学園の輸出 2

 だがひょっとするとインドに負けず劣らず注目を集めているのが中東の産油国かもしれない。オイルリッチな国々も『石油後』を見据えての人材育成に乗り出すようになってきているからだ。このほどサウジアラビア政府は先進各国に相当数の政府派遣留学生の送り出しに着手することになっており、もちろん日本もその受入国のひとつとなる予定だ。
 またカタールにはアメリカから複数の大学院が現地分校を進出しており、アラブ首長国連邦を構成する首長国のひとつドバイでは、知識と学問のセンターとして設立されたKnowledge Villageに様々な外国の大学が進出している。設置されている主なコースはビジネス・マネジメント、IT、薬学、建築、観光学、金融etc.といったいわゆる実学ばかり目に付くことから、まさに脱石油による知識経済化を目指すための人材を育成したいという姿勢が感じられる。
 ここで目を引くのは、インドの複数の機関が含まれていることだ。それらの名前は以下のとおりである。
Birla Institute of Technology & Science Pilani
Institute of Management Technology
Mahatma Gandhi University
Manipal Academy of Higher Education
 なお、このKnowledge Villageにはパキスタンから進出している教育機関もある
Shaheed Zulfikar Ali Bhutto Institute of Science and Technology
 英語による専門教育という強みはもちろん、地理的な近さと歴史的にインド人のプレゼンスが決して小さくないことからくる人的ネットワークの厚みなど、湾岸地域においてはインドに有利な部分が多いのだろう。昔から建設現場や工場などで働く単純労働者たちはもちろん、建築家、医師その他の高度な技能を必要とする職種のプロフェッショナルたちもインドから数多く渡っている。またインド人の語学(英語)教師の需要も少なくないと聞く。英語といえばインドの隣国ブータンの英語教育の礎を築いたのはインドから派遣された教員たちだというし、『インドの英語』の評判はなかなか良好らしい。
 地域に固有の学問ではなく、経済や工学といったユニバーサルな学問分野におけるインドの教育機関の海外分校設置という動きは、そのポテンシャルも含めて今後注目に値するのではないだろうか。

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