『旅』5月号はブータン特集

『旅』 2009年5月号
新潮社の旅行月刊誌『旅』の現在書店の店頭に並んでいる5月号で、ブータンの特集が組まれている。
表紙に書かれたキャッチフレーズにあるように『ブータンは世界でいちばん幸福な国』であるかどうかについては、そうともいえないがゆえに、ネパール系住民との軋轢や同住民が難民として流出したりしているわけだが、非常に興味深い国であることは間違いない。
首都ティンプーや地方の町などの美しい景色、人々の暮らし、寺院のたたずまいや手工芸品等の生産の様子、旅行事情、グルメスポットに宿情報など、写真を豊富に使って70ページあまりをヴィジュアルに展開している。
インドのすぐ隣にありながら、なかなか訪れる機会のないブータン。現在までのところ、同国政府の方針により、外国人はツアー参加が原則で、これまたかなり高額な費用が設定されているため、目下の私には文字通り『手も足も出ない』といった具合。
ちょうど昨年の今ごろ、ブータンでは総選挙が行なわれた。これにより、大衆からの要求もないのに、この国を支配してきた絶対君主自身により『上からの民主化』が実施され、自らの権力の大部分を放棄して民政移管し、立憲君主制に移行するという、世界でも極めて稀な手続きによる政治体制の大きな変更が実現している。
これにより、理論的には社会の様々な層からの民意を汲み上げた政治が実施されていくことになり、それまでの政治や社会のありかたに相当な変化が出てくるであろうことは想像に難くない。
『ブータン 個人旅行受け入れへ』という情報が世界を駆け巡る日もそう遠くないのかもしれない・・・と私は思う。
ブータンのツーリズムといえば、元々は政府系の事業体のみが取り扱うものであったが、80年代後半から90年代後半にかけて、『民間でできることは民間で』というグローバルな潮流は、ヒマラヤ奥深く位置するこの小国のこの分野にも及び、1991年に旅行業の民営化が実施され、現在では200社を超える大小の民間企業がこの分野のビジネスを取り仕切っているといわれる。
たとえ事実上の鎖国状態にあるにしても、世界の動きとは無縁ではいられない。これまでブータンの外交といえば、ほぼインド一辺倒であった。しかし民意を広く反映した複眼的な国家運営がなされるであろうことから、南の大国との特別な関係について、今後何らかの見直しが図ろうという動きが出てくることもあり得ない話ではないだろう。
ときどきインドから少し視点をずらして、視界の片隅に入れておきたい国である。

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