「チョウク」のある家

ワーラーナスィーでの宿は昔ながらのお宅という感じの建物。おそらくもともとそうだったのだろう。子沢山世帯とか、複数世帯で暮らせるようになっているのは、昔の「ジョイントファミリー」という生活形態が普通であった頃のもの。

時期が下ってからは、下宿人を住まわせていた時期もあったはず。建物の形はいびつだが、中央には大空に通じる吹き抜けがあり、それを囲む形でたくさんの部屋が配置されている。ちょうど家族用の「広場」という感じだ。これは団欒の場としてのリビングと庭をも兼ねている。

とてもざっくりとした言い方をすれば、欧州の地中海沿岸も北アフリカ、そしてアラビアやイランを経て中央アジアやアフガニスタン、パキスタンやインドなどの南アジアでも普遍的な家屋のありかた。おそらくイスラーム教の伝播やその文化的な影響とともに広まったのだろう。

家屋は四方を壁で囲まれているため、外からは中を窺うことはできないが、大きな家の中がひとつの小さな世界として機能する。吹き抜けの広間は家族の段落の場であったり、外からのお客さんをもてなす場であったり、商取引の場でもあったりする。

ここワーラーナスィーの話ではないが、ラージャスターンのシェカワティ地方のハヴェーリーでは、こうした空間を「チョウク」と称するが、市内のチョウクつまり2つ以上の通りが交わり賑わう地域のことだが、家屋の中のそうした場所なのだ。

大きな邸宅になると、出入口近くの来客用のチョウク、そして奥のほうにある女性を含めた家族だけのためのチョウク、ときにはさらに多くのチョウクを持つ、もはや宮殿に近いような特大邸宅もある。

それはさておき生活空間の中にこうした「広場」があるような家屋は、日本でも応用できたら評判になるかもしれない。雨の多い日本では合わないということもあるかもしれないが、こうした家屋が普遍的にある国々にも多雨の地域はある。

ただし時代に合わないということはありそうだ。何しろ頭上は大空なので、冬は暖房は効かないし、夏は冷房など利用できるはずもない、

やはりちょっと無理だなぁと思わざるを得ない。

客室内

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください