コンパクトデジカメ新時代到来か シグマDP1

  
発売前から大いに話題を集めていたシグマのコンパクトデジカメDP1。発売日前からメーカー発のサンプル画像、店頭で売り出されてからは購入した人々による作例がインターネット上にアップされていくにつれて、それらの画像の背景のボケ具合やリバーサルフィルムで撮影したかのようなコクのある風合いに心惹かれた。
やはりセンサーが大きいと違う。APS-Cサイズのセンサーといえば、デジタル一眼レフの入門機から中級機にかけてのモデルに使用されている大きさだが、面積比にして従来のコンパクトデジカメで使用されているものの7倍から12倍にも相当する。それで良いレンズを搭載していれば、描写に格段の差があって当然だ。
実際に触れてみると金属製のしっかりしたボディにツヤ消しブラック塗装で、それなりの高級感がある。よくリコーのGR-Digitalと比較されることの多いこのモデルだが、パッと見た感じはどことなく似ているような気がしないでもない。
実物はかなり大きめなのではないかと想像していたのだが、意外なほどコンパクトにまとまっており、先述のGR-Digitalと並べてみてもそれほどの違いは感じない。ただしレンズ鏡胴部分が大きい突き出しは、やはり搭載しているセンサーのサイズがまったく違うことを物語る。
上がDP1で下がGR-Digital


とりあえずテキトーにシャッターを押してみた。一眼レフならば、28mm単焦点でF4なんて、ずいぶん暗いなと思うところだが、他のコンパクトデジカメに比べるとずいぶん背景のボケの効果が期待できることがわかる。確かに暗いレンズであるがゆえに、手振れギリギリの場面で撮ることは多いと思う。アクセサリーシューに装着する外付ファインダーは大いに役立つことだろう。ここに掲載した写真はリサイズして圧縮してあるが、元画像はなかなかいい感じだった。 また広角レンズとはいえ歪みの少ない自然な写りだ
 
またラティテュードもかなり広いようだ。これまたもちろんセンサーが大きいこともあるが、FOVEONという形式のセンサーであることもどうやら一役買っているらしい。レンズを向ける先のコントラストが高いと、すぐに白飛びしてしまう従来型のコンパクトデジカメとは明らかに一線を画す。
ISO800で撮影
高感度設定も期待できる。ISO400はいわずもがな、ISO800だとさすがにノイズは増えるものの、スナップ程度ならばまあ使えそうだ。でもこの分ならばほとんど実用にならないであろうISO1600やそれ以上の感度設定は用意されていないところに潔さを感じる。画質こそがすべてのカメラだけに無駄なものは要らない。コンパクトデジカメのお約束事として付いている動画撮影機能も不要だと思う。画質や描写性で圧倒的に有利な大きなセンサーを搭載しているがゆえに表裏一体となった不利な点もある。通常のコンパクトデジカメではフツーごく当たり前の、被写体までの距離1?なんていうマクロ機能がない。よく『マクロモード』で最短撮影距離がレンズ先端からだったりするのだが、DP1にはそういうことは不可能でカメラ内部のセンサー表面から被写体までの距離30センチが限界だ。もっともこれについては、別途クロースアップレンズを購入することでなんとか対応することは可能。フードアダプターの先端にフィルターを装着できるようになっているので、ここに取り付ければ良い。
クロースアップレンズ装着
大きなセンサー=膨大なデータ量を反映して、書き込み速度が遅い。RAWで撮影する場合は時間がかかるのは仕方ないにしても、JPEG画像の場合でも、一枚撮影してから次のコマを撮るのが可能になるまでの時間がちょっと気になるところだ。高級=迅速が必須とは言わないが、高いカメラの割には?と感じないでもない。
これを単なるコンパクトデジカメとしてとらえるならば、他にも至らないところはとても多い。開発陣の意思と営業サイドの要求がうまく折り合って製品化されたものであるとはいえ、やはり初物であるためユーザーの意見が反映されていないため、ややプロトタイプ的な印象を受ける。レンズバリアーでなくキャップ式であるのはいいとして、これが特殊な形状で代替が利かないので、失くしたらとても困ることからはじまり、操作性にも改良の余地あり。あれこれいじくりまわして好みの画に仕上げるためのカメラであるはずなのに、各種設定をする際の操作がかなり遠回りになっている感じがする。そうしたことから、カタログに謳われている『一眼レフと同等。ただボディが小さいだけ』という表現は、やや誇大すぎるのではないだろうか。
操作性について肯定的に評価できる点もある。マニュアルで焦点を合わせるための距離目盛付きダイヤルが付いているのはとても良いアイデアだ。なおこのカメラについては、賛否含めていろんな評価が飛び交っているようだが、『これまでなかったコンパクトデジカメが出てきた。素晴らしい!』『すごい!こういうカメラが欲しかった』と、とても肯定的な意見に集約されるようだ。私も同様に考えている。
距離目盛付きダイヤル
前述のようにGR-Digitalと比較されることが多いDP1だが、前者のように使い勝手の良さと軽快さは期待できないが、それだけによりこだわり度の高いカメラであるといえるだろう。ちょこまか動く小さな子供や小動物を撮るには向かないものの、28mm単焦点という制約を踏まえたうえで、風景、建物、人物その他をじっくり撮影するのに楽しい創造的なデジカメの登場だ。
GR-Digitalが唯一無二の存在であった本格的な高級コンパクトデジタルカメラの世界で、これまで存在しなかったAPS-CサイズのFOVEONセンサー搭載という強力なライバルが登場したことで、このジャンルのカメラの新時代がいよいよ本格的に始まるのではないかという思いがする。他社からも大型センサーを搭載した高級モデルが出てくるかどうかはさておき、こだわりの高品位コンパクトデジカメが注目を集めるようになってくることは間違いない。
この手のカメラはバカ売れする類のものではないと思う。人それぞれ求めるものは違うので、『顔認識』や『高倍率ズーム』といった機能をありがたく思う人もあれば、そういうこざかしいものはいらないから、本来の『カメラらしい性能』がしっかりしているものが欲しいという人もある。DP1は、まさに『カメラらしい』コンパクトデジカメといえるだろう。旅先にも日常にも気軽に携帯できるサイズなのに、ふと取り出してみればじっくりと撮影に取り組める本格的なカメラ。まさに『インドでいかが?』というところではないだろうか。
またDP1でFOVEON X3ダイレクトセンサーの描写の良さから、これまでそれなりの注目を集めてきたものの、売り上げは芳しくなかったシグマのデジタル一眼レフが静かなブームを呼ぶことになるのかもしれない。大きな可能性を秘めた一台だ。DP1は目下、店頭販売価格の最安値は9万円前後。カカクコムを参照されたし。
製造元のシグマでは、現在さらに驚異的な新製品を開発中。APO 200-500mm F2.8というのがそれだ。200mmから500mmまで、通しでF2.8という驚異的に明るいズームレンズである。しかも専用のエクステンダーを装着すれば、400mmから1000mmのF5.6レンズに変身するという怪物だ。
これをインドで使うとなれば、動物保護区、鳥類保護区などで大いに活躍しそうな気はするものの、値段はなんと『250万円』と超高額なので私には一生縁がないはず。いや、それ以上にこのレンズの巨大さだ。ちょっとこちらを見ていただきたい。てっきり天体望遠鏡かと思った。サイズ・価格とともに非現実的な製品だが、これをカメラに装着するとファインダーからどういう世界が見えるのか、どういう写真が撮れるのか興味のあるところではある。

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