1600となっているが、ボディ上部左側にあるダイヤルで切り替えできるのは簡単かつ確実で良い。またイメージゾーン撮影モード中にISO3200相当で撮影することも可能になっているため、画像が大荒れになるのを覚悟のうえで超高感度撮影も可能なのである。
 またカメラの本質にかかわる機能ではないのだが、オマケ的についている『ワンポイントカラーモード』というのも面白い。画面中にある任意の色あいのみカラーで残し、あとはすべて白黒で表現するという機能である。工夫次第で印象的な画が出来上がるかもしれない。 もちろんこんなことをいちいちカメラで行なわなくてもいいのだが。
☆サフラン色部分のみワンポイントカラー指定↓
サフラン色のみワンポイントカラー指定
☆通常のカラーイメージ↓
通常のカラーイメージ
 近ごろのコンパクトデジカメについて光学ファインダーの要不要についていろいろ言われているが、ブレを抑えるという面から付いているに越したことはない。コンパクトなボディにいろいろと詰め込まれたオールインワンの便利カメラであるため、日常持ち歩くにも旅行に持ってでかけるのにもちょうどいいサイズである。何か一台だけ・・・というならばこれはまさにうってつけではないだろうか。
 しかも『コンパクトデジタルカメラ』というカテゴリーに限っての話だが、世界最大のカメラメーカーCANONの最上級機種が実勢価格5万円強で購入できるというのはなかなかスゴイことだと思う。もはやデジタル一眼レフのエントリーモデルならばレンズと合わせて5万円台から6万円台でも購入可能になっているのだから、まあそのくらいにしておかなくてはならないのだろう。
 クラシカルなデザインの純正のケースもなかなか人気らしい。昔ああいう感じのケースを使ってカメラを持ち歩いていたオジサンたちがいたように記憶しているが、とても機能的で良さそうだ。革でできており上下ふたつのパーツから成るいわゆる『速写ケース』という類だが、カバーをパカッとはずすと即撮影できる。また底部と側面を常にカバーしているので、思わぬ衝撃から愛機を守ってくれることもあるかもしれない。
G7の速写ケース
 こうして考えてみると、とても満足度の高いカメラだと思う。もちろん正直なところ、若干の不満点もないではない。画像の記録形式はJPEGのみで、RAW撮影できないことについては文句をつけたい人もあることだろう。また電池の残量の表示がないのは少々困る。いよいよ空になる寸前になってから『ハッ』と思い出したように警告表示が出るのは何とかして欲しい。また撮影モードや機能切り替えの際に液晶画面上でハデな演出がなされることについても疑問だ。たとえばプログラムモードにすると大きく『P』の文字が、マニュアルモードに切り替えると大きな『M』の文字がバーンと画面に出てきて消えていく・・・といった具合にヴィジュアルなのだ。パッと見には新鮮かもしれないが、日々使っていると次第に目障りに感じられるだろうし、電池も余計に消耗するではなかろうか。幅広いユーザー層を視野に入れて、あえて派手なイメージを演出しているのだろうか。個人的には同社の一眼レフカメラにあるようなシンプルかつ明解な表示にして欲しかった。
 だがそれらはまだ取るに足らないことだろう。どうにも心残りなのは、冒頭にも書いたとおり広角端が28mmではないことだ。『広角』としては一般的なその画角で撮影するためにわざわざワイドコンバージョンレンズ(0.75倍で約26.3mmになる)を装着しなくてはならないのは面倒だ。販売店で実物に触れてみたのだがカメラのサイズに比べてやたらと巨大でビックリした。カメラの重量320gに対して、ワイドコンバージョンレンズは365グラムもあるため携帯性を著しく損ない、ペンタックスあたりの小型一眼レフを持ち歩くのと大差ないような感じだ。これでは何のための『コンパクト』デジカメなのかわからなくなる。広角用にはリコーのGR-DIGITALのような軽量小型の単焦点専用機を携行したほうがいいかもしれない。こちらは電池を含めても200g程度である。
 一眼レフを含めたデジカメの小型化と高機能化が進む中、いきおい電池のサイズも小さくまとめることが求められてくる。このカメラの専用電池はNB-2LHというタイプで、EOS Kiss Digitalの現行モデル(およびそのひとつ前)で使用されているものと同じ。これらのカメラを持っている人たちは電源を使いまわしできて便利かもしれない。
 だが液晶画面が2.5インチと大型で、その表示が演出過剰なまでにヴィジュアルなG7で使用すると電池の消耗は意外なほど早く容量不足の感がある。この点においても電池をいつ交換したのか忘れてしまうほど長持ちするリコーGR-Digitalとは実に対照的である。もちろんモーター作動するズームの有無による部分も大きいことだろうが。
 携帯電話も同様だが、内蔵されるメカニズムの進化とともにより大きな電力が消費されるようになってきている。道具の利便性や機能性の向上より、地味ながらむしろ電池が一足飛びに大容量化されることによる利点をアピールしたいものだ。
 だがそれを差し引いても充分以上の魅力があるのがこのカメラなので、世間では売れ行き好調なのだろう。何しろ現在製造されているものの中で同クラスの対抗馬が存在しないだけに、『ズーム付きで何か高性能なコンパクトデジカメを』といった場合、ほぼ選択の余地なし・・・ということは、被写体の宝庫インドでも大いにオススメのカメラなのである。  
 くれぐれも予備バッテリーの携行をお忘れなく。

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