インドの東2 マウント・ポッパへ

エア・バガンのフライトは定刻に出発。機体は小型ジェット機のフォッカー100。飛行時間は50分。飛び立ってからしばらくすると下降体勢に入り、午前7時半にバガンのニャウン・ウー空港に到着。
到着ターミナルを入ったところでは、バガン遺跡保護区入域料を徴収する係員が待ち構えており、外国人客はここで10ドル支払うことになるが、博物館などを除き、遺跡の入場料を個別に徴収されることはない。この領収書はバガンでホテルに宿泊する際にも提示が求められることになっているようだ。
この場所では、ジョージ・オーウェルの処女作『ビルマの日々』の海賊版がけっこうな値段で販売されていた。値段はともかくとして、またいくらWTO未加盟の国とはいえ、政府が堂々と外国人観光客に対して不正なものを販売するとはいかがなものか?
宿にチェックインしてから、すぐにクルマをチャーターしてマウント・ポッパに向かうことにした。運転手はあまり英語ができないが、それでもなかなか話好きな人のようで、運転中よくしゃべる。走り出してからしばらくしたところで、砂糖ヤシから樹液を取り、それから砂糖、醸造酒、蒸留酒を作っている簡素な作業所を訪れた。
きれいに整列して植えられた砂糖椰子の木には、よく見ると木上のほうにいくつもの素焼きの壷が取り付けてある。そこに人が登り、汁の溜まった壷を取って降りてくる。だいたい一昼夜取り付けておくと、けっこうな量になるらしい。
壺に溜まった樹液を採取
それを女性が漉して大きな壷に集める。これを小屋の中で火にかけて、焦げ付かないようにかき混ぜながら濃縮して、ジャガリー(粗糖)の塊が出来上がる。
砂糖椰子汁を煮詰める女性
ジャガリー
同じくその汁を発酵させて酒を作るのだが、それを蒸留する作業が同じ小屋の中で進行中。ジャガリー、ヤシの汁、発酵酒、蒸留酒とそれぞれ試食、試飲してみた。最初の三つはとりたててどうということはなかったが、蒸留酒は南九州の芋焼酎に似た感じの味わいで、なかなか美味である。
ただいま蒸留中
このあたりの気候といい、乾燥具合や生えている植物といい、東南アジアというよりも北インドに近い雰囲気がある。下ビルマと比べて乾いていて生えている植物も少ない。黙って自然の景色だけを眺めていると、インドにいるかのような気がする。
マウント・ポッパに近くなると、周囲に緑が増えてきた。この山は、丘陵地帯にそそりたつ塔のような、奇妙な形をしている。。近くの死火山だか休火山だかが活動していたときに、噴火したマグマが落ちたところがこの山になったのだとか。
ポッパ山頂
山の頂上まで長い階段が続いている。頂にはタウン・カラッというお寺がある。寺院自体はどうということはないのだが、ここに祭られているのは仏だけではなく、かつて不幸な死を迎えた人たちが精霊として祭られている。この国土着の信仰の聖地でもあるとのことだ。
精霊・・・か?
周囲にもいくつか規模の小さなパゴダや僧院がある。それらの中には、中国寺院風の寺があった。これは寄進者が華人であったために、こういう形になったのだという。漢字で何やら書かれた札もかかっていた。
参道の階段には無数のサルたちがいる。インドにいるのと同じアカゲザルのようだが、気質はだいぶ違うようで、とてもおとなしいようだ。Mt. Poppaから見渡す周囲の広大な風景は見事であった。
山頂の寺自体は取り立ててどうということはなかったが、行き帰りの道すがら、バガンの荒涼とした大地とマウント・ポッパ周辺の緑が多く起伏に富んだ地形の好対照ぶりを眺めることもできて、楽しい一日であった。
夕方、宿に帰着。部屋はコテージになっており、なかなかいい雰囲気だ。中庭にはプールがある。このプールでは、日没後に大きなカエルたちが気持ち良さそうにチャポチャポと泳いでいる。中庭の芝生の上でも、ところどころ彼らの姿を見かけるので、暗いと気をつけないと踏みつけてしまいそうだ。暑い昼間はどこに隠れていたのだろうか?
レストランに出かけて、夕食が運ばれてくる前にマンダレービールを注文。まだ日中の暑さが残っており、ムッとするような空気。テーブルもイスも、手に触れるものすべてがモワ〜ンと生温かいが、ビールだけはよく冷えていた。
グラスに注いでギュッーと喉に流し込むと実に気分爽快。ちなみにこのビール、2年ほど前にカサウリー ビールとIMFL(Indian Made Foreign Liquor)の故郷の中でも触れたが、なかなかインドとゆかりの深い飲み物でもある。
シムラーからチャンディーガル方面に下ったところにあるヒルステーション、そして軍の駐屯地でもあるカサウリーにて1855年に創業開始したダイヤー・ブルワリー(後のMohan Maekin Ltd.の前身)が、英領期のビルマにおいて『Mandalay Beer』というブランドで発売したのがはじまりだ。
もちろん現在のマンダレービールは、とうの昔の現地化されているのだが、英領インドを代表する歴史的な銘柄のひとつであったことに思いを馳せれば、そこにひとつ新たな味わいも加わるかもしれない。
マンダレービール

「インドの東2 マウント・ポッパへ」への1件のフィードバック

  1. 関連のコメント「ヤンゴンへ」に書いてしまいました(ゴメン)。思い出しました、ボッパ山の麓の店に生々しいナッ神の像が展示され(祭られて)いました、ご覧になりましたか?20以上いやもっとかな。その中にはガネーシャやドゥルガー女神もありました。写真撮りましたが、お見せできなくて残念。

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