フタを開けてビックリ!

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 13日に開票されたインド総選挙、当初の予想とは裏腹に国民会議派が第一党という結果になった。BJP(インド人民党)陣営が確保した185議席に対して、会議派陣営は217議席。過半数を得るのに必要なのは272議席。今後はBJPの対抗勢力をどれだけ取り込めるかが焦点となる。
  「反BJP」は、当然のごとく左派勢力が中心。今後、構造改革や、公部門の民営化プログラムが停滞するのではないかという懸念から、本日金曜日のボンベイ株式相場は急落した。これまでBJP政策の恩恵を受けてきた経済界や富裕層に不安を与える政権交代になりそうだ。
 農民や貧困層の支持を得られなかったことがBJP勢の敗因とされるが、ムスリムやダリットをふくめ、社会の底辺を構成する人びと、近年の経済発展の恩恵から取り残された人びとの不満をうまく吸収しようという国民会議派とその周辺勢力の戦略が功を奏したというわけでもないだろう。これは、BJP政権下で冷遇されてきた人びとによるリベンジである。
 マハトマー・ガーンディーが語った「インドの心は村にある」という名言は、現代にも通じる真理なのだろう。やはり選挙は国を挙げての多数決、数こそが力なのであるという単純な理屈がよく見える形になって表れた。
 華やかな歴史とともに、国の隅々にまでおよぶネットワークは国民会議派の大きな財産だ。「世界最大の民主主義政党」という看板もあながちウソではないな、という気がしてきた。
 また、これまで「BJPは苦戦ながらも勝利をおさめる」と予想していた多くのメディアが、社会のどの部分に依拠しているかということも、いまさらながら浮き彫りになった。


 まずは今後の成り行きを見守りたいが、順当にいけば会議派総裁=ソニア氏は、かつて「王朝」とまで揶揄されたネルー・ガーンディー家から生まれた4人目の首相となる。亡夫ラジーヴ氏の妻であるがゆえのことだが、彼女の生涯は映画以上にドラマチック。まさに「事実は小説より奇なり」である。
 彼女も子どもの頃、故郷イタリアの学校で、教科書の中にインドの反英闘争や非暴力主義などのエピソードを目にしたことだろう。しかし、独立運動を率いた政党のトップに就任、数年後にはその国の首相になろうとしている自分の姿など、夢想さえしなかったに違いない。
 今回、国民のBJPに対する審判は「ノー」であった。しかし、会議派に票を投じた人が党に大きな魅力を感じているのかどうかについても疑問はある。
 思えばBJPの台頭も、思想や政策への共鳴だけではなく、それまでの政治に失望した人びとによる反対票、あるいは浮動票の吸収による部分も大きかった。
 新政権発足後、有権者への公約実行、インド経済の行方はもちろん、BJPをはじめとする右派勢力が、野党としてどのような運動を展開することになるのか。こちらも目が離せない。
 インド社会はふたたび「世俗化」へ傾斜するのか。「ヒンドゥー至上主義」が巻き返しをはかるのか。…これからのインドには、さらに熱い政治の季節がやってきそうだ。
▼表で見る<インド総選挙2004 開票結果>
http://specials.rediff.com/election/2004/may/13kbktally.htm

「フタを開けてビックリ!」への2件のフィードバック

  1. 15日、全会一致で、ソニア・ガンディーが首相に正式決定したようですね。ついに四代目ガンディー首相誕生!

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