インド迷走:ソニア首相就任を否定

Photo by www.indianexpress.com / (C) PTI Photo
 世の中いったい何がおこるかわからない。総選挙で勝利した国民会議派総裁=ソニア・ガーンデイー氏。首相就任が自然な流れであると思われたのだが、昨日、大統領との会談後、本人の口から就任を否定する発言が飛び出した。今日19日には「ガーンディー首相誕生!」と予想されていたのに。
 かねてよりソニア氏の出自については、党の内外から語られることは多かったが、彼女自身も会議派も、そうした障壁は百も承知で腹をくくって、この選挙戦を闘ってきたはずだ。右翼陣営の過激な攻撃を封じるため辞退したとすれば、「彼らの論理に屈して、会議派の指導体制の誤りを認めた」と、受け取られてもおかしくない。
 あるいは「外国人」「王朝の再来」という批判を最小限に抑えようと、一度は固辞しながらも周囲から熱烈に請われて就任したという手続きを踏みたいのだろうか。少なくとも、「首相のポストを明け渡すことで、閣外協力を表明するにとどまっている左翼勢力を取り込もうという奇策」ということはないだろう。
 一部伝えられている「野党の攻撃で嫌気が差した」「首相職に関心がない」というのが本当の理由であるとすればひどい話だ。ソニア氏を頂点とする会議派に期待を寄せて票を託した有権者たちへのあからさまな裏切り行為である。さらなる政治への失望と不信感を人びとの心へ植えつけることだろう。
 周囲の圧力で、断りきれずに政界へ進出することになった彼女に同情を寄せたくなる気持ちもあるが、いまこそ党総裁としての責任はもちろん、これまでソニア氏を祭り上げてきた会議派の責任も問われるべきである。世界最大規模の政党でありながら、強いカリスマ性を備えた指導者が不在であるという不条理。今回の出来事でその醜態を天下にさらすことになった。
 選挙で政治の風向きが大きく変わったものの、新政権発足前にして早くも元の流れに戻ろうとしているかのようだ。次期首相候補として、マンモーハン・スィン氏(1990年代初め、ナラシマ・ラオ政権下の財務大臣)の名前が浮上してきているが、はたしてどんな決着を見ることになるのだろうか。

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