次なる政府は?

 インド各地で4月20日・26日、5月5日・10日と4回に分け行われていた総選挙の投票がすべて終了し、じきに大勢が判明する。現在、与党の立場にあるBJP(インド人民党)、政権復帰を賭ける国民会議派、ともに単独で過半数を得ることは難しい状況。両陣営ともに新たに連立を組む相手を探り、水面下での駆け引きが活発に行われているようだ。
 今回の総選挙は「インド初の電子投票」という記念すべき方法で集票。各地に百万台以上の投票マシーンが設置されたことも大きな話題となった。投票率55%(例年は60%台)とやや低調ではあったが、それでも3億5千万人以上もの人びとが、自らの意思を票に託したわけだから、地上最大規模のイベントとも言える。
 期間中、選挙に関わるトラブルによる死亡者は、この国にあって40名と少なく(!)、過去もっとも平穏な選挙のひとつであった。
 選挙広告もなかなか興味深く、中でも国民会議派の雑誌広告や、ウェブサイトには、ちょっと考えさせられるものがあった。
 独立運動、共和国制と憲法の制定、パンチャーヤト制導入、緑の革命、工業の発展、IT産業推進政策、経済自由化への道筋など…、118年もの長い歴史を持つ政党だけあり、近代インド史がそのまま党の歴史と重なる。しかし、いまでは野党の座に甘んじていることもあり、過去の実績にくらべ、近年は特にアピールできる材料が少ないようだ。
Photo by www.congress.org.in
 党のウェブサイトにアクセスしてみよう。「home」のすぐ右隣のタブには、元首相で1991年に亡くなったラジーヴ・ガーンディーの言葉が記されており、現在同党を率いるソニア氏は、まるで故人の代理を務めているかのような印象を受ける。
 「history」をクリックすると、いきなり手紡ぎ糸車を前にしたマハトマ・ガーンディーの大きな写真があらわれる。1989年の総選挙(会議派は大敗。人民党のV.P.スィンが首相の座に)の際に、「初代首相ネルー生誕百周年」というコピーを冠したポスターが選挙戦に大量投入されていたことを思い出した。
 すでに天国の住人となっている大昔のリーダーまで、キャンペーンに駆り出されるのだから、「公人」というものは大変だ。それにしても、華々しい過去の業績ばかり書き立てる記事には虚しさを感じる。もちろん、近代インドを形作る中で同党の役割は重大だった。が、インド人なら誰でも知っているようなことを今さら書き立てられたところで…まあ、どんなものだろうか。


Photo by www.congress.org.in
 イタリア生まれのソニア氏に、首相候補の期待がかからないのは、「外国人である」という理由だけではない。国内では「指導力不足」という点もしばしば指摘されているのだ。
 インド独立から三代続けて首相を出した名門ネルー家の嫁とはいえ、政界でのキャリアも浅いまま、「「(同党ウェブサイトによれば)世界最大の民主主義政党」のトップという大役を任されるのは、さぞ大変なことだろう。個人的には政治家としてよりも、数奇な運命に翻弄された彼女の生き様そのものに興味をひかれる。
 とはいえ、今回の選挙に初出馬した息子=ラーフル氏、キャンペーンを応援する立場に留まったもののアイドル的な人気を集めた娘=プリヤンカー氏が、人びとから注目され、話題の的になったことも事実である。これは、他に魅力ある政治家が少ないことの裏返しでもあり、会議派の弱体化を如実に示しているように見える。
 BJPを政権から追い落とそうか、という意気込みの最大野党がこんな具合ではどうしたものか。今回の総選挙、国民の審判はいかに?

「次なる政府は?」への3件のフィードバック

  1. 国民会議派勝利!
     いやぁ、驚きました。
     小選挙区制のなせる業なのでしょうか。
    それとも、ラルー・プラサド・ヤダブなど地方有力政治家やムスリム系などマイノリティの集票力なのでしょうか。
     ogataさんが書かれているように、僕もいまの国民会議派にはあまり新たな「輝き」を感じていなかっただけに本日の速報にはほんとに驚いている次第。でも、これが選挙の醍醐味なのかもしれませんね。
     少なくとも日本の選挙より、ダイナミズムを感じます。

  2. 「国民会議派勝利のニュース」早速、日本の各紙でも報道されていますね。
    http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/india/
    ぼくは政治ネタには弱いんですが。さすがにこの結果には驚きました。ソニア・ガンディーが首相になるかもなんて…って、ほんと想像つかないなぁ。さてさて、どうなるんでしょうね。

  3. なんとも皮肉なことに、カルナタカ州選挙ではこれまで与党だった国民会議派が敗れて、クリシュナ政権終わっちゃいましたねぇ。アンドラではナイドゥが敗れるし、ほんとインドの選挙はクリケットみたいに劇的です。

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