1780年に刊行されたBENGAL GAZETTEは「インド最初の新聞」とされる。
こちらは、その発行人のジェイムス・アグストゥス・ヒッキーの生き様について書かれた本。カルカッタで不動産投資に熱を上げて私財を増やす欧州から来たキリスト教団の不正を暴き、不条理な言いがかりと攻撃により土豪を取り潰して得た財を仲間内で分け合う東インド会社軍内部の闇を糾弾し、暴走する権力となったワレン・ヘイスティングス総督をも告発。(ヘイスティングス総督は弾劾を経て罷免される。)
言論の自由という理念さえもなかった時代に、巨悪を暴いて鉄槌を下そうという心意気。植民地支配者側の社会の人間であったにもかかわらず、反戦・反植民地主義のヒッキーの姿勢は、いったいどこからもたらされたのか?
もっとも妥協のない直情的な彼のスタンスにより、投獄されたことすらかったが、肝心の新聞を発行できたのは5年間にも及ばず、東インド会社との取引で彼に支払われるべき巨額の債権も反故にされ、金欠の中で失意の老後を送ったらしい。
東インド会社による植民地体制下のインドで、ずいぶん型破りな男がいたものである。
書 名:HICKY’S BENGAL GAZETTE
著 者:ANDREW OTIS
出版社:TRANQUEBAR
ISBN-10 : 9789386850911
ISBN-13 : 978-9386850911