日経ビジネスもINDIA !!

 
 このところ日本のビジネス誌もこぞってインド特集を組んでいるが、現在発売中の日経ビジネスもこの大市場をカバーしている。IT産業の隆盛が何かと注目されがちなインドだが、昨今の経済成長と世界的市場としての発展について、この2年で2倍になるほどの急成長ぶりを見せていても、GDPに占める割合がわずか4%強に過ぎないITにそれほどの購買力の底上げ効果があるはずはないとしてその背景を探っている。
 これについて関税率が段階的に下がったこと、つまり1991年以前には最高150%だったものが現在では最高でも12.5%となっていることもあり、ちょっといいモノがリーズナブルな価格で手に入るようになったこともあるが、それよりもインドの消費拡大は金融事情の変化、つまり規制緩和によるものが大きいと解説している。
 具体的には『銀行もノンバンクも、インドの金融機関はカネ余りになっていて、貸し出し競争が起こっている』とし、ローンや割賦販売の普及により、耐久消費財を購入しやすくなり市民がおカネを使いはじめたことを挙げている。
 また『工場』としての中国とは違う視点から、『売り』から入れる途上国として切り込み、1994年にインド進出したソニーが2004年にインドでのテレビ生産を中止して、タイにある自社グループ工場製の輸入品販売に切り替えたことが取り上げられている。この年からインドとタイの間でFTA(自由貿易協定)が結ばれていることから可能になり、インドで現地生産するメリットがなくなったためとのことで、裏を返せば製造基地としての足腰が弱いことにもつながる。販売市場としての期待されるインドではあるが、『購買力に比べて販売にインフラが未成熟なのが特徴』であること、いわゆる白物家電の分野で圧倒的に強いのはサムソンやLGといった韓国勢であることなど、日系企業が苦戦している様子も描いてある。
 日本との関係においても、中国における在留邦人が10万人であるのに対してインドでは2000人(もっといるのではないかだろうか?)に過ぎないとし、空の便は日系航空会社だけで毎週274便が中国の主要都市に飛んでいるいっぽう、インドへは首都デリーに週3便しかないなど、まだまだ相当な距離感があることにも触れている。
 こうした状況を踏まえたうえで、これまで東南アジアや中国などへ進出する際の日本企業の特徴であった『日本企業文化の浸透』『低コストの生産拠点としての活用』『日本人駐在員の大量投入』といったやりかたから脱して、『欧米的な経営管理方法の導入』『欧米での留学、職務経験のあるインド人や印僑の登用』『欧米拠点での成功体験がある日本人社員の活用』を提言している。
 とりあえずそんな具合に意欲的な記事が並んでいる。その反面路上の白いコブ牛を『水牛』と呼ぶのはまだしも、『カーストが職業を保証している』(記事中では留保制度のことを言っているわけではない)というくだり、都会でも娯楽施設がまったくない国であるかのように書かれて(たとえばバンコクのタニヤやパッポンといったエリアに出入りすることを『娯楽』と思っている人にはそうかもしれない)いるなど、インドに対する変な誤解や先入観を植え付けるような記述があるのはどうかと思う部分はある。
 だがとりもなおさず経済の分野でインドの何が日本企業の関心を集めているのかわかりやすくまとめてあり、なかなか興味深いものがある。

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