偽物iPhone 『Hi-Phone』日本上陸

2年前にiPod touchの初代モデルが発売となった際、タッチパネルで操作する新しい感覚、WiFi環境があればインターネットに接続できる便利さと合わせて、これまでのPMPになかった斬新さに惹かれた人は多い。
好きな曲をダウンロード購入できたり、Podcastでニュース等を聴いたり、ウェブ閲覧やメールのチェックができるのはもちろんのこと、カレンダー機能が充実していてシステム手帳が不要になるし、様々なアプリを追加して様々な機能を与えることできるため、パソコンの小さな端末のようでもある。各々の必要に応じてカスタマイズできるのが最大の魅力なのだろう。
これに続いて各国の他のメーカーも似たような操作方法の機器を発売しているものの、発売元がアップルであるという知名度のみならず、変幻自在な利便性において肩を並べる製品は今のところないようだ。
そのiPod touchもiPhoneが発売になってからは、どうも影が薄くなっているようだ。前述のようにいろいろ使いまわせる道具に電話も付いて、WiFiのないところでも快適にネット接続ができる。本体価格がちょっと高くても、通信料がこれまで使っていた携帯電話よりもかなり高くついても、その利便性に充分な合理性を感じる人は少なくないことは想像に難くない。
そんなiPhoneだが、インドを始めとする多くの途上国においては、普及の度合いはあまり高くないようだ。インドのお隣り中国では、従前から海外で入手したiPhoneが国内で販売されたりなどはしていたようだが、正規に発売されることが発表されたのは今年8月のことだ。中国聯通という携帯電話事業者との契約のもとで販売されることになるのだという。
ところが中国本土で正式に発売となる以前から、中国製のiPhoneのそっくりさん製品が出回っているという話をよく耳にした。見た目が非常に良く似た多機能なスマートフォンであるとのこと。iPhone以外にも、ノキアその他の有力企コピー製品をせっせと生産している中国のCECTという会社の製品だ。
米国のamazon.comで取り扱いがあるのは知っていたが、『そんなものもあるのか』と特に気にかけていなかったが、思わぬところで実物を目にする機会があった。それは東京都内である。
JR線のある駅の近くで、表通りに面した店先に、平行輸入品らしきSIMフリーのひとつ前の世代のiPod touch 3Gが並んでいる。日本において携帯電話はキャリア固定で販売されており、iPhone利用者といえば即ちソフトバンク利用者ということになる。
『ソフトバンクユーザーでなくても使えるのかな?』『国外でもSIMカード差し替えれば使えて便利かも?』と思ったが、かなりいい値段である。8 GBのモデルは5万円台、16 GBのものは6万円台。不良品であったり、何かで故障したとしても、少なくともアップルの日本法人は応じてくれないのではなかろうか?
その横に置かれた別のiPhoneは、1万5千円台ないしは1万6千円台とやけに安い。いったいどこが違うのだろうか?と目を凝らしてみると、なんとこれが噂の『Hi-Phone』であった。
iPhoneの偽物 Hi-Phone
大きさといい、形状といい、まさにコピーである。製品が収まる黒色の箱までそっくりだ。タッチパネルに並ぶアイコンもiPhoneにそっくり。パっと見どころか、本物にじっくり触れてみたことがなければ、手に取ってみても『これがiPhoneです』と言われれば、『ああそうですか』と納得してしまいそうだ。
本物にはない機能も付加されている。価格が低いほうはテレビチューナー内蔵、安いほうにはこれが付いていないという。SIMカードを2枚挿入できるようになっており、ふたつの携帯番号を1台で使い分けることができるとのこと。一回り小さなミニバージョンのHi-Phoneもあるなど、なかなか『気が利いている』ようだ。
ただ、これらは日本国内で使うことは想定していないとのこと。なぜならばGSM専用機であるからだ。ゆえに日本に上陸したものの、国内でこれを使っている人の姿を見かけることはないはずである。国外に持ち出しての使用を前提として販売されていることになる。
iPod touchは6千円から7千円、iPod classicやiPod nano等は4千円という価格が付いている。『何でこんなに安いのか!?』と、こちらもよくよく見ると、iPod製品とカタチは同じだが、どこにもiPodとは書かれていない。
日本でこうしたこうしたモノが売られているとすれば、いろんな多業種の店や事務所が入った雑居ビルの一角や、秋葉原のITやオーディオ等関係の小さな店が並ぶエリアで、ゴチャゴチャと積んであるのではないかと思っていたが、多くの人々が行き来する表通りに面した1階にある小ぎれいな店先で、『これでもか!』と沢山陳列してあるとは想像もしなかった。
ただし日本語での表示は皆無で、店員はすべて外国人。客層も大半が外国人のようだ。界隈には日本語の表示無しの美容院、不動産屋、食堂なども多く、それぞれ出身国の同胞たちをお客に営業している多国籍なエリアだ。
Hi-Phoneを、ただのコピーと笑い飛ばすのは簡単だ。しかし、あらゆる分野でこうした製品が次から次へと出てくるのにはワケがあるはず。持ち前の機敏さや柔軟さに加えて旺盛な企業化精神を持つ人々の国、中国の恐るべき工業力の一端を見せ付けられる思いがする。
中国が、ここに住む人々の高い資質と上昇意欲を背景に、このまま急成長を続けていくならば、いつしか彼らにしかできない高い付加価値を持つ製品やサービスを次々に生み出すようになるのではないかという思いがする。日本のクルマ産業にしてもカメラ工業にしても、最初は当時の先進国の製品の物真似から始まったことを忘れてはならない。
Hi Phone vs iPhone vs N95 8GB video review (YouTube)

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