アルナーチャル・プラデーシュが近くなる?

インドの通称セブン・シスターズこと北東七州。アッサム、メガーラヤ、トリプラー、ナガランド、マニプル、ミゾラム、アルナーチャル・プラデーシュのうち、最初に挙げた3州については、一部治安に問題がある地域も含まれるとはいえ、問題なく訪問できるが、他の4州については入域するために事前に所定の手続きを踏んだうえで内務省による制限地域入域許可(RAP)を取得する必要があるうえ、州毎に条件等はいろいろあるとはいえ、概ね『4人以上のグループ』という条件があったりもするので、私にはなかなか訪れる機会がなかった。
中央政府・州政府レベルで、かたや北東州の観光の魅力をアピールする姿勢を見せつつも、他方では入域にかかる制限は続いてきた4つの州について、中には規則を緩和するところも出てきているようだ。ミゾラム・ツーリズムのサイトを覗いてみると、それ以外の人数でも申請できそうな具合に書かれている。州によっては、4人分の料金を旅行代理店に支払えば訪問可能という話も耳にしたことがある。
最近アルナーチャル・ツーリズムを見てみたところ、現在では『2人以上』というところまできているようだ。この件について、同州内のいくつかの旅行代理店に問い合わせしてみた。単身訪れるつもりであっても、同時期に訪れる他の旅行者たちの分とまとめて申請するので問題ないとのこと。許可取得の費用は50ドルとか。
ただしもともとそういうルールになっているのか、それとも代理店たちにとってオイシイ部分は許可取得代行ではなく、それを取得したお客に利用させるグループツアーであるがゆえなのかわからない。私がコンタクトしたいくつかの代理店はどれも『ツアーに参加するか、私どもが斡旋するガイドを雇うか、どちらかが必須です』と言う。
入域に制限がある理由は、アルナーチャルの場合は他州と少々違うようだ。州内にこれといった政情不安を抱えているわけではないのだが、隣接する中国との係争地帯であることが大きいようだ。中国は、アルナーチャル・プラデーシュ州大半の地域ついて『自国領である』と主張している。この州はまた中国南部に大きく食い込んでいることから、軍事面での要衝であることはいうまでもない。同州はブータン、ミャンマーとも国境を接している。
『本土』から眺めると、そうした地理条件に加えてこれを取り囲む自国の州がどれも内政的に安定しているとは言いがたいこともあり、なかなか無条件での旅行客受け入れには動きにくいのかもしれない。それでも5年、10年といった長いスパンで眺めれば、この地域への入域に関する制限は確実に緩和の方向に進んでいる。
だが東北7州の中でも特に民族構成がバラエティに富んでいるのがこのアルナーチャルであるそうだ。26の民族、65の部族が暮らすというこの州は、まさにインドの多様性を写し出す鏡のひとつともいえるかもしれない。西には3000メートル超の高地が控えるチベット世界、東の丘陵地にはミャンマー、タイから中国雲南省にかけて分布するカチン系民族を含む東南アジア世界、その中央部のブラフマプトラ河流域にはアッサムへと連なるインド世界が展開している。ちょうどチベット、東南アジア、南アジアの境目に位置しているわけで、実に興味深い土地であることは間違いない。
個人的には北東7州最大の目玉に違いないと思うのがこのアルナーチャル・プラデーシュ。主たる見どころといえばやはりチベット文化、チベット仏教寺院ということになることだろう。その中でもハイライトといえばタワンの僧院だが、まさにその『公式ウェブサイト』なるものがある。
僧院の簡単な紹介、近隣地域に散在する分院に関する情報、フォトギャラリー等々あっていいのだが、『ツアー・オペレーター』のアイコンをクリックしてパカッと開くのはデリーのエージェント。何か提携関係にでもあるのだろうか。
外国人の北東地域への入域については、90年代以降は時間の経過とともに地域差はあれども着実に緩和へと向かっているようだ。この動きを逆流させるような出来事が起きることなく、このまま今後も続いていくことを願いたい。すぐにそこを訪れる予定はないのだが、これまで実際の距離以上に『遠いところ』だったアルナーチャル・プラデーシュが少しずつ近くなってくるのは嬉しい限りである。

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