手書き文字の訛り

東京都内のインド料理レストランにて。日替わりカレーのメニューを書いたのは、注文とレジ担当のAさん(ネパールの方)だな、と判ってしまうのは、やはり手書き文字の調子から。

人によって程度の差こそあれ、外国語を話すときにアクセント等で母語の影響が見られるのは当然のこと。日本語が大変流暢でも、少し会話するだけで出身国が中国だな、とかミャンマーの人だろうなどと判るものだし、在住歴20年を越える日本生活ベテランの韓国人でも、ひょっとしたところで韓国人らしいアクセントが出たりすることが少なくない。

幼い頃から日常に用いているのではなく、大人になってから習得した言語の場合はたいていそういうものだ。そこで生まれ育った人と違うアクセントであることは決して恥じるようなものではなく、自身の文化背景のひとつでもあるので、わざわざネイティヴのアクセントを真似る必要もないと私は思う。

実は手書き文字でも書き慣れた母語の痕跡が見られるということはしばしばある。タイの人が書いたもの、アラビアの人が書いたものなど、一目でそうと判ることは決して少なくないし、英文などでもそうした傾向が見られるもので、バングラデシュの人が書くローマ字には、なんだかベンガル文字風の重厚な雰囲気が醸し出されていたりすることもある。そうした「手書き文字の訛り」例のひとつが、この画像にある黒板上のデーヴァナーガリー文字風手書きメニュー。

また母語の文字の影響とはまた別の部分で、表記の慣習の違いなどもあったりする。通常、私たちが、数字の7を書く際に、縦棒の真ん中あたりに短い横棒を入れないのは、日本語の表記慣習のためであろう。日本人が「和式」で手書きした「7」を何の疑いもなく「なな」と認識できるようになると、かなりの「日本通」ということになるかもしれない。

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