ネット上に流出するボリウッド作品

前回に引き続いて動画投稿サイト上に散在するボリウッド作品について考えてみたい。インド版YouTubeといえるTumTubeのようなところには、インドのテレビ番組やムービークリップなどが投稿されているが、圧巻なのは『ボリサガ』というちょっと有名なウェブサイトではないだろうか。ここにアクセスすることを推奨しているわけではないので、敢えて具体的なURLを明かさないでおく。すでにご存知の方も少なくないだろうし、『ボリサガ』をヒントに探すのは決して難しいことではないと思うが。
ここでは封切りされたばかりの人気映画をまるごと観ることができてしまうのだ。どの作品も四つから八つくらいに分割されているが、映画のはじまりから終わりまでちゃんと全部入っている。画質はあまり良くないがそれほど見づらいという具合でもない。音声は聴き取るのにまったく問題ないレベル。海賊版の映画ビデオよりはマシかと思う。
だがこの映像、このサイトにアップロードされているわけではないし、閲覧者に映像を供給しているわけでもない。様々な動画投稿サイトにアップロードされた映画作品に対するリンクが貼られているだけである。しかしながらここにアクセスすれば、別々の話題の新作をひととおり巡回できるようになっているというのがミソである。各投稿サイトの運営姿勢次第では、こうした『海賊行為』を認めないところも少なくないので、クリックしてみると『この映像は規定により削除されました』という表示が出たりもする。
映画は基本的に映画館で観るものだと思う。そうでなければせいぜい大画面のテレビでの楽しむあたりまでが許容範囲だろうか。実際には映画は観たいがまとまった時間がなかなか取れず、PMPに録画したり、携帯用DVDプレーヤーを持参してわずかな空き時間を利用してコマ切れに鑑賞したりもしているのだが、『観る』というよりただ機械的に『見る』ことにより、『自分はこの作品の内容を把握した』というアリバイのための作業をしたかのようで、なんとも消化不良なのである。
そこにくると『動画投稿サイトからダウンロードした高圧縮映像』をパソコンで再生するなぞもってのほかということになるのだが、正直なところ私自身も非常に評判の作品があれば、『ちょっと覗いてみよう』とアクセスして、結局最後まで見ていたりする。いろいろ思うところはあっても、やはりこういうものがあれば何だかんだいって見てしまうのである。
だがそもそも封切り直後の作品の元の映像はどこから流出してしまうのだろうか?市中に出回る海賊版の多くがそうであるように、上映されているスクリーンをビデオで写したような稚拙なものではなく、明らかにちゃんとした映像ソースからコピーしたもののようだ。
こうした『脇の甘さ』も庶民の娯楽らしいところ、といえばそうかもしれないし、もし興味があればこうした映像に『インド映画圏』以外の地域からでもアクセスできることは、全世界に自国産映画の魅力を広める伝道師的な役割を担っているといえなくもない。だが自宅にいながらにして観ることができること、それをさらに投稿サイトにアップロードして不特定多数の人々とシェアできてしまうという観点から、顧客がそれを販売している店舗まで出向かなくては購入できず、シェアするといってもせいぜい友人知人の間で貸し借りする程度であろう海賊版DVDやVCDより更にタチが悪いといえるだろう。
前述のとおり、私自身が『あれば観てしまう』のでエラそうなことは言えないのだが、こうした動画投稿サイトにアップロードされた映像によるボリウッド映画界の損失はいったいどのくらいになっているのだろうか?とちょっと気にかかっているところだ。

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