こんなクジャクに誰がした!?

クジャク
輸入されて野生化したインドクジャクが増えて農作物などに大きな被害が出るとともに、生態系への影響も懸念されている。数年前から駆除に乗り出している行政当局は、このほど地元猟友会の協力を得て大攻勢に乗り出している。目下、新城・上地島を立ち入り禁止にしてクジャクの根絶作戦が進行中だ。
・・・と書くと、多くの方がいったいどこの話だ?と思うことだろうが、実はこうした事態が日本国内で進行中なのである。
 沖縄県の宮古地方では稲やサトウキビなどを食い荒らすことが問題になっており、いまやインドクジャクは環境省の要注意外来生物リストに掲載されるほどの悪者である。見目麗しきインドの国鳥がまさか日本で『害鳥』になろうとは思いも及ばなかった私にとって、ショッキングなニュースだ。
 沖縄にクジャクが入ってきたのはそう遠い昔のことではない。1980年に小浜島のリゾートホテルで観賞用に飼育されたのが始まりだという。ところが飼育小屋から逃げ出したり、島外に持ち出されたものが繁殖したりして八重山全域に増えてしまい、いまでは与那国島でも目撃されるようになった。
 前述の環境省ウェブサイトには『小浜島(約400羽)、石垣島(約90羽)、黒島(約50羽)、宮古島(約40羽)、新城島(約25羽)、伊良部島(数羽)などで野生化し、繁殖もしている。西表島にも、小浜島から飛来する個体がある』とある。作物への被害はもちろんのこと、トカゲやハブなどの爬虫類、小型の鳥類、チョウその他の昆虫などを手当たり次第にガツガツ捕食することが生態系への影響を云々されるゆえんである。


 これまではオトリのクジャクを入れた箱型の罠で捕獲していたが繁殖のスピードに追いつかず、今月3日からは新城・上地島への立ち入りを禁止したうえで地元猟友会による『根絶作戦』が行なわれている。
 その優美な姿から環境の変化に敏感な繊細な動物とばかり思っていたが、実のところ相当たくましい鳥らしい。インドクジャクは毎年数十から数百羽ほど日本に輸入されているという。主に動物園のような施設での飼育や交配を目的とするものが多いというが、同様にお客に見せるために飼育するレジャー施設、公園、寺院、学校などでも需要があるそうだ。
 当のクジャクたちにとっては、沖縄の宮古地方は小動物の食べ物は豊富で気候も温暖、しかも天敵となる動物が存在しないこともあり、この『新天地』はなかなか快適なのだろう。このあたりには他にも外来種の動物が定着した例はいろいろあるらしい。たとえば本土復帰前に食用として導入されたアフリカマイマイ、サトウキビの害虫駆除に放されたオオヒキガエル、ペットとして入ってきたイグアナなどが挙げられる。
 クジャクたちにより甚大な被害を蒙っている農家は大弱りだろうし、カンムリワシ、イリオモテヤマネコ、セマルハコガメ、キシノウエトカゲ、サキシマハブなどといった珍しい動物たち、そして植物ではサキシマスオウノキなど、この地域の固有種を含む世界的にも貴重な生物たちが多く棲息する国立公園を抱える同地域において、生態系へのバランスが危惧されるのはもっともなことだ。
 文字通りインド、パキスタン、スリランカに棲息するインドクジャクたちは、自らこのエリアに飛来してきたわけではない。元はといえば彼らを連れてきた人間たちが管理を怠ったがゆえに野生化して繁殖することになったのだ。精一杯頑張って新しい土地に適応して仲間たちも増えきた。すると『駆除』だの『根絶』だのと叫ばれては、当のクジャクたちにしてみれば何とも不条理なことだろう。
 クジャクはとても長生きする鳥だ。寿命は20年から30年にもおよぶとされる。ひとたび『飼育する』となれば、どこかの施設であろうと個人であろうと、心してかかって欲しいものである。動物とはいえひとつの大切な命を預かること、ひとたびそれが野生化したときに社会や周囲の環境に与えるインパクトや負荷などを思えば決してクジャクに限った話ではない。生き物を飼うことの責任は大きい。
新城・上地島で、3日からインドクジャクの「根絶作戦」
(八重山毎日新聞)

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