ロンリープラネットのガイドブックが変わる

Lonely Planet India 第14版

世界を旅行する人たちの間で長年親しまれてきたロンリープラネット社のガイドブック。広告類は一切掲載せず、中立的な情報を提供しており、いわば『旅行ジャーナリズム』的な存在は日本の同業者の間では見られないものだ。

近年ではBBC(British Broadcasting Corporation)の子会社のBBCワールドワイドに買収されてからは、同社のウェブサイトで旅行情報の提供、ガイドブックの紹介と販売以外にもホテルやフライトの予約、旅行保険の販売といったサービスも提供するようになり、ガイドブック発行会社というよりも、旅行関係の総合サービス企業といった観を呈するようになってきている。

さて、そのロンリープラネットのガイドブック。どこの国を対象とした案内書であっても、版を重ねるごとに情報が蓄積されていくことから、当然厚みも増していく。国土が広くて見所も多いインドや中国といったものとなると、それこそ辞書のように厚くなり、旅行先で日中持ち歩くのに邪魔になってくる。体格が良く、持ち歩く荷物も多い西洋人男性でさえも『この厚さはちょっとねぇ・・・』とボヤくほどになってしまっている。

そんな中、ついにロンリープラネットのインドの旅行案内書に対してダイエットが敢行される。今年9月に版が切り替わるインドの案内書については、用紙が変更されるのだろうか。サイズや厚みは大差ないものの、重量は半分程度になるようだ。

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旧版

サイズ : 197mm x 128mm

重量 : 0.98 kg

版 : 第13版(2009年9月発行)

ISBN: 9781741791518

ページ数 : 1244 ページ (カラー28ページと地図256片を含む)

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新版

サイズ : 197mm x 128mm

重量 : 0.5 kg

版 : 第14版(2011年9月発行)

ISBN : 9781741797800

ページ数 : 1232ページ(カラーページ256ページと地図203 片を含む)

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また、同社のインド案内書の初版が1981年に世に出て以来、初めて新版のページ数が減ることになる。現行の第13版が1244ページであるのに対して、第14版は1232ページだ。おそらくロンリープラネット社としても、旅行先で携行するガイドブックについて、重量もさることながら厚みについてもこのあたりが限界とわきまえたのだろうか。

軽量化といえば、近年始まったPDFでの販売はなかなか好評のようだ。旅行先を短期で訪れる人ならば、必要なチャプターのみプリントアウト、長期旅行者の場合でもウェブ上あるいはUSBのストレージ等に保存しておき、必要に応じて印刷して使う、というやりかたが広まっている。第14版のPDFでの販売はすでに開始されているため、早速これをウェブ上で購入してみた。

これまで、申し訳程度に挿入された観光地のカラー写真を除き、地図以外は黒い文字がズラズラと羅列されているだけであった紙面は、パッと見て感覚的に把握できるようにレイアウトされるようになる。内容もカラー刷りページが28ページから256ページに増え、ヴィジュアルになってきているとともに、従来は単色刷りだった本文だが、新しい版では二色刷りになり、ずいぶん見やすくなっている。

巻頭の総合案内部分と巻末のインデックスは無料で公開されているので、参考までにご覧いただきたい。

今回の刷新ぶりは各々の好みによるところではあるものの、概ね好感を持って迎えられるのではなかろうか。元々は安旅行者たちに愛用されてきたロンリープラネットといえども営利企業だ。今やバックパックを背負って長期旅行する若者たちだけを相手に商売しているわけではない。そもそもバックパッカーと呼ばれる旅行者たちの間においても、ひところのようにひたすら安くストイックな旅を志向する割合が高いわけでもなくなっているようだ。同社ガイドブックの長年に渡る旅行情報の蓄積は、世界を旅する人たちのあらゆる層から支持を集めている。

日々デジタル化の進む今日の人々は、年齢を問わず以前よりも忙しくなってきているし、せっかちでよりクイックなソリューションを求めるようになってきている。これがガイドブック掲載内容のレイアウトに反映されるのは当然のことだろう。

電子版として、前述のPDF以外にキンドル版も出ている。これらの普及もこれらを表示させるデバイスの進化や普及と低廉化とともに、売り上げ中に占める割合を高めていくことだろう。だが今のところは製本版+PDFのプリントアウトが圧倒的多数だ。やはりまだまだ紙という媒体におけるメリットが大きい。

乱暴に扱っても読めなくなることはないし、必要があればその場でペンで書き込むことができる。またバッテリー残量を気にする必要もない。電子ブックリーダーと違い紙の書籍は、その内容を読むことを欲しない人にとっては何の価値もないため、盗難のリスクも少ない。

この秋から書店で新しい表紙の『INDIA』ガイドブックを目にすることになる。ぜひお手元に一冊いかがだろう?

 

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